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狩りに行って見つけたもの

 俺はルシルと狩りに出た。

 拠点の野営地がある丘から少し離れた森の中。木々が茂り木漏れ日が少しだけ差し込んでくる。日も傾いてきて太陽と反対の方角にはうっすらと月の姿も見え始めた。


 落ち葉の上を歩く動物の音が聞こえた俺は、声を潜めてルシルに話しかける。


「鹿だ。あそこにいる。見えるか?」

「ん~、あ、ほんとだ。いたいた」


 幸運にも鹿は俺たちの風上にいるから匂いでは気付かれないだろう。


「ねえどうするの、勇者系の魔法また使う?」


 勇者はある程度魔法は使えるが、魔法使いや司祭のようにいろいろな種類や高位の魔法はそれほど使えない。勇者限定の特殊魔法なんていうのはおまけ程度だ。

 先日はその中の数少ない投擲系魔法で狩りができるか試していた。


「この間の炎の槍(フレイムランス)はダメだったね」

「ああ、あれは酷かった。当たったはいいけど一瞬で黒焦げ、食べるところは残っていなかったもんな」

「なら今回は火の矢(ファイアアロー)は、って使えたっけ?」

「あー、それは持ってないや。属性変えてみたらどうかな、雷光の槍(ライトニングランス)とか」

「感電だけならいいけど爆散しないかな。氷塊の槍(アイススピア)は?」

「いいかもしれない。試してみるか……あれ?」


 遠くで鹿の鳴き声がした。


「えっ、仕留めた?」

「いや俺は何もしていないが……とにかく行ってみよう」


 俺たちはもう隠れるよりも速度優先で森の中を駆け抜ける。

 鳴き声のした方へ行くと、そこには鹿の首に噛み付いていた大型の猫……? どこかで見た服を着ている。


「あーっ、この間の猫にゃんだ!」


 ルシルがいきなり大声を上げた。

 猫らしきものが驚いて一瞬身体を大きく跳ね上げたが、すぐにこちらを警戒して顔を向けてきた。

 振り向いたのは猫族の獣人。まだ年若い女の子だ。

 幼いながらも胸は大きく腰はくびれていて一人前の色気を感じた。大きく見開かれた緑色の瞳はクリクリっとしていて俺を見ている。


「にゃんだ、ゼロ様じゃにゃいきゃ!」


 猫耳娘の口から意味不明な言葉が出てくる。


「ゼロー、何でこんな女の子がゼロの事を知っているのよー」

「俺は知らんぞ、猫族の獣人に知り合……」

「ゼロ様にゃ~!」


 いきなり猫耳娘が俺に飛びつく。もふもふとした毛並み、身体の柔らかさ、そして喉を鳴らす甘い声。

 押しつけられる胸のボリューム。


「ちょっと、ゼロ~!」

「いや、なんだ俺は知らんぞ!」

「ゼロ様ヒドいにゃ~、う~ん」


 猫耳娘が俺に顔を擦り付けてくる。


「くぅっ」


 この圧倒的モフモフ感、こいつは危険だ。


「ゼロさんルシルちゃんもここにいらしたのですね。あら……」


 野営地の方からシルヴィアが歩いてきた。


「カイン……」

「にゃ、お姉ちゃん!」


 俺とルシルはカインと呼ばれた猫耳娘を見る。


「えーっ!?」


 俺とルシルは開いた口が塞がらない。

 カインはずっと俺にもふもふの顔を擦り付けていた。

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