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城門に押し寄せる妖魔

 俺たちは城郭の正面口へと向かった。

 城壁に登ると眼下には妖魔の集団が門へ殺到しているところが見える。

 城壁の高さは大人三人くらいで簡単には登れない。


「王子!」


 城壁の上の兵たちが戦いの手を止めてララバイへむき直す。


「いや、この王冠は……」

「儀礼的な挨拶は抜きにして防備に徹してくれ! ここが突破されては民にまで被害が及ぶ。頼むぞ!」

「はっ!」


 ララバイは兵たちを鼓舞して城壁の下の妖魔を攻撃させる。


「これはすごい数だな……」


 妖魔は変化へんげした魔物の事で樹木の精霊トレントや沼の精霊スライムなどがいた。魔法で合成されたキメラなど異形の者たちも多く見える。


「なあルシル、これはお前たちとは違う部類の魔物だよな」

「そうね、見てもらえれば判るけど私たちは生まれた時点で魔族だから、ここに集まっている妖魔……精霊が宿った者やとして変化した者たちとは違うわね」

「そうか、こいつらは後から魔物になった……後天的な奴らという事だな」

「本来はもっと複雑だけど、まあそう捉えてもらえればいいわ」


 ルシルの表情の方が複雑なものになっていた。


「そうなると、お前たちとの関係性も無いと見ていいよな?」

「そうね、地方領主とも関係なさそうだし」

「それなら思う存分暴れられるというものだ」


 俺は意気揚々として妖魔の集団を眺める。


「でも気になるところがあるの」


 ルシルが少し神妙な面持ちになった。


「どうした、俺が負けるとでも思っているのか?」

「それはこれっぽっちも考えていないけどね、これだけの大規模な集団を統率者無しでここまで目的を集中できるかと思って」

「ああ、それは俺も感じていた」


 敵感知センスエネミーではないが何か、勇者の勘とでも言うか、そんな何かが俺に危機を知らせていた。


「この集団を率いている奴がいる。多分……あの辺りか」


 俺は妖魔の集団の後方に陣取るどす黒い思念の塊、それがこの場の空気を支配しようとしているかのようだった。


「なるほど、言われてみればその辺りの魔力値は異常ね。私でも肌が痛くなるくらい刺激を感じる」


 ルシルも位置的には同じものを感じているようだ。


「そうなれば!」


 俺は城壁から妖魔の群れに飛び込んだ。地面に降り立った時の衝撃がすさまじいが、そこで着地した俺を妖魔たちが見逃すはずも無かった。


「ゼロ!」


 城壁の上からルシルが叫ぶ。


「ルシル、ララバイ、お前たちは側背を守れ! 妖魔たちはそこまで分厚く多方面からの同時攻撃は行っていないようだからな、門を守る兵以外は連れて行け!」

「でもゼロは!」

「俺の事は心配無用、一人でなんとでもしてやるさ! 一人で大軍と対峙するなんて事は勇者ならよくある事だからな!」


 俺は笑いながらルシルたちに他の場所への防衛を頼む。


「流石に俺も複数の場所を同時に守る事はできない。であればこそだ、本体の、そして指揮官を叩く! これに尽きるっ!」


 俺は覚醒剣グラディエイトを抜き払うと、目の前の樹木の精霊トレンドに斬りつける。

 その様子を見てララバイが悲鳴にも似た台詞を吐く。


「ゼロさん! それは勇気じゃない、単なる無謀ですよ!」


 俺は目の前のトレントが伸ばしてきた腕らしき枝を切り落とした。


「樹木の精霊は基礎が植物なので斧ならともかく剣では斬る事ができないくらい堅い……」


 ララバイの言葉の途中で、俺の斬りつけたトレントが真っ二つになって倒れて消えた。


「なっ!」


 驚くララバイをそのままにして、俺は妖魔の群れの中を突き進んでいく。

 まるで無人の野を歩くがごとく、俺は近寄る妖魔を蹴り飛ばし、斬り伏せる。

 今度は妖魔たちが驚く番だぞ。

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