40)小さな入賞祝賀会
本日の1話目の投稿です。
今日も2話投稿する予定です。
明くる日の夕刻。
ソラの入賞祝賀会がナミト家で、ごくこぢんまりと行われました。
ジュンヤさんとレミさんは、「祝賀会が行われるのなら、参加する」とナミト家に押しかけていたようです。
ソラをアノス王国に連れ帰るようトキワ公爵に頼まれている二人を、スズナ叔母様は、やんわりと追い出しました。
「身内の者だけで、ごく内輪でお夕食を食べるだけですわ。
ご遠慮くださいな」
と、スズナ叔母様が説明すると、レミさんは、
「私は聖女なのよっ、失礼なっ」
と、叫んだそうです。
スズナ叔母様は、目を丸くして、
「あらまぁ、聖女様のような偉人にお出し出来るような御馳走は用意できておりませんわ」
と仰ったとか。
スズナ叔母様、強いです。
スズナ叔母様は、「トキワ公爵の手先」のふたりには容赦ないのです。
さすがのジュンヤさんとレミさんも、喚ばれても居ないのに貴族家の夕食会に乗り込むことは出来ず、すごすごと帰られました。
スズナ叔母様が、ソラの祝賀会を内輪の夕食会にしたのは、トキワ公爵の手前、仕方なくだったそうです。
大きな夜会を開催したら、ジュンヤさんたちを拒否出来なくなるからです。
夕食会の後、ソラが、庭園の散歩に誘ってくれました。
ナミト家の庭には魔導具の灯りが施されていました。
手入れの行き届いた瀟洒な庭が、おぼろな月明かりと外灯に照らされ幻想的です。
私が、機嫌良く、曲を口ずさんでいると、
「キリアン殿下が弾いた曲だね」
と、ソラが言いました。
声が不機嫌です。
・・失敗しました・・。
ギルモア国際音楽コンクールでは、今日、昨日のピアノ部門に引き続き、竪琴部門の審査が行われました。
キリアン皇子とは同じ学園でしたので、皇子が出場されることは知っていました。
ぜひ、演奏を聴きたいと思い、ソラや大叔母様、叔母様も一緒に、会場に足を運びました。
本選だけあって、どの出場者の演奏も素晴らしいものでした。
とくに、キリアン皇子の演奏は、やはり世界随一でした。
優れた技術力と、あの情感のこもった音色。
聴く人を惹き付けて離さない、独特の雰囲気。
キリアン皇子は、見事、優勝だったのです。
なぜかレミさんが現れ、皇子に付きまとおうとしたのですが、従者の方たちに容赦なく排除されていました。
スズナ叔母様が、「国際問題にならなきゃいいんだけど・・」と呆れてましたっけ・・。
ちなみに、私とソラは、ジュンヤさんたちを遠く見かけてから、幻惑の魔法で隠れてました。
ソラと庭を歩きながら、私が口ずさんでいたのは、コンクールでキリアン皇子が自由曲に選んだ協奏曲でした。
「耳に残るメロディでしたので・・」
私は言い訳をつぶやきました。
「学園では、キリアン皇子とは、よく話すの?」
「そうでもありません」
「話すんだね・・」
ソラの声が低くなります。
せっかく、ロマンチックだったのに・・。私のバカ。
「あの・・ソラ?
もしも、誤解をしているのなら、違いますわよ。
キリアン皇子も、私も、お互いに、友人以上の気持ちは、まったく持ってないですから。
私の『観察眼』、知ってるでしょ、ソラ。
キリアン皇子が私に持っている感情は、少々の好意と、好奇心と、同情ですわ」
「そうかい?」
「ええ。
そうですとも」
私は、自信満々に答えました。
「好奇心というのは?」
「それが、よく判らないんです。
『鑑定』してみれば、どんな事柄に対する好奇心か判ると思うんですけど。
まさか、一国の皇子を鑑定するわけにもいきませんから。
ただ、キリアン様は、聖女がらみで、なにやら調べているみたいですわ。
そのとき、ついでに、私の情報をなにか知ったのかしら・・」
「どんな情報・・?」
「レミさんが、ユヅキ芸術学園にまで、キリアン皇子に会いに来られてるのは、知ってるでしょ?」
「ああ、ネストルが言ってた」
ソラは苦笑いしました。
お忍びで留学されている一国の皇子に付きまとうなんて、あり得ない暴挙です。
「聖女がどういうつもりなのか知りたかったのでしょうね。
ネストル様は、サヤ様とも懇意ですから。私とソラのこと、気がつかれたんじゃないかしら」
「気がついてくれてるのなら、良いけどね」
「ええ」
ふとソラが立ち止まり、私の手を取りました。
「カリン、正式な形ではないけれど、君は、私の婚約者だからね」
家の許可は下りていないのですから、正式には出来ないんですよね。
少々、つらいところです。
でも、私にとって大事なのは、ソラの気持ちですから。
「はい」
私は嬉しくて、頬笑んで答えました。
幸せです・・。
また今日、午後8時に続きを投稿いたします。




