表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/53

7)始めてのコンクール

今日の投稿、一つ目です。

また本日中に、二つ目の投稿を(午後8時に)する予定です。

よろしければお読みください。

 6年の月日が流れました。


「お、お父様・・」


「どうした? カリン」

 お父様がにっこり頬笑んで私の肩に手を置きました。


「わ・・私、緊張して、歩けません・・」


 今日は、ピアノのコンクールです。

 ユイナ妃音楽コンクールの本選なのです。

 発表会は、毎年、出させてもらっているけれど、コンクールとなると、雰囲気が違います。


 私の番はもうあと2人目まで迫っています。

 今にも倒れそうに緊張している私は、家族に側に居てもらってました。膝の震えが止まらないのです。

「あぁ。やっぱり、私、コンクールなんて・・ムリ・・」

 涙目でぶつぶつ言っていると、傍らで私の肩を抱いていたお父様が、

「あんなに練習したのだから、ムリじゃないよ。

 上手に弾けていただろう?

 自信を持って、カリン」

 優しいお父様の言葉に、少し、震えが落ち着きました。

 ええ、たしかに、私は、昼夜を問わず練習しました。

 夜、ベッドの中でも、曲を思い浮かべ、指を動かし、自分がうまく弾いている姿をイメージトレーニングしたりもしたのです。

「そうだよ、カリン。頑張ったのだから、その成果を見せるだけでいいんだ。

 楽しんでおいで」

 一番上のお兄様、ハルト兄様が言いました。

 ピアノを弾くのは、いつも楽しいです。

 思うように弾けずに悩むことすら、楽しいのです。

 でも、コンクールとなると、また違うような気がするのですが・・。それでも、鍵盤を叩ける、というのは、楽しいことです。

「俺も、強敵相手の剣術の試合前には緊張したりするけど、『あんなに訓練したんだ。当たって砕けろ!』という根性で試合に臨んでる。

 カリンも、そんな心意気で臨め!」

 2番目のお兄様、カイトお兄様のありがたいお言葉。

 カイトお兄様に元気をもらいました。

「わ、判りました、お父様、兄様たち。成果を見せるように、当たって砕けろという気持ちで弾いてきます」


 それにしても、こんなに緊張してしまうなんて・・情けない。

 だって、観客の数が、発表会のときの5倍くらいも居るんだもの。

 コンクールの予選の会場は、もっとこじんまりしていたので、あまり緊張せずにすんだのに。


 私は、この6年間、熱心にピアノの練習に励んできました。

 才能があるかないかは、判らないけれど。たぶん、さほどない、と思います。

 音楽的素養は、人並みでしょう。

 今は亡きお母様は、竪琴が好きで、歌も上手で、きれいな声で歌ったそうですが。

 ピアノを習い始めたとき、私の腕前は、ごく普通、としか言いようがないものでした。

 でも、私は、なにしろ、熱心でした。

 憧れのピアノを子供のころから習えるのですから。

 毎日、毎日、何時間、弾いていても飽きないくらい夢中になったのです。

 そんな風に弾きまくっていれば、上手にもなります。

 おかげで、師匠に、「コンクールに出ましょう」と言われてしまった。

 褒められれば、浮かれもします。

 すっかり舞い上がって、「出ます」と答えたのが間違いでした。

 ――う~~緊張する。


 とうとう、私の出番になりました。

 震える足に思い切り力を込めて舞台を歩き、ピアノの前に座りました。

 深呼吸をひとつ。

 課題曲は、きれいなワルツ。

 なめらかで、切ない旋律。

 愛しいひとに愛をささやくようなメロディを指で表現するのです。

 恋愛なんて。前世の私は、とうとう、片思いしかできなかったけれど。

 あの片思いの彼。もう、顔も思い出せない遠いひとですが、ピアノの上手だった青年を想いながら弾きました。

 2曲目の自由曲は、昔から伝わる童歌を師匠がアレンジしたもの。

 なんとか、間違わずに弾けました。


 ――あーよかった・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ