石のありかと広間にあったもの
ドラゴニュートを倒し蜥蜴人間を撃退した俺は、脇道の近くで光る物体に気が付いた。
俺はそれを手にしてルシルに相談する。
「これ……ルシル、見てくれないか」
俺は落ちていた物体をルシルに手渡す。
「どこで見つけたの?」
「そこで落ちていたようだったからな。閃光の浮遊球の光に反射したからさ」
拾った辺りを見回してみたが他には見つからなかった。
これ一つだけ落ちていたのか。
受け取ったルシルが物体を眺める。指先程の大きさで六角柱の角が割れて欠けたような物。薄い青みがかった色が付いているが透明感のある石だ。
「これ、魔晶石だと思う。ちょっと魔力を注入してみるね」
「ああ頼む」
俺が見守る中、ルシルが物体に魔力を送るよう集中する。
物体の中心に渦ができて中が段々と黒く染まっていく。だが中心の光だけは反対に強く輝き始めた。
「この光り方、魔晶石と見て間違いなさそうだな」
「そうね」
ルシルは俺に魔力を注入した魔晶石をよこす。
受け取った俺は、気のせいかこの物体が少し熱を帯びたように思えた。温度変化無効のスキルを常時発動させているから実際の温度は判らないのだが。
「夜目が利くように進化発展した蜥蜴人間やドラゴニュートは頻繁に外へ出ていたようにも思えない。洞窟の入り口にあった足跡はウィブが言うにはドラゴニュートの物らしいが、古い足跡だったりもしたからな」
「そうね、私もよく見ないとあの足跡は判らなかったもの。それに使役しているのであればあの足跡の中に蜥蜴人間の物があってもよさそうだけど、それがなかったとなるとあそこを出入り口として使ってる訳でもなさそうだものね」
「ああ。奴らの行動範囲がこの洞窟の中で済むとなると、この洞窟に魔晶石があるという可能性は高いかもな。期待できそうだ」
俺は受け取った魔晶石を腰の小袋に入れる。
「そうだね。実際に見てみないとと思ったけど」
「ああ、もっと奥には大量に転がっているかも知れないな」
「大きいのもあるといいね」
「そうだな」
俺たちは期待を胸に洞窟を進んでいく。
「ルシル、洞窟に入る前から感じてたものは大丈夫か?」
「うん……少し慣れたと思う。けど洞窟の奥に入れば入る程気持ち悪さが強くなってくる感じがするの」
ルシルが怯えていたあの様子は今ではどうやら抑えられているようにも見えるが、それでも何らかの危機をルシルが察知している事は間違いない。
「何か気が付いたら教えて欲しい」
「判った。あ、ゼロ……前」
ルシルに意識を向けていたからか、目の前の光景を俺よりも先にルシルが気付いた。
洞窟の通路が大きく開け、大きな空間がそこには広がっている。
その中央にはうずたかく金貨や金細工、金食器などが山になっていた。
そしてその山の上には、大きなドラゴンが横たわって眠っているようだ。
「なっ、レッドドラゴンじゃないか……」