43)聖女から逃れて
今日の投稿も1話だけになりますm(_ _)m
観客席の方へ戻ろうと思い、少し迷いました。
幻惑の魔導具を使おうかしら。
それとも、もう必要ない?
迷いながら歩いていると、足音が聞こえます。
見ると、ソラとキリアン殿下、それにネストル様でした。
「カリンっ」
焦ったような声です。
「ソラ、それに、キリアン様たち。
どうされました?」
「追われているんだ」
「え・・?」
私は、とっさに、すぐそばにあるレッスン室のドアを開けました。
会場の説明を聞いたときに、ここがレッスン室であることを聞いていたのです。
私の出番は終わりの方だったので、レッスン室は空いていました。
ドアを閉め、内側から鍵をかけますと、3人は疲れたように椅子に座り込みました。
「追われているというのは?」
「ああ、聖女たちが・・」
とソラ。
「そうでしたか。
それは災難・・あ、いえ・・」
聖女のことを災難と言ってしまいました。
不敬です。
「いや、ホントに災難だよ、あれは」
とキリアン様。
「すみません」とソラ。
「ごめんなさい」と私。
思わずふたりで謝罪してしまいました。
なにしろ、アノス王国の聖女が、他国の皇子に迷惑をかけているのですから。
「ハハ・・」
ネストル様が、乾いた笑いをこぼします。
「でも、助かったよ。
カリンの歌は素晴らしかった。
私の周りの観客は、みな、感涙してたよ。
それでカリンを迎えに行こうと思ったら、殿下たちと会ってね。
幻惑の魔法を解いて挨拶したら、今、聖女から逃げているところだと訴えられて・・」
とソラ。
「その幻惑の魔導具は便利なものだな」
とキリアン様。
「私の兄が、研究所で作ったものです。
帝国にもあるのでは?」
「まぁ、似たようなのはあるな。
大げさに姿が変わるので、少々、使い難いのだが。
ぜひ、その品を購入させてもらおう」
「兄に伝えておきますわ」
私と殿下が話していると、
「殿下、それより、せっかくの機会ですから、カリン嬢に尋ねてみては?」
とネストル様。
「ああ・・そうだな」
「なんでしょう?」
私は首をかしげました。
「サヤ嬢に聞いたんだけど、君は、植物を元気にさせる力を持っているそうだね」
キリアン様は、にこやかにそう言いました。
「鉢植えを少しばかり、元気にすることは出来ますわ」
私は、肩をすくめます。
そんな大げさなものではないのです。
「君は、本当は、聖女なのかい」
「いいえ、まさか。
治癒魔法の応用ですわ。
治癒魔法の使い手なら、誰でも出来ます」
「植物を活性化させるのは、土魔法ではなかったかな?
それとも、カリン嬢の治癒魔法は、そうとう、レベルが高いのか」
「いえ、中級程度です」
「それで、植物の治癒を?
本当かい?」
「あの、実は、もうひとつ、スキルを持っていた方が良いのですけど・・」
「それは、どんなスキル?」
とキリアン殿下。
キリアン様の目が怖いです。
やたら真剣です。
私は、助けを求めるようにソラの方を見ました。
ソラは、私の能力を、よく知っています。
ソラは、鑑定スキルについて図書館で調べたり、研究所勤めのハルトお兄様とも相談してくれました。
ですから、私固有の能力と、一般的な鑑定能力の違いなども、ソラの方が知っています。
本来は、私が自分でするべきなのに。
私は、そんなことも思いつかなかったのです。
私は・・本当に、頭がよろしくないのですね。
かなり落ち込んでしまったものです。
いえ、今は、暗い過去を思い出している場合ではありません。
目の前の脅威をなんとかしなければ。
お読みいただきありがとうございました。
また明日、午後6時に投稿いたします。




