その次の親衛隊
俺はウィブの背にまたがり岩石の巨人へ近付いていく。
ルシルから思念伝達が入る。
「ゼロ聞こえる?」
「ああ感度良好だ。どうした?」
俺は思念伝達で脳内に響くルシルの声に応えた。
念じれば通じるのだが、つい口に出してしまう。
「マクドールに聴いたの。岩石の巨人はいるか、って」
「で、どうだった?」
「思った通り、マクドールからの連絡がない事に違和感を覚えた連中が送ってきたみたい。奴はバーガル親衛隊の山々と海の魔族、モズよ」
「親衛隊のモズ、か。なるほどただの魔族ではないだけあって規格外な訳だな」
俺は岩石の巨人の周りを旋回しながら巨人の隙を狙う。
「そこまでの奴なら何をしてくるか判らない。ただの巨人という訳ではないだろう、ウィブ、距離を保って大胆かつ慎重に行くぞ!」
「承知!」
俺はウィブになるべく攻撃よりも回避を優先させて状況を見守る。
「遠距離からの魔法攻撃はあまり効いていないようだからな。やはりここは直接叩くしかないか」
俺はワイバーンのウィブに話しかけながら考えを巡らす。空を飛んで戦闘するのだ、俺とウィブは一蓮托生、俺の判断はウィブの命運も握っている。
「勇者よ、どうするかのう?」
「そうだな、太陽に向かって飛んでくれないかウィブ」
「太陽に? まあいいだろう。奴よりも高くという事だな」
「ああ。行けるところまで高く飛んでもらいたい」
「承知した。少しこらえてもらうぞ。上空は寒く息も苦しくなるからのう」
ウィブには見えないだろうが俺は軽くうなずく。
急上昇をするウィブの背中を必死でつかんで振り落とされないようにしながらも、眼下にある岩石の巨人へ狙いを定める。
「これでもくらえ! Sランクスキル風炎陣の舞っ!」
俺の突き出した両手から炎の渦が岩石の巨人へと向かっていく。
巨人は腕で防御をしようとするが、その遅い動きでは俺の攻撃には間に合わない。
「ごがぁ!」
左肩に炎が当たり爆散する。破片となった岩石が砕けて散らばった。
「ウィブ、旋回だ!」
「承知した!」
岩石の巨人はゆっくりとした動きで俺を追うがワイバーンの飛行速度には遠く及ばない。
「力は強いが俺たちを捕まえる程ではない。距離を取って連続攻撃をかける!」
「儂は回避に専念しようかのう」
「それでいい、頼むぞ!」
「おう!」
岩石の巨人を中心として空中を飛び回るウィブ。そこから俺がスキルで魔力弾を投げつける。爆風と共に岩石の巨人から削られた岩が土煙を上げた。
「高レベルの使用者と高レアのスキルだ、これで倒せぬ訳が……」
もうもうとしていた土煙が晴れていくと、そこにはぼろぼろになった岩石の巨人が見える。
「なかなか頑健だな、だがもう立っているのもやっとな状況と見た!」
俺は次々と魔力弾を岩石の巨人へと当てる。
その都度巨人の身体が削られていく。
抵抗しようとするがその攻撃は俺たちに当たらない。
「これなら一方的に……なにっ!」
俺の頭の中にルシルの声が響く。
「ゼロ!」
俺のSSSランクスキル、勇気の契約者に反応が出る。心臓の鼓動とはまた別な、魔力による拍動。
「まさか、ルシルの身に……」
ルシルは俺との契約で俺の臣下となっている。勇気の契約者は、俺か臣下が窮地に陥った時に発動する強化のスキルだ。
「ゼロ! 櫓が燃えているのっ!」
悲痛に叫ぶルシルの声が俺の頭の中でこだました。