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義妹の思想で統一しそう

「あんたに義妹いもうと呼ばわりされる覚えはないぞっ!」


 首元に剣を突きつけられたレイラが吠える。

 数発の岩の棘が俺に向かって飛んでくるが、俺の周りに薄くできた光の層がそれをことごとく弾き飛ばす。


「俺はこいつを守ると決めたんだ、見捨てて行く訳にはいかないのでな。ここで退くのなら見逃してやるがどうだ?」


 俺は怒りに我を忘れそうになるがそれでも冷静さを保とうと努める。

 抱き寄せているルシルの鼓動が俺にも伝わり、心を落ち着かせているからだろうか。

 守ってやらなければと。


「かっ、言うね勇者! いいさお前ごときに敗れるようでは魔族の統一など夢のまた夢、ここで命尽きるも本望だ、殺せっ!」


 観念したのかレイラは両腕を広げて無抵抗の姿をさらす。


「なぜお前は魔族の統一にこだわる。今ではベルゼルたちもまとまって住処すみかを作っているというのに」

「あのような軟弱者にはこの三年虐げられた魔族の無念、失った魔族の誇りを回復させる事などできん!」

「馬鹿を言うな。そんな形のない物に命までかけるとは。生きていれば何とでもできるだろうに!」

「うるさいっ!」


 レイラは身を乗り出して俺の剣に自ら貫こうとする。

 とっさに俺は剣を引く。


「甘いわっ!」


 レイラはさらに突っ込んできてルシルの頭と頭がぶつかる。


「何をするっ!」


 俺は剣を横に振るうがその時にはレイラが後ろに飛び退いていた。


「いただいたぞっ! これが魔王の力……魔力の源かっ!」

「どういうことだ!」


 レイラには先程はなかった物がその額に存在した。

 俺はルシルの事を見る。


「角が……角は奪えるのか……」


 アリアは角がなかった。ルシルの封印された魂をその身に宿してから額に一対の角が生えてきたのだ。


「なるほどこれは凄い。力がみなぎってくるようだ!」


 レイラが手を振るうと呪文も唱えずに岩の棘が生成される。

 それも大きな棘が無数に。


「礼といってはつまらぬ物だが受け取ってくれ勇者よ」


 レイラが右腕を天に掲げ、それから振り下ろす。

 それを合図にして岩の棘が一斉に俺たちへ向かって飛んできた。


「なるほどこれは凄いな……だがっ!」


 俺は剣を構える。

 俺が手にしているのは覚醒剣グラディエイト。魔王を倒した時の剣が俺の魔力でさらに強化された物だ。


「これくらいの窮地は幾度も脱してきたぞ!」


 向かってくる岩の棘を打ち払い、たたき落とし、弾き飛ばした。


「ほう、まだそのような悪あがきができるとは、勇者の力を侮っていたかもしれんな」

「それはどうも! まだまだお前のようなひよっこには負けられないんでね」

「ほざけ!」


 棘の雨が激しさを増す。


「いい加減に、しろっ!」


 俺は足下の岩の壁に剣を思い切り叩き付ける。

 一瞬にして壁に亀裂が入り、崩壊した。


「なっ!」


 足場が崩壊してレイラが片膝をつく。俺はまだ崩れていない場所を選んで立つ。


「ふぅ、はぁ……。流石に急には制御も難しいか」


 レイラは大汗をかいて息を整えようとする。

 魔力消費が激しすぎて体力の方が持たなかったとみえた。


「いいだろう、ここは一旦退いてやる。この角があれば次はお前を倒して我が魔族を統べる者となるのだ!」


 この騒ぎでまた土砂崩れが発生する。

 レイラは崩れた岩に乗ったまま山を下っていった。高笑いを残して。

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