謎解きの答え
俺はさっき感じた魔力の塊に向かって妖魔の軍団の中を歩く。
途中寄ってくる妖魔はことごとく討ち果たした。
「学習しない奴らめ。これだけ自軍の者がやられているというのにまだ俺に向かってくるとはな。それとも判断するだけの知能が無いのか?」
剣を振ると地面には剣に付いてた体液が飛び散る。
戦いの喧噪の中、俺のつぶやきに反応する者がいた。
「俺らの頭の出来をとやかく言われるとは心外だな」
「そうとも! たかが人間一匹、俺らにかかればひとたまりもないぞ!」
大型の猫のような獣が数匹集まってきて口を開く。
「人面ライオン……ああ、スフィンクスか。人語を解するとはその点は流石と言わざるをえないが」
「おい人間、頭の出来不出来が気になるようだからな。よかろう、ここらで一つ謎かけで遊んでやるか」
スフィンクスの一頭が自信ありげな表情で近づいてくる。
「なんだ、謎かけだと?」
「そうさ謎かけだ。いいか、矮小な短躯で力も無く、吹けば飛ぶような華奢で哀れな小さき短命の者はなんだ?」
スフィンクスたちはいやらしい笑みを浮かべて俺を見る。
「答えられなきゃお前を食ってしまうぞ」
「俺らにしてみれば簡単な答えぞ。どうだ人間」
スフィンクスの下卑た笑いが俺を囲む。
「小さく弱く短命……か」
俺は手をあごに当てて考える風を装う。
この近辺だけはなぜか静かだ。遠くで聞こえる攻城戦の音も別の世界のもののように聞こえる。
「どうした人間、答えねば食らってしまうぞ!」
スフィンクスの一匹が前脚を振り上げて迫ってくる。
俺の身体の中に力がみなぎってきた。
「SSランクスキル発動! 旋回横連斬っ! 旋風をもって我が剣よ斬り割けっ!」
俺はスキルを発動させて独楽のように剣を振り回して回転する。
周囲に群がるスフィンクスは俺の剣で薄切りにされて断末魔を上げて肉塊に変わった。
「答えはお前たち、だ。俺に歯向かうなど身の程をわきまえるのだな。まあ聞こえてはいないだろうが」
周りには俺が斬り刻んだスフィンクスたちの骸が転がっている。
「ひぃっ、なんて強さだ!」
「こいつ化け物かっ!」
変化である妖魔たちに化け物扱いされるとは心外だが、流石に妖魔どもは俺の強さと抵抗する愚かさを知った事だろう。
「そうするとだ。いい加減統率者の元へと行きたいのだがな」
俺が集団の中心を目指して再び歩き始めると、妖魔たちが無駄だと知りつつも向かってくる。
「無駄に命を散らす事も無いだろう!」
俺は妖魔たちに脅しをかけるがそれでも次から次へと向かってきた。
「妖魔王様には近付けさせん!」
「この命にかけても!」
なるほど妖魔たちの統率者は兵士たちをうまく手なずけているらしい。
「好意なのか羨望なのかそれとも恐怖なのか、理由はともかく兵士が兵士として死をもいとわず攻めてくるとなれば、今のマルガリータ王国の兵士たちには少々厳しい相手と言えるだろうな」
俺は他人事のように向かってくる妖魔を斬り払いながら進んでいく。
「旗指物が見えてきた。あれが本陣か……くっ!」
左の足首に焼けるような痛みが走る。ここまで露骨な痛みは久し振りで、痛みを感じた事に対して驚いてしまったぞ。
「こ、こいつ!」
俺の左足に取り付いていたものは、今まで見た事もないような形態をしていた。