異なる魔族の者たち
バーガル王、それに仕える親衛隊のマクドール。
拘束はしたが平和的に質問を答えるマクドールから情報を引き出す。
「親衛隊とは何だ?」
俺の問いにマクドールが口に出さなくとも頭の中で考えた事をルシルが思念伝達で拾い上げる。
魔吸石で魔力が枯渇して冷静な判断ができなくなっている状態での質問だ。嘘を考える余裕もないらしい。
「バーガル親衛隊、俺の他にモズ、ダムダム、ケンタロウが軍をまとめている、だって」
ルシルがマクドールに代わって考えを伝えてくれる。
「マクドール、モズ、ダムダム、ケンタロウ、か。親衛隊は四人なんだな?」
「肯定、そうみたいよ」
マージュが魔吸石を椅子に縛り付けられているマクドールの額に近付けたまま魔力を吸収し続ける。
俺がマクドールの耳元で質問し、ルシルは少し離れて思念伝達を使う。
「お前たちの拠点はどこなんだ」
「北の森のさらに北、瘴気の谷……だって」
「北の森は妖魔の棲んでいた森だな、お前たちが焼き払ったという」
「肯定」
「なぜ妖魔たちを襲った?」
「バーガル王の命令……妖魔の希少な魔術素材を手に入れる、軍を強化する……」
自分たち魔族の軍団を強くするために妖魔を焼き討ちにしたという事か。
「ゼロさん、いいかな」
ララバイが質問をしてくる。
「私も聴きたい事があるんですけど」
「ああ、聴いてみたらいい」
俺はララバイに場所を譲った。
「魔族はなぜ軍備の増強をしているのだ?」
それは俺も気になっていた事だ。バーガル王というのはルシルたちの支配とは異なる者たちのようだし、今まで接触してきた事もない奴らだ。
「バーガル王は周辺の連中を駆逐する。我らは周辺の連中から奪う、殺す。そして強くなる」
マクドールの考えている事をルシルが代弁する。
「なるほど、拡大政策を採用しているというのか。周りに住む者たちにしてみればいい迷惑だ」
「周辺地域に攻め入ってさらに軍拡を行うって、放っておいたらこのマルガリータ王国にも攻め込んでくるって事ですよね」
「可能性は高いだろうな。だがこいつらは人間の国があるという事を知らなかったようだが……おい、人間がこの地域に住んでいる事は知っていたのか?」
俺はマクドールに聞き直してみた。
「知らない……人間たちが住む場所。人間は食料、家畜、奴隷……だって」
「酷い……」
ルシルの言葉にマージュがショックを受けたようだ。
「この魔族たちは人間を知らない訳ではないが、マルガリータ王国の事は知らないと言う事であれば……こちらが準備する時間はまだ少しありそうだな」
「でもさゼロ、この親衛隊が戻ってこなかったら何かあったって相手も考えるよね?」
「定期的に報告はしてたのか?」
マクドールの耳元で確認する。
「していない、ってさ」
「であれば少しは時間稼ぎができそうだ」
「そうだね……」
俺たちは降りかかってくるであろう脅威に対して、何らかの策を講じなければならない。
「面倒な事になったな……」
俺は大きなため息を一つついた。