6)前世は平凡な人生
本日、二度目の投稿です。一度目は午後7時に投稿済みです。
半年くらいも過ぎた頃。
「カリンは、ずいぶん、痩せちゃったな」
とお父様が言いました。
ええ、私は、痩せました。
前は、ひどく太っていました。それも、健康的なピチピチぽっちゃりではなく、不健康に、しまりなく太っていました。
まん丸だった私は、フリフリハデハデな服を着て、フリルのボールみたいな有様だったのですよ。
でも、今では違います。
痩せてから買い換えてもらった服は、フリフリハデハデじゃありません。
清楚です。
まともです。
そんな私を優しく見つめる、お父様は美男です。黒髪に焦げ茶の眼の領主のお父様が、私は大好きです。
お母様は、私が3歳のころ、はやり病で亡くなりました。美しく可憐な人だったとか。
私は、お母様に、瓜二つだそうです。
私、もしかしたら、将来有望? いえいえ、姿だけ親譲りで得していても、残念美人になりかねませんので、心しておきましょう。
私には、2人のお兄様が居ます。
2人のお兄様たちのうち、一番上のハルトお兄様は魔導師の研究所に入っていて、邸には居ません。二番目のカイトお兄様は、剣術の才能がある、と言われ、騎士団にお勤めの大叔父様の邸に入り浸りです。
嫡男と次男が、我が家から出て行ってしまっているのです。
跡継ぎは、大丈夫でしょうか・・まぁ、大丈夫でしょう、ふたりもお兄様が居るのですから。
とにかく、そんなわけで、我が家は、お父様とふたりきり。寂しい状態です。
おかげさまで、私は、父に溺愛されていました。
お父様が、私が不健康なことに気付かなかったのは、お父様が忙しかったのが主な原因ですが、私の健康状態の劣化が、少しずつ、ゆるい下り坂を転げるように起こっていたからでしょう。
それに、お父様は、私が太っていても、癇癪を起こしていても、なんであっても、盲目的に愛していたから、というのもあります。
私は鑑定で自分自身を見るようになってから、前世の記憶が、少しずつ、よみがえってきました。
それでも、浮かんでくる映像は、ぼんやりしていて、はっきりはしませんでした。
遠い、前世のことですから、ぼんやりしているのは仕方が無いのでしょう。
前世の私は、少し変わった街に住んでいました。
四角い大きな建物がたくさん並んでいる街。
変な街だなぁ、と思います。
前世の私にも、家族は居ました・・お母様が、ひとりだけ。
母子家庭、というものです。
お母様の記憶は、おぼろげです。
ひとの顔とか、声が思い出し難いので。
私は、30歳くらいのときに、内蔵に腫瘍のできる病気で亡くなりました。
なんだか、前世の私、かわいそうな死に方だったな、と思います。30歳じゃ、まだ若いですよね。
でも、それなりに、幸せな生活を送って死んだような気がするのです。
ただし、恋愛はしていませんでした。
「営業」という商人のお仕事が、あまりにも忙しくて、お仕事ばっかりの生活をして、病気になって死んだ、ようです。
営業というのは、品物を売るために、ひととたくさんお話をする仕事です。前世の私は、すごかったーと思ってしまう。
今の私は、知らないひとと話をするのは苦手です。
家の中でワガママいっぱいなくせに、お客様が来ると、お父様の後ろに隠れてしまうような子だったんです、ハイ、内弁慶というやつでした。今は、ワガママは直っていますけどね。
でも、前世の私も、「たくさんのひとと会う」仕事は、大変だったはずです。なぜなら、お仕事でひとと会うときは、一生懸命、これから会うひとのことを調べ、うまく話せるように、そのひとを知ろうとしていたから。私、頑張ってたんです。
今、私が鑑定スキルを持っているのは、前世で「知ろうとしていた」努力の結果なのかもしれません。
それから、私は、「ミステリー」という物語が好きで、お仕事を終えた夜に、よく読んでいました。
そして、前世の私は、「ピアノ」を習おうとしていました。
学生のころ、片思いの素敵なクラスメイトがいて、その彼が、ピアノが上手だったのです。
前世の私は、憧れのピアノを習おう、と思い、小さなオモチャのようなピアノ? を買い、独学で練習してみたのだけれど、仕事をはじめてからは、忙しくて、思うように出来なかった・・。
――ああ、なんか、平凡だけど、一生懸命な人生だったのね・・。
ちょっと泣いてしまった。
大叔母様から聞いた前世記憶もちの騎士の真似をして、私も、楽器を習うことにしました。
鍵盤楽器を習いたい、とお父様に相談したら、お父様は、すぐに買ってくれました。
どえらく大きい楽器で、びっくりしてしまった。
楽士の師匠も雇ってくれました・・お父様、すごい。
お父様を喜ばせるために、私は、勉強も、がんばりました。
前世の記憶の中では、ひとりしか居ないお母様をおいて、私は、早くに病気で死んでしまいました。
親不孝者です。
だから、今生では、親孝行をしよう、と決めました。
お父様は、私が頑張ってマナーを学び、きれいにお辞儀をして見せると、「亡き妻を見ているようだ」と、涙を流して喜んでくれました。
こんなことでそこまで喜んでくれるなんて。いくらなんでも、お父様は、家族ラブ過ぎます。
また明日、続きを投稿します(^^)/




