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家宅捜索

 ドワーフの造った町グランディア。その伝説が目の前に広がっていた。

 大きく岩盤が削れてできた谷の両脇の壁には所狭しと建物が配置されている。ただの横穴を部屋としているのではなく、入り口や通路、上下に移動する階段にも彫刻や装飾が施されていて、この谷全体が一つの美術品のようにも見える。


「魔族……なのか? 見ればちらほらと歩いているのがいるな。ルシルたちが捕まっているとしたらどこにいるのか、奴らに聴いてみるのもいいかもしれないな」

「勇者ゼロ、住人と接触すると面倒事にならないか?」

「セシリアが心配することももっともだな。よし、ここは勇者らしく入れる部屋は片っ端から探してみるのもいいかも」


 そう言いながら俺は手近の扉の取っ手をひねる。


「お、開いた」


 ゆっくりとだが石で造られた扉が開く。重さはあるはずだがそれを感じさせないのはドワーフの技術によるものだろうか。


「勇者らしいってなんだよ……」

「雇われ勇者の頃は許可証があったからな、国内ならどこへでも入っていけるという特権があったんだよ。大事の前の小事、魔王討伐のためには国民も一致団結して勇者を応援するという制度だな」

「制度なんだ……。ガレイではそういう決まり事はなかったな」


 城塞都市ガレイ。セシリアが所属する商人ギルトのある町だ。

 ガレイはどこの国にも属さず自主独立の体勢を取っている。

 各種様々なギルドが協力して町を運営しているため、勇者の特権が通りにくいのは難点だった。


「まあそこは俺のやりやすいように、従来通りのやり方をさせてもらおう。どうせ勇者の称号などというものはもうなくなってしまったから国の内外を気にすることもあるまい」

「ははっ、盗人猛々しいとはよく言ったものだ」

「好きに言うがいいさ」


 俺は勝手に部屋へ入り物色を始める。


「極力物は取らないように、とは思っているがな」

「ほう、それは住民に対する配慮か何かか?」

「いや」


 俺は手に取った花瓶を元の位置に戻す。


「全て持ち去って行ったら荷物に入りきらないからだよ」


 つまらない答えを聞いたかのように、セシリアが肩をすくませて俺を見る。


「まあそう言うな。ほらこれを見ろ」


 俺は机の上に置いてあった本をセシリアに見せた。


せい教徒の心得……?」


 セシリアが本を受け取り数ページめくる。

 中には小難しい内容の文章とおどろおどろしい挿し絵があった。


「天より来たりし星帝せいていが世界を創りたもうた……勇者ゼロ、これは経典のようだな」

「ああ。その中程にある挿し絵を見てくれ」


 セシリアがページをめくっていくと、そこには儀式のような挿し絵が描かれていた。


「これは……女性? 子供か? 一人を中央の祭壇に寝かせてその周りを少女が囲んでいる。なになに、せいなる乙女の儀、汚れを知らぬ乙女の純粋なる無垢な魂にて星々に祈りを捧げ、星帝を降臨させたもうものなり、だと……」

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