表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

142/1000

回復と脱走と初訪問

 思った通りだ。学術都市エイブモズは蜂の巣をつついたような大騒ぎだった。


「おい、町に行くとは言っていたが直接町中に降りろとは言っていないぞ! もっと手前で下ろすようにって何度も言ったではないか!」

「儂にしてみれば近くも遠くも大差ないぞ、がはは!」


 ワイバーンはがははと笑うのか。

 いや今はそれどころではない。ワイバーンのウィブがエイブモズの町の中央広場に降り立った事で、町は大騒ぎになっている。


「ただでさえピカトリスが襲撃した事で町に被害が出ていたというのに、その上ワイバーンの襲来となれば町の人たちも穏やかじゃあないよな」


 俺は諦めつつもワイバーンのウィブの背から降りた。

 ルシルと協力して村娘を降ろし、次いでルシルもワイバーンから降りる。


「ちょっとあんた、いきなりドラゴンで飛んでくるなんて何やってんのよ!」


 わめき散らして大きな胸を揺すりながらやってきたのはユキネだった。

 その後ろにはシルヴィアと、昼になって少年の姿になっているカインがいた。


「おお、カインもう大丈夫なのか!」

「はいゼロ様、ごめんなさいボクの不注意で迷惑をかけちゃって……」

「いいんだそんな事は。俺だって動く死体(ゾンビ)に噛まれたら同じようになっていただろうからな。回復できて何よりだった」


 俺は軽くカインの頭をなでる。もう熱もなさそうだ。少しやつれているがそれは食事と休息で元に戻れるだろう。


「ピカトリスの奴はどうした? 深く考えずに町へ送ってしまったがこの町にしてみればピカトリスは不倶戴天の敵にも近しい奴だったよな」

「そのことなのですが」


 シルヴィアが歩み出てピカトリスの事を説明してくれる。


「ピカトリスさんはゾンビ化を防ぐ薬とこの首飾りをユキネさんに渡すと、町に入らずどこかへ去ってしまったようなのです。なので私も直接お礼を言う事ができずに……」

「何言ってんのよ」


 シルヴィアが済まなそうにする姿を見てユキネが口を挟む。


「ピカトリスの奴、勝手に私へいろいろ渡したと思ったら、まだ飛んでるグリちゃんから飛び降りたのよ! もう信じらんない」

「そうなのか、それはまた大変だったな」

「大変なんてもんじゃなかったわよ! でもこうしてカインくんが元気になったのはよかったけど、薬が偽物だったらって思うと気が気じゃなかったわ」

「だが無事に再会できて、回復したのは何よりだったよ、ありがとうユキネ、グリコもな」


 俺はユキネの隣でおどおどとしているグリコの頭もなでてやる。

 言葉はどこまで理解できているのか判らないが、グリコは背中の翼を小さく畳んで少し嬉しそうな顔をした。


「それにしても何なのよこのドラゴンは!」


 ユキネはウィブを見て驚きと戸惑いをない交ぜにした顔で俺を見る。


「ドラゴンじゃないんだけどな、ワイバーンなんだが」

「そんなのどっちだっていいわよ! いきなり町に入ってくるっていうのが問題だって言うの! 町だって大混乱でしょ!」

「それは済まん。空からこんなのが降りてきたらそりゃあ驚くよな」

「当たり前でしょ!」


 威勢を張っているのかもしれないがえらい剣幕だな。


「ほらウィブ、お前からも謝っておけ」

「がはは、悪い悪い、町なんて初めてで珍しくてつい、な」

「ついじゃないでしょ!」


 ユキネの怒りにワイバーンのウィブも少し気圧された感じだ。


「ていうか喋れるの!?」

「今更!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ