ドラゴンの後片付け
俺たちは倒したレッドドラゴンの破片を集めている。
「ねえ、これって」
ルシルが何かを見つけたようで、俺の元に持ってきた。
「魔晶石じゃないか? おーいユキネ、ちょっと見て欲しいのだが」
俺の呼ぶ声で少し離れていたところでドラゴンの破片を見ていたユキネが振り向く。
ユキネも何かを手にしながら俺の所へ来た。
「やっぱり、見つけたのね」
「やっぱりっていうと……」
「これよ」
ユキネの手の中には小ぶりな魔晶石があった。
「鱗の隙間に挟まっていたのよ。それなりの数が」
「凄いな。でもなぜ魔晶石がドラゴンの身体に……もしかして、ドラゴンの住処に魔晶石が転がっていて、普段から魔晶石が近くにある生活で当たり前のように鱗の隙間とかに入り込んでいたとか……」
「ドラゴンの鱗には金貨が挟まっている、なんて伝説もあるくらいだからね」
そうだとすると、このレッドドラゴンの住処には魔晶石が採れるという可能性も。
「ウィブが行けない距離ではないからな、行ってみるか?」
「うん」
「そうね、行ってみるのもいいわね」
俺の問いかけにルシルもユキネも前向きな答えを返す。
「という訳だ、ここがあらかた片付いたらヴォルカン火山とやらに行くが、頼めるな? ウィブ」
ワイバーンのウィブは少しおどおどしている感じだが。
「わ、儂も行くのか?」
「ああ。先日通った所だろう? 道案内も兼ねて、俺たちを運んでくれたら助かるのだがな」
「だがそこはドラゴンの巣だからのう……」
「そのドラゴンは倒したじゃないか。放っておいたら財宝も誰かに取られてしまうかもしれないぞ」
「財宝……!」
ウィブの目が期待に満ちたものへと変わった。
「よし行こう、すぐ行こう、な勇者、今行こう!」
ウィブが翼膜を広げて今にも飛び立とうとしている。
「待て待て、ここを片付けたら、と言っただろうが。お、丁度よいところに」
遠くの人影を見つけて俺はその人影に向かって手を振る。
相手も手を振り返していた。
「シルヴィアや町の人たちが回収にやってきてくれたようだ」
「思念伝達で伝えておいたから」
「そうだな、助かったよルシル」
俺はルシルの頭をなでてやると、ルシルは猫のように目を細めて喜んでいた。
シルヴィアたちと合流した俺は、レッドドラゴンの破片についての対処をシルヴィアに任せる。
「判りましたゼロさん。これだけの素材です、ただ商売に使うよりもまずはゼロさんたちの装備にあてがいましょう。それにこのドラゴンの肉は腐りにくく長持ちしますので、遠征の際の携帯食料としてお持ちになった方がいいと思いますよ」
「ほう、ドラゴンステーキか」
「そうねそう言えば本で読んだ事がある」
「ユキネ、その本にはなんてあったんだ?」
ユキネは思い出しながらゆっくりと話をする。
「確かドラゴンの身体は死んでからもその不老や長命な効果が持続していて、腐らせる力を抑えるという話だったわ」
「腐りにくいというのは確かに長旅にはもってこいな機能だな」
「燻製や干し肉にすると、より長持ちするみたいね」
「それなら少し町で準備をしてからヴォルカン火山へ向かうとしようか」
「あれ、今からすぐじゃないのか、勇者?」
少し残念そうなウィブ。
「お前もドラゴンステーキ、食べたいだろう?」
俺の一言でウィブはまた目を輝かせていた。