42)エレイン王妃音楽コンクール その2
今日の投稿は、1話だけになりますm(_ _)m
会場には、ジュンヤさんとレミさんの姿が、相変わらずありました。
でも、私とソラは、幻惑の魔導具を使って、叔母様たちから少し離れていたので、見つからずに済みました。
ギリギリまで、ソラが手を握ってくれましたので、落ち着いています。
さぁ、私の出番です。
課題曲のアリアは、技巧的な難易度が高く、発声の美しさが十分に試される曲です。
聖者の心を訴える情感あふるる高音の旋律が豊かに続きます。
聖者の尊さを、歌は称えます。
『閉じられた聖者の瞳に。
もはや、爛れた戦地は映らず。
広がる幻の村々よ。
神の御手により祝福はもたらされた。
私の髪は、羊食む牧草となり。
私の爪は、肥えた駿馬となり。
私の血肉は、豊かな大地となった。
私の心は、永久に繋がる善なる人々とともにある』
この旋律の麗しさ、まるで神が作った曲のようです。
これほどにも美しい歌を歌えることは声楽家として喜びです。
私には、前世の記憶というものが、ありました。
それは、私の心に宿った、感情の記憶でした。
私は、もともと、理知は乏しく、力もなく、器用でもない。
その代わり、私には、情をとらえる能力が与えられたようです。
もしも私が詩人だったら、言葉で心を表現しようとしたでしょう。
もしも私に、もっとピアノの才能があったら、もっと想うままに動く指があったら。
優れたピアニストになれたかもしれない。
その代わり、私に与えられたのは、母譲りの良い声でした。
与えられた能力をつかい、心に感じるものを表現するのは、幸福なことです。
鳥たちが、嬉々として歌うように。
私にとっては、歌を歌うことが喜びです。
私は、古のギルモア王国の、澄んだ聖者の心を歌いました。
聖なる最後の詩を歌うとき、天に届くように声が駈け上ります。
会場中の空気を震わせ、やがて声の余韻が宙に溶け込み、消えてゆきます。
歌い終えました。
礼をして、拍手をいただきながら舞台から退きます。
舞台の袖で立ち止まり、息を整えました。
気持ちを静めます。
すっかり、気分は古のギルモア王国でしたが、ようやく、今の世界に戻って来られました。
お読みいただきありがとうございました。
また明日、午後6時に投稿いたします。




