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嫌な奴だけど命は命

 空を飛ぶワイバーンの背に乗っている俺たちは、降り注ぐ火山弾から身を守りつつヴォルカン火山を離れつつあった。

 その遙か下の山肌に取り付いている虫のような粒々が見える。


「あれは勇者たち……か?」


 その豆粒のような人たちは溶岩や飛んでくる岩石を避けながら下山しようとしていた。


「行きましょうゼロさん。彼らとはたもとを分かった身、もはや助ける義理もありません」


 吟遊詩人のララバイは厳しい口調で断言する。


「なかなか手厳しいな。まあ俺としても退路を邪魔されたりしたんだ、別にこのまま溶岩に飲まれていくのを見捨てても構わないとは思うがな」

「あんな人たちは置いて行きましょうよゼロさん! 私、あいつが勇者だって言うの、許せないです!」


 魔法使いの少女マージュはさらに辛辣だ。

 それもそうだろう、自分が崖から落ちそうになった時にその手を取って助けてくれたのはララバイだけで、勇者たちは自分の財宝集めが忙しくて仲間の命を救う事の優先度は低いようだったからな。


「ウィブ、あいつらを連れて行く事はできるか?」


 俺はワイバーンのウィブに問いかける。


「ゼロさん、まさか!」


 ララバイが驚いて俺を止めようとした。


「まあここは俺に任せてくれないかな」

「ゼロ、私もなんか嫌だな……」


 ルシルは魔王だけあって冷酷、というより現実主義なのだ。自分の利益になるかどうかの線引きはかなり厳しいものがある。


「まあまあ。でどうだウィブ?」

「そうだのう、儂の背に乗せるには少々人数が多いかのう。彼奴きゃつらは四人おるようだがのう。流石に今の四人と合わせて八人は厳しかろう」

「なるほど。吊り下げて持って行く分にはどうだ?」

「吊り下げてか? まあ牛一頭よりは軽いだろうからのう。ひとつかみで行けるのなら、だがのう」

「そうか、なら決まりだ。ウィブ、勇者たちの上空、近くへ飛べるか?」

「うむ」


 ウィブは向きを変えると勇者たちに向かって飛んでいく。


「ゼロさん!」


 ララバイが食ってかかってくる。仲違いした間柄だ。合流する事は望ましくないのは判る。


「まあ落ち着いてくれ。ここは俺に任せてもらえないか」


 口調は優しいようにしたが、ララバイもマージュも俺たちに助けてもらっている立場だけあって強くは言えないのだろう。

 渋々承知した。


「マージュ、Sランクスキルの捕縛撚糸キャプチャー・ネットは使えるか?」

「え、ええ。使えますけど……え、まさか!」

「うーん、多分そのまさかだろうな。勇者たちをネットで捕まえて吊り下げてくれないか」


 捕縛撚糸キャプチャー・ネットは俺が前に使おうとした時にはうまく発動できなかったからな。魔法使いならと思ってみたが、案の定使えるのは助かった。


「いいですけど、もうどうなっても知りませんからね!」


 俺たちは勇者一行の上空で旋回して、マージュが捕縛撚糸キャプチャー・ネットを発動させる。

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