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狙いは魔獣の棲む山の奥

 カインは落ち着いて眠っている。


「ひとまずは小康状態といったところか。ユキネたちの研究、過去の実績を信じてカインは養生してもらおうと思う。そうなるとカインの様子はシルヴィア、お前に見てもらった方がいいと思うのだがどうだろう」

「はい……そうできたらと思います」


 シルヴィアが承諾すれば俺はそれで問題は無い。


「ピカトリスを追う。奴であればこのゾンビ化の呪いについて解決策を持っているかもしれない。そこでだ、ユキネには俺に付いてきて欲しい」


 俺はユキネの事を見て反応を伺う。

 ユキネは不死化された肉体に自分の魂を入れ直したタイプのゾンビ、喰らう者(イーター)だ。


「そうね、あの死霊魔術師ネクロマンサーを見つけるために必要という訳ね」

「ああ。近くにいるのが判るという事は大きな利点だ。今度は幻影ではなく本体を叩きたい」


 俺はあの忌々しいピカトリスの遠隔投影を思い出すと、思わず握った拳に力が入る。


「いいわ。私もこの身体、気になるところがあるから……」

「ねえゼロ、ゼロは違う意味でユキネの身体が気になるんじゃないの?」

「ん?」


 ユキネは大きな胸を支えるように腕を組む。


「いやっ、別に何も気になるところはないぞ、うん。動く死体(ゾンビ)といっても内容が違うからな、喰らう者(イーター)がどういう生活をしているとか、どうやって動いているのかとかは気になるといえば気になるが……」

「別にそんなに慌てなくてもいいんだけどね」


 なんとなく、ルシルの顔が不機嫌そうに、だが少しいたずらっぽく笑っているように見えた。


「そんなことよりだな、明日は早めに出発しよう。ユキネ、まず目的とする場所とか思い当たる所とかがあったらそこを目指そう。候補はあるか?」

「そうね、一番怪しいところはあるんだけど、そこは強大な魔獣が住み着いていて私たちの手には負えない場所だったの」

「ほう。魔獣か」

「どうかしら。今まで行った者は誰一人と帰ってこなかったのだけど」


 俺はルシルを見る。

 ルシルは余裕の表情だ。


「大丈夫だろう。魔獣ならどれくらい強かろうが何とでもなるさ」

「霊体じゃなければね」

「うるさいぞルシル」


 ルシルは小さく舌を出す。

 こうして俺たちは、ピカトリスがいると思われるヘイテイ山へと向かうこととなった。


「なあユキネ、ヘイテイ山まではどれくらいかかるんだ?」

「そうね……歩いてだと一両日くらいかしら」

「その魔獣はエイブモズの町までやってきたりはしないのだな?」

「ええ。ヘイテイ山に棲息しているらしくて、人里には降りてこないの。ヘイテイ山は元々獣も多くて、木の実、山菜がよく採れる豊かな森が広がっているのよ。だから魔獣も食べ物には困らないと思うわ」

「なるほどな。いつぐらいから棲み着いたかは判るか?」

「さあ。でも私が子供の頃にはそんな話はなかったから……ここ百年くらいでやってきたんじゃないかしら」


 百年、か。


「え、百年!?」

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