47)聖女とジュンヤ現る
本日の2話目の投稿です。
1話目は、午後6時に投稿済みです。
私たち4人は、ぎょっとしてドアを見つめます。
「だれだろう・・」
ネストル様がつぶやきます。
カチャカチャとドアノブを回す音がします。
私は、とっさにドアを鑑定し、思わず息を飲み、後ずさりしました。
「どうした? カリン」
ソラが私を振り向きます。
「今、ドアを鑑定しましたら・・ノブに触れているのは、ジュンヤ・ユキノ伯爵子息と・・」
「・・聖女の腰巾着のアレか・・」
と皇子。
「カリン・・、キリアン皇子とネストル殿に、幻惑の魔導具をお渡ししよう。
おふたりには、逃げてもらわないと・・」
「はい」
私とソラは、皇子たちに魔導具を渡しました。
「大丈夫かい? いざとなったら、影を使えば良いのだよ」
皇子が気遣わしげな顔をします。
「影?」
と私が問いますと、
「殿下には、絶えず、影がついています、つまり、表に出ない護衛です。
余所で待機している影を呼ぶ魔導具も装備していますし・・今は、近い者は廊下に居ます。
でも、影を使うと、報告が陛下に行きます。
留学中に問題を起こしたくないので、できれば・・」
ネストル様が淡々と説明してくださいました。
ネストル様は、言葉を濁しましたが、聖女やジュンヤさんなどのせいで、皇子の留学に支障が出るのは困ります。
「私たちは、大丈夫です」
とソラ。
「心配要りませんわ。
私たちも、すぐに叔母様たちのところに行きますから」
私が申しますと、
「そうかい?」
じゃっかん、疑わしそうに、皇子が問い返しました。
「殿下、彼らに手助けしてもらいましょう」
とネストル様。
「キリアン皇子、幻惑をまとってくださいませ」
私が促しますと、皇子とネストル様は、魔導具を発動させました。
一瞬、ほわりと陽炎のようなものがお二人にまといつき、皇子たちは、可愛らしい青年に姿を変えました。
ハルトお兄様の魔導具は、どうやら、男性は、みな、可愛らしくなるようです。
なぜ、私は、子リスなんでしょうね・・。
子リス娘なんて、変に決まってます。
「では、ドアを開けます」
ソラは、覚悟を決め、鍵をはずし、ドアノブを回しました。
開きかけたドアの隙間から、
「ドアが開いたぞ」と、ジュンヤさんのささやくような声が聞こえます。
「あら」
とレミさんの声。
「ジュンヤたち、なにか用か」
ソラが、ドアを半開きにして、ふたりに冷ややかに話しかけました。
「ハハ、とうとう捕まえた」
ジュンヤさんがドアに手をかけます。
「もうー、ソラったら、酷いわ。
私から逃げ回って!」
とレミさん。
「忙しかったものでね」
ソラが穏やかに答えます。
「ここでなにをしてらっしゃるのぉ?」
レミさんが、甘ったるくソラに話しかけながらすり寄りました。
「友人たちと話しをしていた」
「え・・?」
ジュンヤさんとレミさんは、部屋の入り口から中をのぞき込み、始めて、室内の私やキリアン皇子たちに気付きました。
ジュンヤさんの顔色が変わります。
「おまえ、また、ソラに付きまとっていたのか」
ジュンヤさんが、私を睨んでます。
「こんにちは」
私は、軽く淑女の礼をして応じます。
「ふんっ。
なんのつもりだ!」
「私は、ソラの友人ですので・・」
「こんなところまで追いかけて来て、恥を知れ」
「コンクールに出場しただけですわ」
「ソラがギルモアでコンクールに出場するタイミングでか?
おまえは、本当に、あばずれだな」
「ジュンヤ、殴られたくなかったら、二度とカリンにそういう口を聞くな」
「ソラ、おまえは騙されてるんだ。
そいつは・・」
「ジュンヤ、私に話しかけるな。
もう、おまえの顔を見たくない。
声も聞きたくない」
「なんてことを言うんだ。
私は、おまえの父親、トキワ公爵に頼まれて、迎えに来たんだ」
「帰る気はない」
「私の言うことを聞いてくれ。
そうしないと、公爵は、ひとを雇って、手荒なまねをすることになる」
ジュンヤさんがソラにすがるように言います。
ソラは、「ハハ」と鼻で笑い、ジュンヤさんが差し伸べた手を払いのけました。
「すっかり、父の手先に成り下がったんだな。
私は、世界的に認められているコンクールで入賞出来たんだ。
リサイタルの計画もある。
アノスには帰らない」
「ソラ。
今はだめだ。
聖女に付き従わなければならないんだ。
アノス王国の貴族として・・」
「私は、アノス王国から、そんな依頼は受けていない」
「聖女は、国の宝だ」
「それで?
国からそういう命令が出ているのか?」
「シオン殿下が、手配してくださるだろう」
「聞いてないな。
実際に命令が出たというなら、証拠を出せ」
「ソラ、後悔することになるぞ」
「後悔などするものか」
「ソラ様、ジュンヤと言い争わないで。
ジュンヤは、ソラ様のことを、誰よりも大事に思ってらっしゃるのよ?
ジュンヤの言う通りにして、ね。
馬車の用意をしてありますわ。
一緒に帰りましょう」
「帰らない。
聞いていなかったのかな?
リサイタルの予定が・・」
「まぁ、ソラ様ったら。
私よりもリサイタルが大事ですの?」
「もちろん」
「え・・? なにを言ってらっしゃるの?
あ、もしかして、私のためのリサイタルなの?
私、リサイタルの最後に、一曲、歌ってもよろしいわよ」
レミさんが、にっこりと頬笑みます。
「・・すまないが、そういう余興は、要らない・・」
ソラが脱力しています。
横で忍び笑いが聞こえたので、そっと様子を見ますと、キリアン様とネストル様が、必死に笑いをこらえていました。
「とりあえず、友人たちは急ぎの用事があるので、私たちは失礼する」
とソラ。
「ああ、そうか。
では、ご友人たちは、お帰りになればよろしい」
ジュンヤさんたちは、入り口から脇にどき、キリアン皇子とネストル様を通して差し上げました。
ソラは皇子たちを護るようにドアをすり抜け、私も続こうとしましたが、ソラはレミさんに、私はジュンヤさんに捕まりました。
私たちは、キリアン殿下のため、ジュンヤさんとレミさんを足止めしなければなりませんので、大人しく従いました。
お読みいただきありがとうございました。
また明日午後6時に投稿いたします。




