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巨大猪ダエオドン

 俺はルシルを抱えて戦場を後にする。崩れた山肌や至る所に突き刺さる岩の棘のある場所ではおちおち休んでもいられない。

 それがレイラの去った後だとしてもだ。


「ルシル、大丈夫か」


 ルシルは小さくうなずく。

 その額にはもう角が無い。そうなると俺の妹として育ったアリアとまったく同じ姿だ。


「ゼロ、レイラは……?」

「あいつはいなくなった。もう気にする事はないぞ」

「そう……」


 俺はルシルを抱きかかえたまま足場を選んでヘイテイ山を下りる。

 このまま森を抜けてあとはエイブモズの町へ行くだけだ。


「重くない?」

「重くなどあるか。むしろお前の身体は成長期なんだ。もっと重たくなってもらわないとな」

「そんな言い方はないと思う」


 少しむくれるルシル。俺はそんなルシルを無視して話を続ける。


「町に戻ってシルヴィアたちに合流しよう。ピカトリスもいればカインも大丈夫だろうよ」

「そうね」

「それにしてもカインがワーキャットだったなんて、どこでそんな珍しいものに感染したんだろうな」

「感染だとしたらね」

「生まれつき、って事もあるのか?」

「うーん、どちらかというと魔法とか呪いとか、そういうのもあるかなって思って。魔獣化の首飾りの事もあったし」

「言われてみればそうだな。それもピカトリスなら何か解決方法があるのかもしれないけど」


 少しでも元気を取り戻せるように、俺たちはたわいない話で盛り上がる。


「ん?」


 俺は藪の向こうに動きがある事を察知した。敵感知センスエネミーは発動していないから敵ではないのだろうが。


「何かいるね」


 ルシルも気が付いたようだ。俺はルシルを下ろして剣を構える。ルシルは一人で立つ事が難しい様子だったが適当な枝を杖代わりにしてどうにか倒れずに済んでいる状態だった。


「来るなら来い!」


 俺が藪の中の奴に大きな声で威圧をかける。

 草の葉がこすれる音と鼻で鳴らす鳴き声が聞こえた。


「猪、か? それにしては……」


 藪から出てきたのは俺よりも肩高のある巨大な猪だ。四つ足で立っていてこの高さ、二メートルはあるだろうか。


「ゼロ、もしかしてこいつってダエオドンじゃない!?」

「巨大猪だな」


 ダエオドンが前足で地面を掻いている。今にも突撃をしてこようとしているのか。


「つっ」


 敵感知センスエネミーが発動して耳の奥が痛くなる。


「敵意を向けたか、俺にっ!」


 ダエオドンをにらみつけると敵感知センスエネミーが少し弱まった。獣が純粋に怯えたのかもしれない。


「あそこ、ダエオドンの脇に誰か倒れているよ!」

「ああ、だからこそ俺の方に注意を向けさせたのだが……俺に怯えて逃げてくれれば楽なのだがな」


 ダエオドンの近くに倒れている人間はピクリとも動かず、生きているのかどうかも不明だ。


「まずはこいつを片付けてからだな」


 俺は剣を構えるとダエオドンの正面に立った。

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