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魔王の呪い

 俺たちはスパツの町を出た。

 温泉でゆっくり、のはずだったが、王国の兵に目を付けられていたこと町長がカイン誘拐に一枚噛んでいたことなどなど、休むどころではなくなってしまったからだ。


「せっかく温泉に来たのにねー」

「そう言うなよルシル。無事に町を出られただけでもよかったじゃないか」

「無事にって言っても、温泉の修理代としてシルヴィアさんの商品をほとんど持っていかれちゃったじゃない」


 手持ちの金が無く、商品を安価でさばいてなんとか穴埋めをしたのだ。


「かといってあのまま去る訳にもいかないだろう」

「だって、襲われたのは私たちだよ? こっちが被害者なのにー」


 ルシルは納得がいかない様子だが王国が責任を負ってくれる保証もないからな。温泉宿も被害者なら、融通の利く方が少しでも助けてやりたいと思った。

 シルヴィアが賛同してくれたからできた事なのだが、俺も甘いな。


「いいのです、私はカインと一緒にいられるのでそれだけで幸せです。お金は使ってこそ価値のあるものですし」


 かなり商品の減って軽くなった荷馬車にはシルヴィアとカインが乗っている。御者台にシルヴィアが座り、カインは幌付きの荷台で横になっていた。


「お金は後からどうとでもなりますから」

「頼もしいね、シルヴィア」

「ありがとうございます。培った商売人の力でゼロさんのお役に立ってみせますわ」

「シルヴィアさんかっこいいー!」

「ルシルちゃんもお手伝いお願いね」

「はーい。私一度商売ってやってみたかったのよね、ふふっ」

「何か変な妄想でもしているのか?」

「えへへー、ないしょ」


 他愛もない会話が続く。次に目指す国境の検問所まではもう半日行けば着くだろうか。辺りには木が増えてきて段々と森に近付いているようにも思える。


「そう言えば温泉で襲ってきた親玉なんだけど」


 ルシルが真剣なまなざしで話しかけてきた。


「あのカギ爪、あれって……」

「ああ、火蜥蜴の毒爪(サラマンドラニードル)だろ」


 ソウッテの右腕に付けられていたカギ爪。

 あれは魔王の宝物殿に保管されていた一品だ。俺が解雇された時に奪われた財宝の一つ。


「でも、呪いがかかってたままだったね」

「呪われた状態で装備したからなのか、かなりやつれていたみたいだな」

「そうだったね。目の下の隈すごかったもん。でも、本当の能力を引き出していたらカインの傷、簡易治癒ライトヒーリングじゃ助けられなかったよ」


 荷台の方で物音がした。


「ボクって、結構危なかった……の?」


 目隠しをしたままカインが這い出てきた。

 この地獄耳め。


「その時は毒抜きともっと高位の回復魔法を使えば治るけどな」

「でも~あの爪で傷を付けられると、ほんのちょっとでも炎で焼かれたかのようにすんごい痛むんだよ~」

「ひぃっ……」

「こらっ、ルシル」

「はぁい、ごめんなさ~い」


 ルシルが肩をすくめて小さく舌を出す。


「でも確かに呪いを解かれていないのは助かったが、あの国王め魔王のアイテムを使わせていたのか……」


 少しでも呪いが弱まっていたら、呪いのかかっていないアイテムを使われたら。

 そう思うと少しだけ背筋に冷たい物が走った。

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