フレッシュゴーレムマックスパワー
俺は覚醒剣グラディエイトを握り直し、目の前にいる家よりも大きいフレッシュゴーレムに突撃をかける。
「やっておしまい、フレッシュゴーレムちゃん!」
ピカトリスが命令すると、フレッシュゴーレムが俺を踏み潰そうと足を上げた。
「ゼロ!」
「心配いらん」
あの透明な悪霊たちを倒しきった俺にはもう怖いものはない。
「怖くなんかなかったけどな!」
「別に聞いてないって」
俺はフレッシュゴーレムの足を避けて右へ跳ぶ。
フレッシュゴーレムは近くの家を踏み潰し、蹴飛ばし、跳ね上げる。
「おいおいどれだけ力が有り余っているんだ」
辺りには家の破片が嵐のように飛び散っていく。
飛んでくる大きな破片は剣で打ち払う。細かい物は身体に当たるが無視をする。俺の防御力をもってすれば傷にすらならない。
だが研究所を出ていたユキネや町の兵士たちは、飛んでくる瓦礫の中を右往左往している。
「やれぇ、町ごと破壊してしまうのよ!」
ピカトリスがさらに命令を下す。
フレッシュゴーレムは手当たり次第に町を破壊していく。
「ぎゃっ!」
「ぐわっ!」
兵士たちの何人かは飛ばされた壁や柱の下敷きになって悲鳴を上げる。
「お前たちは下がっていろ!」
「わ、判ったわ」
研究所を出ていたユキネや町の兵士たちを退避させる。流石にこの吹き荒れる破片の中、全員を守り切れるものではないからな。
「ゼロ、私の事は心配してくれないの?」
なぜかルシルが俺をにらんでいる。
ルシルに向かって飛んできた破片は、目の前の見えない壁に阻まれて別の方向へ弾き飛ばされた。
「魔法障壁を掛けているのだろう。多少の事なら大丈夫だと信じているからな」
「し、しし信じてなんて、それならいいんだけどさ」
今度は逆にしおらしくなってしまう。ルシルの言っている事はよく判らんな。
「だからといってこのままと言う訳にはいかないか」
俺は再度フレッシュゴーレムに突撃をかける。同じように踏みつけようと足を上げた所を見計らって、残った軸足に狙いを定めた。
「超加速走駆!」
覚醒剣グラディエイトと俺の超加速によって得られた速度と勢いがそのままフレッシュゴーレムの軸足を破壊する。剣を突き刺したところを中心に足が破裂し吹き飛ばされた。
「フレッシュゴーレムちゃんがっ!」
ピカトリスの悲痛な叫びとフレッシュゴーレムが倒れる轟音が重なる。
「まだだっ!」
俺は倒れたフレッシュゴーレムの足に飛び乗り、剣をゴーレムの足へ突き刺す。そのまま倒れたゴーレムの身体の上を駆け上る。
ルシルが俺を鼓舞する声援を送ってくれた。
「ゼロ! そのまま切り刻んでしまって!」
ゴーレムの身体の上を駆け回る俺は、剣をゴーレムの身体に刺して引きずりながら解体を行う。
「そしてここだっ!」
ゴーレムの身体の中心まで走った俺は一度剣を抜いて胸の中心に向かって剣を突き刺そうとする。
「ゼロ!」
ルシルの声が聞こえた気がした。
だが、俺の耳に入ってきたのは、倒れたフレッシュゴーレムが両手で俺を叩いた時の手のひらを打ち合わせた音だった。