洞窟の崩壊
大地の裂け目から溶けた岩が溢れ出る。勢いに乗って天井を焦がし突き抜けていく。
その溶岩にレッドドラゴンが巻き込まれた。
「くっ!」
ドラゴンの半身が溶岩に飲まれて燃える。
俺は息も絶え絶えこの状況を見守っていた。
「さしものレッドドラゴンも……大地の熱には勝てないだろう!」
重爆斬の威力は壁を伝い天井へも穴を開けていく。その隙間を埋めるかのように赤く白く光る溶岩が噴き出していった。
「空が……見える……」
破壊された洞窟の天井から光が漏れる。地面は溶岩が溢れ出すものの天井の先の空は青く澄んでいた。
「息が、楽になったのか……」
知らずに呼吸ができるようになる。
「に、人間……!」
半身を焼かれ炭化した身体を引きずりながらレッドドラゴンが俺の方へ向かってきた。
俺はドラゴンを制しようとする。
「もうその状態では命すら落としかねんぞ。ふぅ、無駄な事はやめるのだな」
まだクラクラする頭でドラゴンを見た。ドラゴンも半死半生、焼けただれた身体を無理矢理動かそうとするが力尽きて倒れ伏す。
「人間ごときにこの神獣たる純粋種の竜族を……屠らせてなるものか……」
「黙れ、もう立つな。ドラゴンの回復力であれば時間さえあればどうとでもなろう」
「この我に温情でもかけるつもりか!」
身体の自由は失いつつも気力で立ち上がろうとするドラゴン。
「なぜそこまで立ち向かおうとする」
天井が崩れて空が広くなる。
「ここは我らの安息の地であったのだ。それを邪魔者が安寧を破ったのだよ! そしてそれは竜族の最高種であるベビードラゴンを失わせる事になったのだぞ! これを見過ごす事ができようか!」
地面が裂けて溶岩が赤くうねる。
「だがそれと俺たちとどう関係する?」
「関係? 関係などあるものか! 望みが叶えられなかったこの虚しさを埋めるには人間の命では足りぬ、足りぬのだ!」
レッドドラゴンが咆哮を上げる。崩れ始めた洞窟がさらに崩壊していく。
その時に洞窟の奥から声が聞こえた。
「はっ! ついに見つけたぞ邪悪なるドラゴンめ!」
奥からぞろぞろと六人の人間たちが現れる。中には亜人種もいるようだ。
「火口付近から降りてきて間違いはなかったな! まさかこんな所にいるとは!」
入ってきた男が吠える。
いつの間にかルシルが俺の背後にいて俺の外套を強く握っていた。
「ゼロ……こいつら……」
ルシルの怯える声が震えながらも俺に警戒を伝える。
闖入者は武器を構えてドラゴンと対峙した。
「そこな少年、僕たちが来たからには安心しろ、今すぐ悪のドラゴンを倒して助けてやるぞ!」
「でもユーちゃん、火山が噴火しそうだよぉ」
「安心しろマージュ、ドラゴンなんかとっとと倒しちゃうからな!」
いきなり割り込んできたと思ったらなんなんだこいつら。
「ゼロ、こいつら勇者だよ……」
ルシルの声は俺に必要以上の緊張を与えたのだった。