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魔法の瘴気が守る谷

 瘴気が濃い。胸の奥がチリチリと痛む。


「これは……魔力を針状の物質に変換して空気中にばらまいたような感覚だな……」


 俺のつぶやきにセシリアも同意する。


「皮膚にも刺さるような感じがする……。これでは本能的に獣は近寄らないし、植物も生えてこないのだろう。勇者ゼロの言う通りだ……息をするのも辛い」

「だがこれは……魔力の要素があるのであれば……Rランクスキル魔法障壁マジックシールド!」


 俺が魔法障壁マジックシールドを発動させると、俺とセシリアの周りだけは瘴気が消え去った。


「あ、息が楽になった……」

「この苦しさの原因が魔力による物だとすればな、それを防ぐ事で少しは楽になると思ったんだ。効果があるようでよかったよ」


 俺は周りを見回すと、この瘴気を発生させている管のような物を見つけた。地面から生えているかのように顔を出している管だ。


「これが瘴気の発生源か。外敵を近寄らせないという点ではこの濃い魔力の瘴気はいい防御壁になっているのだろうな」


 侵入者を防ぐ役目は見事に果たしていると言えよう。


「考えたものだね。でもこれだけの魔力、来るかどうか判らない敵のために絶えず放出しているなんてもったいない」

「それでかもしれない……」

「何がだい勇者ゼロ」

「魔力だよ。セシリア、お前が言う通りこの膨大な魔力はかなりの量になる。自然に火山のように大地から噴き出すということもあるだろうが人為的な物となれば」

「生け贄……」

「恐らくな」


 男を知らない純真無垢な少女はその内に秘めたる魔力を持っているという話もある。そして魔力量なら他の追随を許さないルシルの存在。


「見ろ、あの大地が割れているところ」


 俺は少し先にある大地の亀裂を示した。なんの脈絡もなくただ大地が割れている。

 俺たちは切れ目の近くへと移動した。


「谷……と言えなくもない。勇者ゼロ、この谷底を見てくれ」


 セシリアに促されるように切れ目から谷底をのぞき込む。


「建物が見えるな。それもかなりの数だ」

「でしょう? 居住用の建物みたいだからかなりの数がここで暮らしているようだね」

「谷底には瘴気が無さそうだな。ここに住む者でも瘴気は毒なのかもしれない。あとはこの断崖絶壁をいかにして降りるかだな」

「ここを棲み家としている魔族たちは谷底から出入りするための昇降機なり階段なりがありそうなものだけどな」


 セシリアが言うことももっともだ。魔族たちはどうやってこの谷に入るのだろうか。オークですら捕虜を送るために行き来しているのだ。秘密の隠し通路のようなものがあるはず。


「こういうときはウィブがいてくれると助かるが、今はそうも言っていられないからな」


 俺たちは一旦大地の亀裂から離れて辺りを見回す。


「セシリア、あの少し盛り上がったところが気になる。調べてみても構わないか?」

「いいだろう俺も一緒に行く」


 セシリアが俺の後からついてこようとした時だった。


「セシリア伏せろっ」


 俺はセシリアを肩から抱えて地面に押しつける。その上で息を殺して小山を見守った。


「勇者ゼロ……」

「静かに、見ていろ」


 俺たちは地面に伏せて小山に注目する。


「あっ、あれ!」


 小さいながらも緊迫した声でセシリアが漏らす。

 小山の一部分がめくれて穴が見えた。

 そこからトカゲのような亜人やオークらしき奴もいた。


「いい場所を見つけたな」

「ああ」


 俺たちは視線を小山から離さず、匍匐ほふく前進で小山に向かっていく。

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