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研究室と過去の仲間

 俺たちは女魔術師と研究室の一つにいる。

 錬金術の研究をしているという部屋は、ガラスの器具や色の付いた液体が所狭しと置かれていた。

 そこに置かれていた椅子へ俺たちは座っている。


「なんだかポーション工場の実験室みたいね」

「そうだな……」


 ルシルは以前破壊したポーション工場の事を思い出したのだろう。俺もその感覚は判らなくもない。


「先程は済まなかったわね。私はユキネ、この研究所で働く魔術師よ」


 ユキネは形ばかりの挨拶をするが、腕を組んだ姿勢で礼儀正しくとはなっていないようだ。

 ユキネの組んだ腕に乗っかる胸が特に大きい。


「ちょっとゼロ……」

「えっと、ごほん! 俺はゼロ、商人の護衛をしている。こっちはルシル、俺の連れだ」


 ルシルは視線だけ合わせて会釈する。


「少し過剰な反応だった事は反省しているわ。でもあなたも悪いのよ」

「この町の決め事は知らないからな、今日来たばかりだしそんな事を言われても困る」

「そうね、町の外から来た人なら判らなくても仕方がないのかもしれないけれど、だからといって町の掟を破っていい理由にはならないの」

「それは厳しすぎなんじゃない!?」


 俺は怒りを我慢しているルシルを手で制する。


「あそこまでするんだ、何か余程の理由があるのだろう。教えてもらえないか何がいけなかったのかを」


 俺は表向き冷静に質問する。力の勝負となれば俺が勝つのは判っているが、ここは情報を引き出したい。


「あなたたちはピカトリスの事を尋ねたわね。それがいけなかったのよ」

「ピカトリスがいったい何をしたというんだ?」

「この町も昔はここまで閉鎖的じゃなかったの。町を覆う柵ももっと簡易的なものだったわ。単純に境界線を示すためだけの」


 ユキネは手を組んで考え事をするかのように顔の前へ持っていく。見ようによっては祈っているようにも見えた。


「あいつが来てからよ、この町が変わったのは……」

「あいつ、ピカトリスの事か」

「ええ。彼は優秀な錬金術師だった。上半身裸で変な奴だったけど」


 そこは変わっていないらしい。


「錬金術についてはまだ研究が進んでいなかったエイブモズの町にいろいろな知識を伝えてくれたわ。私も錬金術を扱う身だから彼の知識には憧れを持っていたの」


 ユキネは近くにあるガラス器具を手に取ると、中に入っている液体を揺すってかき混ぜる。


「彼は人体錬成について研究をするためにここの機材を、設備を使いたかった。私たちは彼の知識と経験を欲していた。お互いの関係は良好だったのよ」

「ほう」


 昔の仲間が評価される話は聞いていて気分がいい。


「彼の研究は最終段階に入り、人造人間ホムンクルスの生成まであと一歩という所に迫っていたわ」

「そこまで良好な関係が築けていたのになぜ今はこれ程毛嫌いするんだ」

「そうね、それは彼が人体錬成ではなく……」


 ユキネがそこまで口にしたところで聞き覚えのある警報が鳴り響く。俺たちが糸でがんじがらめにされた時に鳴った警報だ。

 それに合わせて兵士らしい男が慌てて研究室に入ってきた。


「ユキネさん、奴らが来ました! 指揮をお願いします!」

「奴らって何よ」


 ルシルが割って入り、間髪入れずユキネがそれに答える。


死霊魔術ネクロマンシーによって造り出された魔物、動く死体(ゾンビ)よ」

【後書きコーナー】

 ユキネは過去作からの転身だったりします。以前、ゾンビものを書いていたところでの登場ですね。拙作、ゾンビ・イーターもお楽しみいただければ嬉しいです。

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