空にも逃げ道無し
「相手になってやる」
四方八方から迫り来る天馬騎士たちに俺は単独で立ち向かう。
一人目、正面から来る騎士に俺は剣で縦に叩き割る。
「兜割り、だとっ!? またもや重装の騎士が天馬ごと真っ二つに断ち切られたなんて……」
痛む手首を押さえながら戦いを見ていたユーシュが見たままを述べた。
「だが背後からの攻撃は……なにっ!」
ユーシュが驚くのも無理はない。俺は正面で縦に割った騎士に振るった剣をそのままの勢いで自分の身体の左側へ通し、振り向きざまに背後を襲ってくる騎士を横になぎ払う。
斬られた騎士は隣の騎士を巻き込んで吹き飛ぶ。
「なんという剣圧、剣力だ……」
これで三人。初めに斬った奴を含めて四人だ。
剣の勢いを殺さずに切っ先を空へ向けると、空中から駆け寄ってきた騎士の胸に剣が突き刺さる。
「あっという間に半数が……。王国の中でも最強と呼ばれる天馬騎士たちがこうも簡単に……」
ユーシュが思ったままを口にする。
他の連中はユーシュと同じように驚きを隠せないが、ルシルは相変わらず冷静に俺の動きを見ていた。
「くっ、こうなれば空中からの間接波状攻撃だ!」
一人の騎士が上空へ舞い上がると、俺に向かって魔法を放ってくる。
「雷の矢!」
「火の矢!」
「氷塊の槍!」
生き残った他の騎士たちも上空へ逃れ、俺に向かって攻撃魔法を放ってきた。
「どれも低レベルの攻撃スキル……。そんなもので俺を倒せるとでも思っているとは……」
俺はあきれてため息を一つつく。
「ウィブ!」
「ほほう、ようやっと出番かのう」
俺の掛け声にワイバーンのウィブが駆け寄ってくる。
俺はウィブの首に腕を回すと、首を軸にして背中に飛び乗った。
「天馬騎士とか称号は大層なものだがこの程度か。おいウィブ」
「なんだのう?」
「天馬とワイバーン、どちらが勝っているか一つ力比べと行こうではないか」
「面白そうだの、ほほっ!」
ウィブは大きく羽ばたくと、急上昇をして天馬に乗った騎士たちよりも上空へと飛び上がった。
「なんて高さだ……! だが、魔法でその翼膜に穴を開けてしまえば……雷の矢!」
騎士たちよりも高い位置にいる俺に向かって魔法を放ってくるが、俺は迫ってくる魔法を剣で打ち払う。
「なっ、剣で弾きおった!」
驚く騎士たちへ俺は冷ややかに説明をしてやる。
「これは魔力を帯びた剣だ。低位魔法程度であれば払いのける事は難しいものではないぞ」
俺は剣の先に意識を集中し、スキルの発動を促す。
「Sランクスキル発動、剣撃波!」
神速の衝撃波が剣から放たれ、騎士たちの鎧ごと身体を斬り割いていく。
騎士たちは落馬して地面に落ちる者、天馬の上で倒れ伏す者、上半身を斬り飛ばされて絶命する者など、全員が戦闘不能に陥る。
「どれ、生きている者がいたら少し話を聴くとするか」
俺は地上に降り立つと比較的傷の浅そうな騎士を見つけてその兜を引き剥がす。
そこにはまだ若そうな男の顔と、光を反射するくらいに磨き上げられたつるつるの頭があった。