鎮圧のための参加
俺は装備を調えると宿を出た。ルシルもその後に続く。
「突破されたぞ!」
「南門だ! 戦える者はついてこい!」
「市民は避難して! 家に入ったら鍵を閉めなさい!」
兵士たちが走り回る。町の人たちも逃げ惑う。
「門が破られたって。行く?」
「ああ。向かおう」
俺たちは南門へと向かう。
「おいあんた旅の戦士か! 済まないが今は一人でも戦力が欲しい、手伝ってくれ!」
「いいだろう、俺も元からそのつもりだ」
「心強い!」
振り向いた兵士の首に、動く死体が噛みついた。
「うぐわぁ!」
血しぶきを上げて兵士が倒れる。そこに群がるゾンビたち。
「もうここまで来てたのか!」
俺が聖剣グラディエイトを抜いてゾンビたちに斬りかかる。
「頭を、狙うっ!」
ゾンビの眉間を突き刺し首を刎ねる。次に来た奴は鼻の上で横に斬り飛ばす。
勢いで隣のゾンビの腕を斬るがそれではゾンビは止まらない。
「氷塊の槍!」
ルシルが魔法でゾンビの頭を吹き飛ばす。
「済まないルシル、助かった」
「どういたしまして!」
次々と近寄ってくるゾンビどもを剣と魔法で討ち果たしていく。
町はそこそこ建物もあるが広さもある。外部から襲撃する道筋が限定されるが戦う場所はある程度自由が利く。迎撃するにはうってつけの町だ。
「よし、押し返すぞ!」
「うん!」
俺とルシルで南門に群がるゾンビを押し戻す。兵士たちの協力もあってゾンビたちはどんどんと数を減らしていく。
「この分なら殲滅も可能だな」
ゾンビを斬り払いながら次の目標を考える。
「おい、ここはほとんどゾンビを倒したろう。次に危ない場所はどこだ?」
俺は近くの兵士に質問する。
「次に危ない場所……北門が応援を求めているが」
「反対側か、いいだろう。ルシル急ぐぞ」
「うん」
殲滅戦は他の兵士に任せて俺たちは北門へ向かう。
途中、紛れ込んでいるゾンビを倒しながら駆け抜ける。
「ルシル、あれを使うぞ」
「えっ、でもそれだとゼロしか」
「だから俺におぶされ」
「ちょっ、嫌よこんなところでおんぶなんか!」
何を赤くなったり困惑していたりするんだ。
「まったく、急いでいるというのにだな……」
「ひゃうっ!」
俺はルシルを両手で抱えるとスキルを発動させる。通常ではRランクスキルで習得できるが、俺のスキルは勇者補正でSランクに相当する。
「超加速走駆!」
「きゃぅ~!」
ルシルの変な叫び声を置き去りにして俺は加速を始める。成長したスキルの難点としてはあまりに加速しすぎて視野が狭くなり、周囲の物体に接触する可能性が高くなるという事。そのため勇者スキルとして知覚鋭敏化を掛けながら回避できるようにしていた。
「これならものの五分とかからずに北門へ行けそうだな」
「ひゃうぅ~!」
ルシルの声が尾を引いて残っていく。