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空中戦

 ワイバーンの背に乗った俺とレッドドラゴンの戦いは空でのものとなっていた。

 初めは町の上空だったが、レッドドラゴンの吐き出す火球を避けているうちに町から離れた荒れ地へと戦場が移っていく。


「勇者よ、儂はドラゴンに勝てないと思っていたがな、そうでもないらしいな」

「なんだいきなり。そんな台詞は勝ってから言え」


 ワイバーンのウィブがレッドドラゴン火球を紙一重で躱す。

 飛んでいった火球は荒れ地に落ちて地面をえぐる。

俺も魔法で対抗するが、なかなかこれが当たらない。


「相手どころか自分も高速で飛んでいるからな、狙いが定まらん」

「勇者は空中戦が初めてと見える」

「空は飛んだ事がないからな」


 軽口を叩きながらもウィブはレッドドラゴンの火球を躱す。

 だが俺の放つ氷塊の槍(アイススピア)もレッドドラゴンにはかすりもしない。

 たまに当たっても頑強な鱗に弾かれてかすり傷にもならなかったのだ。


「Rランクスキルの氷塊の槍(アイススピア)くらいではたとえ命中したとしてもレッドドラゴンを倒せる程ではないだろうが」


 右に左に旋回しながらレッドドラゴンを狙う。


「ゼロ、手伝える事はないかな」


 急にルシルの声が頭の中に響く。

 思念伝達テレパスで俺と念話を行える。Nランクの魔法ならルシルも使えると言う事だ。


捕縛撚糸キャプチャー・ネットみたいなものは使えるか?」


 ルシルは少し考えているようだった。


「ユキネに聞いてみるね」

「ああ頼む」


 前に俺が使おうと思った時はうまく発動できなかったし、ドラゴンサイズの捕縛撚糸キャプチャー・ネットを作るとしたら今のルシルには使える魔力が少なすぎる。

 ルシルは魔力量が多いものの、魔法として使う事のできる魔力は少しでしかないのだ。例えて言うなら袋の入り口を絞っているような。


「ユキネに頼んだ。待ってて」

「ああ」


 俺とワイバーンのウィブが空を駆け巡る。レッドドラゴンに追いつ追われつだ。


「来たか」


 地面の方から魔力を感じた。空中に大きな蜘蛛の巣のような魔法の網ができあがる。


「あれっ!?」


 網は俺にかかるって身動きが取れなくなった。


「ちょっ、こら! 何やってんだよ!」

「ユキネがごめんって言ってる」

「それよりもこれを何とかしろ!」


 ウィブの羽ばたきが制限されて思うように空を飛ぶ事ができない。

 滑空どころかこれでは墜落するのがオチだ。


「仲間の協力が仇となったか、人間よ」


 レッドドラゴンが冷ややかな笑いを俺に向ける。

 俺の正面で口を大きく開けるレッドドラゴンのその喉の奥には赤い炎が舌なめずりするように燃えていた。


「それを待っていたのだよ」


 俺の呪文詠唱を聞いてレッドドラゴンは慌てるが火炎弾を吐き出そうとしていた動きを止める事ができない。


「食らえっ、Sランクスキル発動、凍晶柱の撃弾(フリーズバースト)っ!」


 俺の両手を中心に周りの温度が一気に下がり、巨大な氷の柱が生成される。


「がっ、やめっ!」


 レッドドラゴンの大きく開いた口に、俺の放った巨大なつららが細かい冷気の粒をまといながら飛び込んでいく。


「ぐわっ!」


 レッドドラゴンの断末魔は一瞬で止まった。

 頭を貫いたつららがそのままレッドドラゴンの全身を凍らせていたのだ。


「ふう、どうやら片付いたな」

「儂もそう思いたいが」

「どうした、まだドラゴンが生きているとでも?」

「そうではないが、このまま身動きが取れんと儂らも真っ逆さまでな」


 俺は急いでルシルに思念を送る。


「ユキネに、今すぐ捕縛撚糸キャプチャー・ネットを解除してくれって!」

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