騎士たちの目的
俺は襲いかかってきた騎士たちを返り討ちにした。
辺りには凄惨な姿で転がる騎士たちの残骸と、わずかながら生き残っていた騎士。
「つ、強い……」
ユーシュがうめき、他の者たちも唖然としている。
「Nランクスキル、簡易治癒。この者の傷を癒やしたまえ……」
俺は倒れている中でまだ息のある騎士に簡易治癒をかけると、その騎士は今まで荒かった呼吸が落ち着いたものになる。
両足は切り落とされているのでもう長くはないが。
「くっ、殺せ……」
「言われずとも放置しておけばお前の望み通りになる。だがその前に役に立ってもらおう。そうすれば楽にしてやる」
スキンヘッドの騎士に俺は優しく話しかける。
「お前たち天馬騎士と言ったな、なぜ俺の命を狙う?」
騎士は血の泡を吹きながら何かを言おうとした。
「敵感知でお前たちが俺に殺気を向けていた事は把握していた。刃を向けても殺気がなかったそこの元勇者までは命を取らなかったが、お前たちは俺を本気で殺しにかかってきたよな?」
騎士は目を閉じると、何かを納得したかのような柔和な表情に変わる。
「そこまで判っておいでか、これでは我らでは勝てぬも道理。強さの次元が違いすぎる……」
騎士は一つ咳き込むと、口から血を溢れさせながらも言葉を続けた。
「我らが命を狙うはそこにいる者、第三王子を亡き者とせんがためよ。王家を抜け、国を捨てた逆賊を、陛下の命にて討ち果たしに来たのだ……。よもや勇者の一行に紛れていようとは思わなんだがな」
勇者一行というのは、マルガリータ王国から勇者の証を与えられていたユーシュたちの事だ。この騎士たちが俺の事をムサボール王国の勇者だったなんて知っていてやっているとは思えないからな。
それよりも気になるのが、その対象だ。
「第三王子……と言ったか」
騎士は苦しそうに首を縦に振って肯定した。
「ああ、そこにいるノワール・マルグリット……吟遊詩人の風体の男、ノワール王子だ」
俺は近くで戦況を見守っていた吟遊詩人のララバイを見る。
「天馬騎士よ、私はマルグリットの性を捨てララバイと名乗っている。もはや王家とはなんの縁も持たぬ一介の吟遊詩人、ノワール・ララバイだ。王位継承権も持たないただのララバイだ。それを今になって私の命を狙ってくるなど……」
だが騎士はその言葉を否定するかのように厳しい目つきになった。
「その王位継承権ですよ、ノワール殿下」
「まさか、それは私が王家を出る際に義父上にもお伝えし、王家の印も返上したのだぞ! それに兄上たちもおるだろう、それを……」
王子と呼ばれたララバイの顔が白くなる。
「まさか兄上たちは……」
「恐らくはノワール殿下のご推察の通り……」
騎士が大きく咳き込んで言葉が途切れた。
「少し落ち着け。簡易治癒」
出血量が多いのか、騎士も意識がもうろうとし始めているのだろう。
「……妖魔との……先の大戦にて、お討ち死になされました」