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ドラゴンスレイヤー

 俺はどうにか捕縛撚糸キャプチャー・ネットから解放されて無事に地面へ降り立った。


「一時はどうなるかと冷や汗をかいたぞ」

「いやあ悪い悪い」


 悪びれたそぶりもなくユキネが形だけの謝罪をする。


「それにしても」


 俺はレッドドラゴンのなれの果てをみつめた。

 上空で凍結したレッドドラゴンが大地に激突して、その衝撃で全身がバラバラに砕けてしまったのだ。


「ドラゴンの鱗はたいしたものだよ。物理攻撃は跳ね返すし魔法耐性も高い。こんな鱗に守られているのだからそれはそれは負ける事は今までなかっただろうさ」

「ゼロに会うまでは、ね」


 ルシルが嬉しそうに俺へ飛びつく。


「心配したか?」

「ぜ~んぜん!」


 ルシルは満面の笑みで答えた。


「町の方は無事か」


 俺はルシルと共にやってきたユキネに尋ねる。


「ええ。ま、まあ、あんたがドラゴンを誘導したから町が無事だった、って言う訳じゃないけどさ、一応礼は言っておくよ」


 素直じゃないなあ。だがまあいいだろう。


「ただこのレッドドラゴンがお前を追ってくるなんて、いったいどこの縄張りを通ってきたのだ、ウィブよ」

「儂にもあまり覚えはないのだが、可能性があるとすれば南方にあるヴォルカン火山を通った事かもしれんのう」

「ヴォルカン火山……」


 俺は真面目な表情でルシルとユキネの顔を見る。


「知っているか、ヴォルカン火山」


 二人とも首を横に振って知らないという事を表明した。


「火山なんて見た事も聞いた事もないよ。南方ってそれはかなり遠いんじゃないの?」

「ユキネが知らないとなると、近くはないのだろうな。ウィブ、それはここからどれくらいの距離にあったんだ?」

「そうだのう、儂が三日三晩飛んだとして、十日くらいかのう」

「おい、日数が合わないだろう。三日三晩飛んでも三日は三日だろ」

「はて?」

「ワイバーンには数の概念が無いのか!」

「はて?」


 ウィブはあらぬ方向を見てとぼけてみせる。


「まったく……。それはそうと、このドラゴンの破片はどうするかねえ」


 俺が凍らせてしまったせいで割れて粉々になったとはいえ、元々大きな身体のドラゴンだ。部分だけ取ってもかなりの貴重な素材が取れる。


「溶けるまでに時間がかかるだろうが、割れた欠片の中には竜の鱗や竜の骨とかがあるからな。道具としても加工素材としても使える物はたくさんあるだろう」


 ユキネが俺の言葉を聞いてドラゴンの破片に触れてみる。


「そうね、これならシルヴィアさんに頼めばかなりの額で取り引きしてくれるのじゃないかしら」


 ユキネは開いた手の大きさくらいの竜の鱗を手にした。


「これならお守りとしても鎧を作ったとしてもいい物が作れると思うわ」

「ドラゴンスケイルとか凄いな」

「軽くて丈夫、いい鎧ができるわよきっと。でも残念なのはエイブモズの町にはドラゴンの素材を加工できる程の鍛冶師や彫刻家がいないという所よね」


 確かにエイブモズの町は学術都市だ。研究は進んでいるが鍛冶職人などは研究の対象ではないのか、高度な腕を持っている職人はいないという事か。


「判った、この素材は俺たちがどうにかしよう」

「そう願うわ、ドラゴンスレイヤーさん」


 ユキネは俺を見てそう呼んだ。


「ドラゴンスレイヤー、そうか。レッドドラゴンを倒したのだものな」

「ああ、儂がドラゴンスレイヤーじゃ」


 ウィブが割り込んでくる。


「ウィブ~、あんたはドラゴン倒していないでしょ~」

「むむむ……」


 ユキネの反論にウィブが落ち込んでしまった。


「そんな事はないさ。ワイバーンが俺と共に戦ってくれたんだ。ウィブと一緒だったから空で戦えたし、ドラゴンを倒す事ができた。それに」


 俺はルシルとユキネの頭をなでる。


「ルシルがユキネに思念伝達テレパスで指示を伝えてくれて、ユキネが捕縛撚糸キャプチャー・ネットで俺を絡め取ってくれたおかげでドラゴンを倒す事ができたのだからな」

「さ、作戦通りだったわね!」


 ユキネには特に作戦の指示は出していなかったのだが。


「まあ、ここにいる俺たち全員がドラゴンスレイヤーという事だな」

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