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出口を塞がれた革袋

 俺たちはワイバーンのウィブ用に広めの馬小屋を用意してもらった。もちろん食われないように馬や他の家畜も退避させての事だ。

 一応餌となるような物を与えておいたから、腹は足りているとは思うが。


「ワイバーンなんて飼った事がないからなあ……」

「ですが、流石ゼロさんですね、ワイバーンも味方にするなんて」


 シルヴィアが尊敬のまなざしで俺を見る。これはこれで悪くない。


「確かに仲間は増えているんだが、結局ルシルの身体を用意してやることとアリアを元の形に戻してやることについては、まだ先が長そうなんだ」


 俺たちは研究所の中で広めの部屋を借りて会議を行っていた。

 円卓の周りに集まって座って話を進める。


「今までの事を整理するとだな……」


 俺は話せる範囲でシルヴィアたちにもルシルの魔王としての身体について説明した。

 アリアはルシルの身体から造り出された複製人間クローンであること、ピカトリスが連れていた少女はルシルをベースに設計された人造人間ホムンクルスだったこと、魔王ルシルの妹のレイラが魔族を統合させようとしてルシルから魔王の力を制御する能力を奪った事。


「本当だ、ルシルちゃんの額の角が無くなっている……」


 カインがルシルの頭をまじまじと見つめる。


「こらカイン、あまりじろじろと見るものじゃありません」

「はーい、ごめんねルシルちゃん」

「ううんいいよ、アリアにしてみればこれが元の姿なんだもん、きっと角は生えていない方がいいんだよ」


 少し寂しそうにルシルが応えた。


「ルシルが魔王の力を使えないのは別段構わないと思っている。それよりも使えない方が普通の生活を暮らせると思うと、悪くはないのかもしれない」

「私、普通の女の子として生きていけるのかな……?」

「かもしれないな。だといいんだが」


 俺の期待する言葉にユキネが否定的な事を言う。


「多分それは難しいわね」


 ユキネが円卓に肘をついて手を組む。その大きい胸が円卓に乗っている。


「どうしてだ? 魔王の能力は使えなくなっているんだ、多少は元魔王の肩書き欲しさにちょっかいを出してくる奴がいるかもしれないがそれくらいなら俺が撃退してやる」

「そうじゃないのよ。今、魔王の能力が使えないって言ったわよね」

「ああ、魔王特化能力の大罪の清算ジャッジメント・ギルティが使えなかった。簡単な攻撃魔法とかであればかなり威力は低いが使えるのだが、魔王の能力や高位の魔法は試してみたがうまく発動できなかった」


 俺たちはウィブの背中にまたがりながら空の上で魔法や能力の発動を試していたのだ。

 その結果、雷の矢(ライトニングアロー)のようなNクラスの魔法であれば発動できるのだが、地獄の骸爆(ヘルズ・バースト)のようにSSSランクの魔法や魔王固有の技能の吟味(チェック・ザ・センス)、これもSSSランクの能力なのだが、これらも使えなくなっていた。


「ただね、私が錬金術師アルケミストとして見たところ、ルシルちゃんの体内に流れている魔力量はそれ程減っていないのよ」

「なんだって……?」

「ううん、それどころか段々と増えていっているみたい。今まで強大な力を使っていたから適度に消費していたのでしょうけど、このままだと魔力が溜まりすぎて爆発してしまうかもしれないわ」


 日々魔力が増えていく。それを消費できないと、ルシルは満杯の革袋へ水を入れた時のように破裂して溢れてしまうというのか。

 俺はルシルの小さい身体を見る。

 こいつの身体に、使い切れない程の魔力が……。

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