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死者の町からの使者

 俺たちの加勢で北門の動く死体(ゾンビ)たちも駆逐した。


「もう後は来ないか……」

「そうみたいね」


 俺とルシルは互いに目配せする。

 周りには一緒に戦ったエイブモズの町の兵士たちがいた。


「あんたら凄いな、助かったよ」

「あれだけのゾンビをいとも容易く。恐れ入ったぜ」


 賞賛を浴びるがそこまで気持ちよくはなれない。他に気になるところがあるからだ。


「他の門は大丈夫なのか? 突破されてはいないのか」

「ああ、どうやら撃退したらしい。俺たちの町の勝ちだ!」

「そうか、ならいいんだが」


 俺は剣を拭いて血糊を取る。


「あ、ここにいたのか。よかった見つかって!」


 俺たちを探していたのは錬金術師のユキネだった。


「あんたたちに頼みがあって探していたんだよ」

「俺たちに?」

「今回の襲撃で判ったんだけど、どうやらあんたたちが群れを引き寄せた疑いがあるのよ」


 ユキネが大きすぎる胸を張って偉そうな態度を取る。

 俺たちがゾンビを引き寄せた?

 だとしたら俺たちが通ってきた南門の奴らなら理屈は通りそうだが、町全体を襲ってきた奴らに何の関係があるんだ。


「いったい俺たちが何をしたというんだ」

「あんたたちの持っている膨大な魔力さ」

「魔力?」

「ああ」


 ユキネは神妙な面持ちで俺たちを見る。周りにいる兵士たちも固唾を呑んで見守っていた。


「私もこの町の近くにしか野良ゾンビが出ない事に疑問を抱いていたんだ。町から離れる程ゾンビがいなくなっていく。噛みついて感染したりすればゾンビは増えていくっていうのに。なぜだと思う?」

「さあな、俺はゾンビには詳しくないのでな。叩き斬って倒すだけの相手だったから特に気にした事はない」

「その答えがこの町、エイブモズだ」


 ユキネの説明は所々飛んでいてよく判らない。


「エイブモズは魔術研究も盛んで高名な魔術師やその弟子たちも多くいる。それに魔術の道具や素材となる生物も含めて多くの魔力が集結しているのよ」

「それは……」

「磁石に集まる砂鉄のように、砂糖水に集まる蟻のように、魔力にゾンビが集まってくるの!」


 ユキネは興奮して大きく手を振りながら胸を上下させて説明を続ける。


「いいかな、今まではそれでもなんとか均衡を保っていられたんだけど、そこへあんたたちが現れた。ただでさえ強い魔力が集まっているこの町に、とんでもない魔力を持ったあんたたちが来たのよ!」

「言いがかりもやめて欲しいな。俺たちが来たからこの騒ぎが起きたとでも言いたいのか」


 流石の俺も額に青筋が立ちそうになる。

 呼吸を落ち着かせて聖剣グラディエイトの柄に手を乗せた。


「待って、早まらないで! あんたたちのその魔力をゾンビ殲滅に使わせて欲しいのよ!」

「どういうことだ」

「この町の魔力量とあんたたちの魔力量を足してゾンビをおびき寄せる。集まったところを一網打尽にするの。いつもなら散ってしまうゾンビどももこれなら集めて倒す事ができるわ!」

「なるほどな、囮という訳か」


 ユキネは強い意志を持った顔でうなずいた。

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