メタモルフォーゼと猫耳娘
カインは猫耳娘へ身体変化する事ができる。本人の意思ではなく月の光を見る事で起こる事なのだが。
「なあピカトリス、魔獣化の首飾りだがそれはどんな効力があるんだ」
「その名の通りよ。そこの羽の生えた小娘もそうでしょ」
「小娘……ああグリコのことか」
以前襲いかかってきたヒポグリフだった少女。そこについていた首飾りを破壊したことで、背中に翼の生えた少女になったのだ。
「その羽、その子は天使の系統みたいだわねぇ」
「て、天使ぃ!?」
「そうとしか考えられないわ。この子も被害者って訳ね」
「おいおい加害者が言う台詞か」
俺はピカトリスの胸ぐらをつかみそうになるがピカトリスはそれを新しく生えた腕で払ってのけた。
「加害者とは酷いわね、これはあたしの研究室に保管していた物なのよ。少しあんたと冒険したりいろいろな町に行っている間にこの辺りに棲み着いていたマンティコアが奪い去っていったらしいのよ」
「奪い去った?」
「それで言葉巧みに獲物となる人間や亜人種に首飾りを付けさせたみたいね」
「そんな事が……」
「何人かの首飾りは回収したけど、まだ魔獣化している子はいると思うわ。まだ数が足りないもの」
もしかしてカインはこれに関係していたりするのだろうか。月の光を目にすると猫耳娘になってしまうのだ。
「なあ、その首飾りは着けている間ずっと変身しているのか?」
「そうよ。どうして?」
「夜に月を見ると獣になってしまうというのはあるのかと思ってな」
「ふうん、それはないけど、興味あるわ」
ピカトリスは目をキラキラさせて俺を見る。
「それってライカンスロープなんじゃないかしら」
「ライカンスロープ?」
「狼男よ」
「うむ、狼と言うよりあれは猫なんだがな」
「あら、それならワーキャットかそれに似た種族かもしれないし、それかワーキャットに感染しちゃってそうなったか、かしらね」
「感染……」
そうなると、ワーキャットに感染し、ゾンビにも感染したとでもいうのか。いや、先天的なものかもしれないし一概には言えないだろうが。
「ただ、ワーキャットとゾンビは並存できるのか?」
「それはあたしも判らないわ。でも見てみたいわね」
「ゾンビ化を戻してもらわなければ困るのでな、早速にも連れて帰るつもりだが」
俺はそう言いながらも有無を言わせない態度でピカトリスをにらむ。
「んもぅ、そんな怖い顔をしないでよん」
俺がピカトリスの襟首をつかんで立たせようとした時、ルシルが慌てた様子でやってきた。
「ゼロ、大変、あの人造人間の子が……!」
俺もピカトリスも、今のルシルとよく似た人造人間を見る。
少し離れていた所で横になっていた人造人間だったが、その呼吸は荒い。
湯気らしい物まで出ている。
「なんだ、これは……」