41)エレイン王妃音楽コンクール その1
本日の2話目の投稿です。
1話目は、午後6時に投稿済みです。
ソラのお祝いの夕食会の日から、私と大叔母様は、ナミト家に滞在していました。
エレイン王妃音楽コンクール出場のため、ナミト家のホールで練習させてもらっています。
ソラが伴奏をして、練習に付き合ってくれました。
休憩をとり、喉を潤していますと、
「明日は、コンクールだね」
と、ソラがつぶやきました。
「ソラに練習を手伝ってもらったんですもの。頑張りますね」
「終わったら、帰ってしまうんだね」
ソファの隣に座ったソラが私を抱き寄せました。
「父に、婚約のお許しをもらってきます」
私が言いますと、ソラが、気遣わしげな顔をします。
実のところ、トキワ公爵が反対しているのですから、私たちの結婚は難しいでしょう。
アノス王国の法律では、結婚は、16歳の成人を過ぎればできますが、両親の承諾が要ります。
18歳を過ぎますと、身元のしっかりとした25歳以上の立ち会い人が居れば結婚できることになっています。
この法律は、もともとは、親が居るのか居ないのか、調べて許可の可否を決めるのが不可能な場合が多いため、作られた法律だそうです。
まぁ、結果として、この法のおかげで、助かっている恋人たちが数多いるわけです。
私は、大人と見なせる年齢であれば、親の言いなりではない結婚が出来るよう、法律で定められているのだと思っていました。
駆け落ちしたふたりが、夫婦になれず宙に浮いた状態になることを、法律が守っている、のだと・・。実際は、法が出来たのは、殺伐とした理由でした。
何はともあれ、たしかに、言うなれば力業で私たちは結婚できるのかもしれませんが、トキワ公爵のことが気がかりなのです。
ハノウ家は格下ですので、ただでは済まないでしょう。
「私のお父様は許してくださると思います。
でも、トキワ公爵は、お怒りでしょう」
「だろうね・・。
母が、説得してくれる予定ではあるが・・」
ソラは答えながらため息を吐きました。
「私が学園を卒業するまで、まだ4ヶ月ありますので、それまでに、公爵がお許しくださるかもしれませんわ」
私は言いながらも、それはあり得ないでしょうね、と胸のうちでつぶやきました。
明くる日。
エレイン王妃音楽コンクールの会場に向かいました。
相変わらず、緊張しています。
でも、私も成長したのですね。始めてのピアノコンクールのときに比べれば、震えが大分少ないです。ちゃんと歩けますから。
アヤノ大叔母様が、付きっきりで、私の側に居てくださいます。
スズナ叔母様とソラも一緒です。
ジュンヤさんたちの動向は気になりますが、従者の方も付いてくれていますし、まぁ、大丈夫でしょう。
課題曲は厳かなアリア。ギルモア王国で古くから伝わる聖者の伝説をもとに作られた曲です。
ギルモア王国の建国神話は、荘厳な物語です。
『ギルモア王国の建国のころ。
農業が盛んだったギルモアは、山岳地帯やキースレア帝国の方角よりやってくる遊牧民の略奪に苦しめられていた。
略奪者たちは、収穫したばかりの穀物や家畜を奪い、男たちを殺し、女たちを連れ去る。
ギルモアの農民たちは、クワやツルハシで武装し、襲いかかる遊牧民たちと戦った。
そのころ、聖魔法を得意とするギルモアの聖者が、戦いに傷ついた農民たちを癒やし、国中を巡っていた。
聖者は、戦場を巡りながら、いつ果てるとも判らない惨状に憂い、神に祈った。
すると、戦いの神が夢に現れ、100年保つ聖結界の魔法を教えよう、と述べられた。
しかし強力な聖結界の魔法を使うには、聖者の命をかけて魔力を注ぐ必要があった。
聖者は迷いなく、結界を張ることを選んだ。
聖者の結界のおかげで、ギルモアには、100年間、平和が訪れた。
100年間の間に、農地は広がり、作物の収穫は豊かになり、家畜は増え、農民たちは家庭を持ち、たくさんの子をなした。
100年の間に、国は豊かに、強大になった。
おかげで、遊牧民の侵略を打ち負かす力を得た。
略奪者におびえるギルモアはなくなり、国を護る力を持つギルモア王国が誕生した。
それが、ギルモア王国、建国の物語』
美しい神話です。
本物の聖者は、無垢で、尊い方なんですね・・。あ、私ったら、まるで偽物の聖者も居る、みたいなことを考えてしまった。
レミさんは、本物の聖女なんでしょうけど、ちょっと・・いや、かなり残念な方なだけですわ。
お読みいただきありがとうございました。
また明日、午後6時に投稿いたします。




