お荷物
俺たちは噴火する中、勇者たちの捕縛にかかる。
「おいお前ら、ここから生きて帰してやる。大人しく捕縛撚糸に吊されておけ!」
「いきなり現れて何を言うか! 僕たちは自分たちだけで窮地を切り抜けてやる! なあ、みんな!」
勇者は俺に反発して救出案を受け入れない。
だが他の奴らは違うようだ。
勇者の問いに戸惑いを感じている。
「おで、助かりたい……」
直感的に理解したのだろうか、このままでは逃げる事もできないという勘でも働いたのか、戦士の格好をした男が思った事を口にした。
それにつられて他の者たちも俺の案に賛同し始める。
「ユーシュさん、ここはひとまずこらえて、ここから脱出する事を優先に考えましょう」
「そうだよユーさん、過去の事は一旦置いとこう」
聖職者の少女とレンジャーの青年も勇者の説得にかかる。
どうやら勇者はこの状況を待っていたようだ。
「し、仕方がないな、お前たちがそこまで言うのなら、今回はあいつの提案に乗ってやらんでもない」
その言葉を聞いて他の連中の泥と煤に汚れた顔にほっとした表情が見えた。
「流石ユーさん、懐が深い!」
「生きるためには矜恃を捨ててでも可能性に懸けるその思い、決して無駄にはしません!」
おだてられて勇者はまんざらでもない様子だ。
「あのさ、あまり時間も無いんだが、いいんだな?」
俺は少し疲れながらも再確認した。
勇者たちは承諾して俺たちに身を預ける事になる。
「よしマージュ、捕縛撚糸をやってくれ」
「判りました。Sランクスキル捕縛撚糸! かの者たちをその魔法の糸で絡み取れっ!」
マージュがスキルを発動させると、マージュの手の先から魔力のこもった光の網が勇者たちに絡みついた。
基本的には身体を固定するだけなので、手足は自由に動かせるようにしている。
「そうしたらこの魔法の糸をウィブが足で持ってくれないか」
「いいだろう」
ウィブがマージュから捕縛撚糸の糸をカギ爪のある足で受け取った。
魔法の糸でぐるぐる巻きにされた勇者たちがウィブに吊されて地上から離れる。
「おわっ、高っ!」
「こ、怖い……」
口々に不安をつぶやいているが彼らには選択肢はない。生き残りたければワイバーンから吊り下げられて飛んで行くに任せるだけだ。
「揺れる……」
「あまり振り回さないで欲しい……」
ウィブにしてみれば重たい荷物を持ちながらの飛行になる。
「なるべく落とさないようにするからのう、それくらいはこらえてくれい」
一応はウィブも気遣ってくれているらしいが、ぶら下がっている四人はそれどころではなかったようだ。