元の仲間と元通りにするには
洞窟を進んでいき少し広い場所へと出た。
「何やってんだこいつら」
俺たちが見たものは、逃げ出した勇者一行と戦っている蜥蜴人間たちだ。
「この山はかなり危ないところまで来ているぞ、こんな所でうろついている場合じゃないだろう!」
「そんな事言っても、この奥が僕たちの来た道なんだよ! この先の火口から頂上に出て山を下りるつもりだったんだ!」
勇者が泣き出しそうな声で叫ぶ。
そんな場所があったのか。なるほど火口からならレッドドラゴンが出入りする道もあったかも知れない。
「それにしても、蜥蜴人間に苦戦しているみたいだが」
「相手は五匹なんだぞ! こっちは四人で戦っているんだ!」
「だからなんだ? お前たちの人数が減ったのは自分で選んだ結果だろう?」
俺の後ろにはルシルが隠れていて、そのさらに後ろには吟遊詩人と魔法使いが続いていた。
「あ、後ろにいるのはララバイとマージュじゃないか! 僕たちを助け……いや、戦闘中なんだ、参戦してくれ!」
俺は後ろにいる吟遊詩人たちを見る。
「どうだ、お前たちの元仲間がああ言っているが」
「どうしようララバイさん……」
魔法使いの少女は吟遊詩人に判断を求めているようだ。
「仕方がないな……。勇者さん、俺らは勇者さんたちと仲間だったんだから、苦労を共にしようと思うんだ」
「そ、それなら早くこのトカゲどもを何とかしてくれ!」
勇者は蜥蜴人間の攻撃を凌ぎながら吟遊詩人たちに助けを求める。
「だからさ勇者さん苦労を共にするんだよ。俺らが経験した苦労を、死の瀬戸際に立った俺らと同じように死に直面する苦労をしてもらうよ」
吟遊詩人は別の脇道に入っていこうとした。
その様子を見て勇者が慌てて引き留めようとする。
「なっ、ララバイ! もう僕たちは疲弊しているんだ、このままじゃやられちゃう!」
だが見捨てられた過去のある吟遊詩人は勇者の嘆きを無視して洞窟を進んでいく。
「この道からでも外へは行けます。付いてこれる方はどうぞご自由に」
「待て、待ってください! 僕たちを置いていかないで……!」
勇者一行は蜥蜴人間の攻撃を受けるだけで精一杯、吟遊詩人が進もうとする道との間には蜥蜴人間たちがいてそれを突破できないでいる。
「ねえゼロ、私たちはどうしようか」
「どうもこうも彼らの仲間内での問題だ。俺たちが口を出す事もないだろう」
「ま、そうだね。なんかあの勇者凄く嫌な感じがするから」
ルシルがほっとしたように俺の後を付いてくる。
「待って、待ってくれぇ!」
洞窟を進む俺たちの背後で勇者たちの声が聞こえているが、俺たちは自分たちの脱出を優先する。
戦闘に加わって溶岩に飲み込まれる訳にはいかないからな。