表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

170/1000

竜の吐息

 雌のレッドドラゴンが吠え、それに合わせてドラゴニュートたちが俺に向かってきた。


「生まれたばかりでなんだが、向かってくるという事はその命を失う覚悟ができているという事だな!」


 俺は一体目のドラゴニュートを袈裟斬りに倒すと、返す刀でもう一体の首を刎ねる。


「ギッ!」


 三体目のドラゴニュートが後ずさると、近くに落ちていた銀の燭台をつかんで振り回す。


「本能的に戦いを知っているのか、それとも何か特殊な能力でもあるのか……」


 考えたところで判るはずもないが、俺はドラゴニュートが振り回す燭台を剣で弾き飛ばした。

 勢いを受けて尻餅をつくドラゴニュート。


「母上!」

「参上つかまつった!」


 後ろの脇道から出てきたドラゴニュートが二体。そのほかにも蜥蜴人間リザードマンが十体程現れた。


「まさかこいつら、火竜三晶星の残りか?」


 奥から現れたドラゴニュートは生まれてからそれなりに経っているのか、先程倒したファズバーンに身体の成長度合いが似ている。


「こやつ、まさか氷結のファズバーンを殺した奴か!」

「あいつは火竜三晶星の中でも最弱ではあったが、だからといって同じ血を分けた兄弟をむざむざやられて見逃す訳にはいかんぞ!」


 いきり立つドラゴニュートたち。

 なるほどドラゴンの卵から生まれたとすればこいつらも同じ親から出てきたドラゴニュートなのだろう。


「弟の後を追いたいというのであれば遠慮はするな。俺がすぐにでも送ってやろう」

「なんだと人間め!」

「覚悟しろ!」


 ドラゴニュートたちが向かってくる。

 蜥蜴人間リザードマンたちも一斉に襲いかかってきた。

 これだけの数の敵を相手にするという事になれば、普通の戦士なら苦戦するだろうが。


「だったら俺は、お前たちの誰よりも何よりも早く動けばいいだけの事! Sランク勇者補正のスキル発動、超加速走駆ランブースト!」


 俺は超加速で爬虫類の群れを分断する。すり抜けざまに蜥蜴人間リザードマンたちを斬り伏せ、ドラゴニュートの武器を弾き返す。

 体勢を崩した相手には足をなぎ払って動きを止める。またそいつが道を塞いで攻撃を遅らせる。

 その隙を突いて流れる線のように爬虫類の群れを切り裂いていく。


「な、なんて強さだ……」


 力及ばす倒れていく人型爬虫類たち。

 そんな姿を見てドラゴンが四肢を震わせる。

 崩れた金貨がその振動を音で教えた。


「人間めぇ!」


 ドラゴンが大きく息を吸い込むと、俺に向けてドラゴンブレスを吐き出してくる。

 俺に向かって炎の帯が伸びていく。


「炎か! 魔法障壁マジックシールド!」


 俺はRランクスキルの魔法障壁マジックシールドをルシルに展開する。俺自身は温度変化無効のSSSスキルで炎に耐性があるから問題は無いが、ルシルはそうもいかない。


「ありがとうゼロ!」

「直撃には耐えられないからな、物陰に隠れているんだ!」

「うん、判った!」


 そう指示しながらも俺は蜥蜴人間リザードマンたちを斬り捨てていく。

 ルシルはドラゴンブレスの放出範囲から逃れるように洞窟の隙間へと身を潜めた。


「ドラゴニュートも蜥蜴人間リザードマンももう一匹もいなくなったぞ、ドラゴン!」


 それでもドラゴンは炎を吐き出し辺りを火の色で染め上げる。

 洞窟の壁が熱で溶かされ、赤く垂れ始めてきた。


「なんて熱量だ……。温度変化無効のスキルがなければひとたまりもなかったな……」


 俺は息を切らせながら独り言を漏らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ