闇堕ちしなけりゃ聖女じゃない!!
深夜テンションの徹夜で仕上げたもの。
お楽しみください。
我輩は俗に言う異世界転生者である。
名前はエルン。名はあるが姓は無い。
私は今、転生先の異世界で孤児として教会に住まわせて頂いてる身なのだが、ちょっと話を聞いて欲しい。
赤ん坊の頃、この教会の前で捨てられていた私は今十七歳であるのだが、丁度十五歳の誕生日の日に前世の記憶を取り戻した。
社畜として日々働き、休日出勤は当たり前。有休?ナニソレ、美味シイノ?
超絶ブラック企業に使いに使い潰された私の唯一の救いは、推し達の存在である。
その中でも特に好きであったのが、様々な作品で聖女と名高いジャンヌちゃんである。
そう。この聖女こそ我が癒し、私の心のオアシスであったのだ。
それでだ。まぁなんやかんやあって過労死(雑)した後にこの世界に転生したらしい。
そして記憶を取り戻してふと顔を上げるとそこには……
その聖女が眩きご尊顔をこちらに向けているではありませぬか。
何を言っているか分からねぇと思うから順を追って説明していくとな?
元々のエルンとしての記憶では、十歳の頃に同い年のこの聖女様(名前はレナたんと言うらしい)がシスター見習いとしてここの教会に来たらしい。
そしてなんと素晴らしきことか。互いにシスターとして頑張っていた私たちは、いつしか親友となっていたのだ。
当然私はその幸運に感謝しながら鼻血を流し、その場に倒れた。
そして居るかも判らぬ神に感謝した。
前世の未練?そんなもん見れなくなった推し達の事しかないわ。
両親は小さい頃に他界してしまっており、一人っ子で友達も少なかった私はネットでこう言う類の小説を見る度に憧れたものである。
剣や魔法の世界で自由に生きてみたいと。
それが念願叶って異世界転生どころか、最強の推しであるジャンヌちゃん似のレナたんと親友とか言うもうこれ以上ないぐらいの出血大サービス。
チート?ハーレム?うるせぇ、レナたんが最強だ。異論反論は受け付けん。
で、今私はその教会でレナたんと一緒にシスターとしてやっていってる訳なのだが、最近少し気になって来た事がある。
それは、
「何でウチのレナたんは闇堕ちしないのぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
そう。聖女と言えば闇堕ち。闇堕ちと言えば聖女。
ノーマル聖女も十分可愛い。だがしかし。
やっぱり闇堕ちが最高だと思うんですよねぇ!?
ダーク然りカオス然りオルタ然り。
聖女が闇堕ちとか背徳感がヤバいんですよ。もう闇堕ち聖女って時点で爆アド取れる訳なんすよ。
男の娘も確かに良い。私はどちらも分別なく好きだ。
しかし!!穢れ無き乙女が闇に身を堕とす事の凄まじいまでの煽情感!!黒に染まって行く乙女の尊顔!!
はぁ、尊い。
ですが、ウチのレナたんは全くその気配が無い。
何故だ!?いや、別にそれでも良いのだが私の本能が、闇堕ちしたレナたんを見たいと訴えかけてくるのだ。
もはや理性では抑えられぬ……。
このままではマズい、早急に何とかせねば。
と言う訳で私は早速計画を立てた。
「レナたんお疲れー!!喉乾いてない?水持ってきたよー!!」
「ありがとう、頂くわ」
よし、ここで……
「おわぁっとぉ!?手が滑ったぁ!?」
「キャッ!!」
我ながら大根役者であるが仕方ない。
そう、作戦その一。水をわざとかけちゃうぞ!!作戦である。
尚、ネーミングセンス……。
「だ、大丈夫レナた……ブフォ!?」
「うぅ……冷たい」
……透けてる。おいちょっと待て、何故その色で透けている?
紺を基調とした修道服だぞ?どんな生地使って作ってるんだ職人よ……良いセンスだ……。
そしてレナたんのほんのりとした膨らみが絶妙に際立っている姿はとても……、
「えっちだ……」
「エ、エルン!?急に鼻血を流してどうしたんですか!?」
濡れている服よりもどうしようもない友の心配をするとは……。
やはりレナたんは聖女であったか……。
さて、次の作戦である。
水をひっかけられたことでワンチャン私へのヘイトも少しは溜まったかも知れぬ……。
ここは一気に畳みかける!!
「いやぁ、さっきはごめんね」
「大丈夫ですよ。小さな失敗くらい誰にだってありますよ」
びしょ濡れになった修道服を干しつつレナたんは言う。
レナたんは今、私服に着替えている。
丈の長いスカート(※とはちょっと違うスカートもどき)がそのおみ足を完全にガードしている。
全く羨ま……けしからん服だ。
「あぁ!!レナたんマジ聖女!!」
「もうっ、エルンったら」
なんとおちゃらけては居る物の……今がチャンスか。
「お詫びに魔法ですぐに乾かすよ!!」
「そう?じゃあお言葉に甘えて……」
「任せなさい!!よーし……おおっと!?いきなり強風がぁ!?」
「え?ええぇ!?」
作戦その二、いたずらな風がレナたんのスカート(※もどき)をめくっちゃうぞ作戦である。
ちなみにこの強風は私の自前の魔法である。
尚、ネーミングセ(以下略
「だ、大丈夫?レナた……プッハァ!?」
「ちょ、止めてぇぇえええええええええ!!??」
必死にスカート(※もどき)を抑えるレナたん。
あぁ!?下着が見えそうで見えないぞぉ!?凄く強くやってるのにおかしいなぁ!?
これが俗に言う鉄壁スカート(※もどき)って奴か!?
「あぁスカートを必死に抑えるレナたん……尊死しますわ」
「ちょ、また鼻血ですか?エルン、しっかりして!?」
「おぉう、我がアモーレ……レナたん……」
「今から回復魔法かけますから、頑張って!!」
結局鼻血を出してぶっ倒れた私はレナたんに回復魔法をかけて貰い復活した。しかも回復している間レナたんの極上の膝枕と言うご褒美付きである。
「あぁ……レナたんかわええのう」
「しっかりして、エルン。もう大丈夫?」
「あぁ、元気百万倍のスーパーウーマンだぜぇ……。今の私なら空も飛べるはずだ」
そう言って私は天に拳を向ける。
「フフッ、変なの」
私のアホな言動で笑ってくれるレナたんマジ聖女。
……さて、次はどうしようか。
「あっ、もうすぐ夕方ね……。私夜ご飯の材料買って来るわ。留守はお願いね?」
「任せたまえよ!!レナたん成分を補充した私に勝てる者など居ない!!」
「頼もしいわね。任せたわ」
そう言うとレナたんは荷物袋を持って駆けていった。
この教会には捨てられた子供が何人も住んでいる。実際私もそうだったわけだが。
その子たちの為に教会やシスター達は寄付や募金を募ったり、貴重な回復職としてお金を稼ぎ子供たちを養っている。
私とレナたんは他のシスター達を除けばここの最年長であり、稼ぎ頭でもあるのだ。
さて、留守を任されたのだがレナたん追っかけるか。
一応私の次に大きい子には言っておこうか。
「……つ~訳で、私はちょっと今からレナたん追っかけてくるわ」
「つ~訳でって、どういう訳だよエルン姉!!何そんなくだらねぇ事やってるんだよ!!」
「くだらないとは何事か!?私はレナたんを闇堕ちさせるのに今、命を懸けているのだよ!!」
「そんな事に命懸けてんじゃねぇ!!」
私の次に大きい男の子、マーク君である。
この子と来たら頭が固いったらありゃしないんですよ。
おねぇさん将来が心配でなりませんわぁ……
「おい、全部口に出てるぞエルン姉」
「お?マジ?じゃあ行ってきまーす!!」
「あっ、待てって言ってるだろ!!」
マーク君が何か言っているが気にしない気にしない。
レナたん、今行くからね!!
「……はぁ、本当にレナ姉の事しか見てねぇなエルン姉は」
留守を押し付けられた俺は一人で呟く。
「おやおやおやぁ?かまって貰えなくて寂しいのぉ?ねぇマーくんどうなのぉ?」
「うるさいぞエミリー」
「そんなぁ照れちゃって。あ、もしかして私のこと好きなの?」
さっきからウザ絡みしてくるエミリーは俺と同い年で同じ日にこの教会に捨てられていた。
なんだかんだの腐れ縁で今はこの教会で二人で義姉二人の手伝いをしている。
「そんな訳無いだろ。俺が好きなのはエルン姉だ」
「ありゃりゃ、はっきり言うねぇ」
最近妙にウザ絡みが増えて来たのはなぜだろうか。
しかも口調や仕草が日に日にエルン姉に似てきている気がする。
「そんな事より、チビ共の面倒見ておかねぇと。一応留守任されてるし、シスター達が帰って来るのにもまだ時間がかかるだろうしな」
……エルン姉はいつも自由奔放で、自分勝手で。
でも、いざとなると自分の身を犠牲にしてでも俺たちを守ってくれる。
多少のワガママぐらい、どうってことない。
「ほら、エミリーも行くぞ」
「……うん」
俺は後ろで突っ立ったままのエミリーに声をかける。
気持ち返事が暗い気がしたのは気のせいだろうか?
「…………気付きなさいよ、馬鹿」
エミリーが何か言ったような気がしたが、風の音で何を言ったのか聞き取ることは出来なかった。
「ひゃっほぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおうううう!!」
私は今、店が並ぶ通りをレナたん目掛けて爆走中だった。
さして時間は掛けて無い気がしたんだけど、いつもの八百屋さんかな?
「お、みっけた」
レナたんがいつも通っている八百屋さんに丁度レナたんが。
何やら店番の奥様と話をしている様子。
「はい、いつもの。最近実りが良くってね、少し割り増ししておいたわ」
「本当ですか!?ありがとうございます!!みんなも喜ぶと思います」
「なぁに、あそこのシスターさん達が居なけりゃ男どもは皆そこらへんでくたばっちまってるよ。それにレナちゃんはいつもここを贔屓にしてくれてるからね。それぐらいのサービスは当然さ」
ほうほう、わかってるでねぇの奥様。お、レナたんが買い物を終えて帰る所だな。
作戦決まって無いし行き当たりばったりで追いかけよう。
私のこの両目は暗くなりつつあるこの空の下でも一キロ先のレナたんのうなじですら鮮明に見えるのだ!!
ストーカー?さて、何のことやら……
ドンッ!!
ん?ドンッ?
「あっ、す、すいません!!」
「おうおう、どこ見て……ん?お嬢ちゃん可愛いなぁ、えぇ?」
「おい、こいつ教会のシスターだぜ?しかも超かわいいじゃねぇか」
「へぇ……あぁ!!痛ぇ!!これは骨が折れちまったかも知れねぇ!!どうしてくれんだ?シスターさんよぉ?」
「そ、それは……」
むむ、何やら不潔な輩がレナたんに絡んできたな……
まぁレナたんはウルトラスーパーアルティメットなハイパー超絶美少女ですから?不埒な事を考える奴らなんかホイホイ寄ってくる訳でありますけども?
しかしこれは見過ごせないですな……
「どうしてくれんだよ、完全にこいつの骨逝っちまってるじゃねぇか」
「あぁ、いってぇ……痛ぇなぁ」
「ご、ごめんなさい。今治療しますから……」
「あぁ?俺たちがして欲しいのはそう言う事じゃないんだよなぁ……」
「そうそう、もうちょっと誠実な対応をして貰わねぇとなぁ。グへへ」
はぁー。なってない。全くナンセンスだよ君たちは!!
お困りのレディが居たら紳士に対応するのがダンディな男のやる事でしょうが!?
そんなんじゃまるでラノベなんかでよく見る『その後主人公にボコボコにされる序盤のクソ雑魚小悪党』ポジションでしょうが!!
ちなみにここでの主人公は私だぜ。
今行くよ、マイハニー!!
「ちょーーーーーーっと待ったぁああああああ!!!!」
ズッサァァァアアアアアアア!!
「な、何だ!?」
「ん?嬢ちゃんもしかしてこの子のお友達か?」
「エ、エルン!?」
おうおうおう、レナたん少し涙目になってるじゃないですか、えぇ?
この落とし前どうつけるつもりだテメーら、この野郎。
「我が名はエルン、見目麗しき聖女殿を連れ戻しに参った!!」
「あ?何言ってんだ?」
「どうだっていいさ、あの子も超かわいいじゃねぇか」
おんやぁ?レナたんのみならず私にまで牙を向ける気かねぇ?
よろしい、ならば戦争だ。
「なぁ嬢ちゃん、俺らこの子に迷惑かけられちまってよぉ、お前も一緒に謝ってくれねぇかな」
「そうそう、ちゃあんと謝ってくれんなら俺らも気持ちいい事してあげるからよぉ、グへへ」
「あー、もう無理。そういうの本当にマジ勘弁だわー」
「「あぁ?」」
流石の私でも引くぞこいつら。
私はレナたんを自分の背にササッと移動させてからモブ共を煽る。
「か弱い乙女二人に手を出そうなんて、男としてのプライドは無いのかね?君らそれでもタマ付いてるのかね?」
「な、女だからって調子に乗りやがって!!」
いやー、まず一人釣れたね。余裕余裕。
この程度の煽りで引っかかってしまう哀れなお魚君にはお熱いベーゼを交わさせてあげよう。
あ、勿論地面とね?
「チェストォ!!」
「んっぐぉ!!」
突風で舞い上がり頭部を身体強化で強化した拳でグ―パンする。
するとものの見事にモブその一は地面と熱い口付けを交わした。
「ヒュ~、君には母なる大地がお似合いさ!!ママと好きなだけチュッチュしてて良いんだぜ?ベイビーちゃん」
「エ、エルン……」
おっと、テンションが明後日の方向に行ってしまった。レナたんに幻滅されそう。
「お前ぇぇぇえええ!!」
残ったモブ2がナイフを取り出す。
「死ねぇ!!」
「エルン!!危ない!!」
おっとお嬢さん、心配無用だぜ。
「そぉい!!」
「ウグゥ!?」
身体強化を付与した鋭いトウキックでナイフを持っていた腕を蹴る。
するとあっさりとモブはナイフを落としてしまう。
「クソォ……!!」
「諦めな。お前は私の聖女を傷付けた……。それがお前の罪だぜ!!沈めぇ!!我が愛しき聖女に仇なす獣への正義の鉄拳!!」
「……ガフッ」
我が正義の一撃を受けて、汚物は消毒された。
「愛、故に正義!!最後に愛は勝ぁぁぁぁぁぁあああああつ!!」
何だか今テンションが急上昇し過ぎてヤバい、自分でも止められないし何!?我が愛しき聖女に仇なす獣への正義の鉄拳って!?
あぁ、こんなんじゃレナたんに嫌われて……
「良かったぁエルン!!怪我は無い!?」
「お、おう。大丈夫だから泣かないでくれ、我が愛しき人よ……」
……無かったね。
これでレナたんに嫌われてたら私ハラキリしてましたわぁ。
それだけで一発KOですわぁ。
「もう、無茶ばっかりして……」
「なぁに。レナたんの為なら火の中水の中、どこへだって駆け付けちゃうぜ?」
「フフ……ありがとう」
あぁ、浄化される……。っとそんな場合じゃないな。
「あ、荷物は私が持つから、早く帰ろ?」
「うん。あ、でも私この人たちを一応治療しておくね?」
「レナたんは優しいなぁ。じゃあ先に行くね。また悪い狼さんに襲われないようにね?」
「えぇ。でも襲われてもエルンが助けてくれるんでしょ?」
「モッチのロンだよ!!」
レナたんの身は私が守るのだ!!
私は延びたモブに治療を施すレナたんを神格化しながら教会へと帰った。
夜。
私とレナたんは隣同士、教会の皆と同じ場所で寝ている。
「ねぇ、レナたん。起きてる?」
ふと目が覚めて隣のレナたんに声をかける。
「起きてるよ、エルン」
「そっか」
特にどうと言う訳でも無く名前を呼んだのだが、どうやら起きていたみたいだった。
「レナたんは、もしこの教会から居なくなっても私の友達でいてくれる?」
「え?」
不意にそんな言葉が漏れる。
前世では友達も碌に出来ず、無意味に生きていた人生。
転生しても捨て子と言う境遇でありながら幸せに暮らせていたのは、シスター達や他の孤児の子達。
そして何よりもレナの存在があったからこそだった。
いつかレナが居なくなってしまったら、私は一人で逞しく生きていけるのだろうか?
その事を考えるだけでどうしようもない寂寥感が胸を覆い尽くす。
「……泣かないで、エルン」
「……え?」
どうやら知らず知らず涙を流していたらしい。
レナはこちらを見つめそっと私の涙を拭う。
とても柔らかく、温かい手だった。
「私はどこへも行ったりしない。ずっとエルンと友達よ?エルンと一緒に生きて、一緒に年を取って、一緒のお墓に入るの」
「うぅ……レナ……」
「フフッ、いつものエルンたんはどこへ行ったのかしら?」
私の為に大げさな言葉で慰めてくれるレナはやはり聖女だ。
これは闇堕ちの余地はありませぬなぁ!!
「グスッ……ありがと……レナたん」
「なんてこと無いわ。ほら、寝ましょ?」
「うん……」
レナたんの柔らかい手を握って、私は深い眠りに落ちる。
私は今、幸せだ。
この温かな幸せが、いつまでも続きますように……
「……寝たかしら?」
私は愛しい親友の顔を見る。
そこには安心したのか、とても安らかな顔で眠っているエルンが居た。
(あぁ、エルン!!貴方はなんて可愛いの!!)
私はその顔を見て興奮が抑えきれなかった。
いつも私を特別な呼び方で読んでくれるエルン。
本当は私も特別な呼び方をしたいのだ。だが、ついいつもエルンが望む私を演じてしまう。
だからこそ、さっきエルンをたん付けして呼べたことがどうしても頭に思い浮かんで興奮してしまう。
(エルン、私は一生貴方から離れないわ。貴方をいやらしい目で見たさっきの虫ケラ共は……もう私が始末しちゃったから♡)
さっきエルンに言った言葉も、なんの偽りも無い心からの言葉である。
この先もずっとエルンと一緒。それだけが私の望み。
誰にどう思われようとかまわない。貴方にさえ嫌われなければそれでいい。
貴方の望む私を演じ続けるわ。
(全てはあの日から……。あの日から貴方は私の英雄だから)
私はエルンの綺麗な髪を撫でる。サラサラしていてとても真っすぐ。
まるでエルンみたい……、あっ!!
(髪の毛……エルンの髪の毛!!)
私は今抜けたばかりのエルンの髪の毛を見つけ、歓喜に打ち震えた。
そしてそれを一刻も早く回収し、自らの空間魔法の中に大事に大事に取っておくのだった。
(あぁ、いつか本当の私で貴方と向き合いたいわ。その時は……)
いつか来るかも知れない未来に思いを馳せて、私は高鳴る胸を押さえつけながら、眠りにつくのだった。
(貴方なら、こんな私でも愛してくれるわよね、エルン?)
歪に曲がり、捻じれてしまったその愛は、聖女を病みに堕としている事を、安らかに眠る親友は知る由も無かった。
前々からあった構想を深夜テンションで書き上げ。
同じような物が既出だったらごめんなさい。