表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

179/1000

火口からの脱出

 迫る焼けた岩塊。俺たちを背に乗せているワイバーンよりもはるかに大きい溶岩の塊だ。


「これは、厳しいのう」


 ワイバーンのウィブがぼやく。

 ウィブもふらつきながら上昇しようと頑張っているが、熱風に煽られた状態で噴火する岩を避けることは難しい。

 そんな時に魔法使いの少女が俺に話しかける。


「ねえ、ゼロさんって言ったよね。円の聖櫃(サークルコフィン)は? さっきの魔法なら物理防御できるんでしょ?」

「だめだよそれじゃ」


 ルシルが首を横に振って否定し、俺はそれに補足を入れた。


「そうだな、安定した足場なら円の聖櫃(サークルコフィン)は役に立つだろうが空を飛んでいる状態で発動させても、ぶつかった衝撃でこちらが吹き飛ばされてしまうだろう」

「そうなんだ……」


 魔法使いの少女、マージュががっかりした様子を見せる。


「マージュ、細かい岩石は打ち落とせるか?」


 俺の問いにマージュの瞳に希望の光が宿った。


「できるよ、できます! 魔法障壁マジックシールドだったら使えますし、誘導魔弾ホーミングアタックならRランクなので私でも撃てます!」

「そうか、Rランクならルシルも行けそうか?」

「うん、誘導魔弾ホーミングアタックやってみるよ。でもこの大きい奴はどうするの? 段々近付いてきているよ……」


 巨大な溶岩の塊はとんでもない速度で近付いているのだろうが距離があるだけに到着まで余裕がある気になっていた。


「あれは俺が何とかする」

「大丈夫なのゼロ」


 ルシルは服の裾を力一杯握っていた。

 恐怖をこらえているのだろう。


「たかが石ころ一つ、俺がなんとでもしてやるぜ」


 俺は両手を前に出すとスキルを発動させる。


「SSランクスキル発動! 豪炎の爆撃(グレーターボム)っ! 爆炎で吹き飛べ、散り滅べっ!」


 俺の両手から炎の塊が溶岩の塊に向かって放たれる。


「高熱の溶岩に高熱の爆炎魔法だと!?」


 吟遊詩人のララバイが俺の行動に驚く。

 爆風で少しウィブの身体が揺れるも、飛行に影響は出ていない。


「そのまま巨大な溶岩を爆散させよっ!」


 俺が精神力を注入してスキルを強化させる。

 放たれた爆炎が溶岩に届くと、塊の大きさに引けを取らない巨大な爆発が発生した。


「おおっと、これは熱風が凄いのう」


 ウィブがあまりの衝撃にため息を漏らす。

 だが飛行はどうにか平衡感覚を失わずにいられるようだ。


「直撃よりはましだろう? ルシル、マージュは魔法障壁マジックシールドを展開しろ! ララバイは全員を鼓舞する歌を歌ってくれ!」

「判った!」

「任せてもらおうか」


 巨大な溶岩の塊は爆散して飛んで行ってしまった。

 ルシルとマージュで魔法障壁マジックシールドを展開し細かい岩石から俺たちを守る。

 ララバイの歌声が精神力を回復させて、ルシルたちの発動させたスキルの効果時間を延ばせるようにしてくれた。


「これなら行ける!」


 ルシルが魔法障壁マジックシールドを展開して飛んでくる岩石を防ぐと同時に、マージュが誘導魔弾ホーミングアタックに切り替えて細かい塊を撃ち落としていく。


「なかなかいい反応だ」


 俺は豪炎の爆撃(グレーターボム)の爆風が過ぎ去ったところで次のスキルを準備する。


「Rランクスキル氷塊の槍(アイススピア)、そしてSランクスキル凍晶柱の撃弾(フリーズバースト)を連続して発動するっ! この世に神がいたとして、噴火こときで俺の行く手をさえぎる事ができると思っているのか!」


 俺の両手から今度は氷の刃が生まれて分裂した溶岩へと進んでいく。


「いいかよく見ておけよ。これは普段の戦いにも言えることだが、相手の苦手とする属性の攻撃を差し向けると……」

「でもさっき、爆炎魔法使っていたよね?」

「あれはあれだ、より強力な攻撃を加えると撃破できるという例だな、うん」


 俺はその場を取り繕うように言葉を紡ぐ。

 それとは別に熱せられた溶岩に向かって氷の槍が降り注いでいく。細かい溶岩の塊もこれで撃ち落とされ、弾き飛ばされていった。

 それでもまだ向かってくる岩はマージュが誘導魔弾ホーミングアタックで撃墜する。


「吹き上げる風に乗って上昇できるかウィブ!」

「やってみるかのう」


 のんびりとした口調に隠されている切羽詰まった声。

 翼を広げて噴き上がる熱風を捕らえる。


「登れ、登っていけ!」


 俺は撃ち漏らした岩石をスキルで弾いていく。

 噴火口の壁が不意に途切れる。


「横に見える赤い太陽は夕日に照らされての事だと思うと、空が広がって見えるという事は……」


 俺は周りを見渡す。

 山、森、草原など見るべき所は何カ所でもあるのだろうが、それよりも俺の目に飛び込んでくる太陽の光がまぶしい。


「火口を……抜けたぞ!」


 俺の声に皆がうなずく。

 その顔には安堵の笑みが浮かんでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ