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32)誕生日会その1

本日、1話目の投稿です。

今日は、2話投稿します。よろしくお願いいたします。

 半月後。


 今日は、サヤ様のお誕生日会があります。

 公爵家のご令嬢らしく、盛大な夜会が開かれます。

 私も招待していただいたので、久しぶりに着飾ってお出掛けです。

 ただ、残念なのは、カイトお兄様が婚約者のヒナタ様の実家に喚ばれているため、付いてもらえないことです。

 まぁ、しばらくひとりで壁の花となって過ごしてから早めに帰ればいいですよね。


 さて、ハルトお兄様の婚約者、ミア様が選んでくださった夜会服を着ます。ごく淡い薄紅色、綺麗な色の服です。

 ミアお姉様が大人っぽいデザインを選ばれて・・かなり恥ずかしいです。胸元が少し広めに開いていて、腰の下で切り替えになっているのでウエストのくびれが目立ちます。くびれててよかった・・。恋患いのせいか痩せましたからね。

 私も、もう16歳、成人ですので、「このくらいの服、着て良い年よ」と言われてしまいました。

 たしかに、今までの夜会服が子供っぽ過ぎた気もします。

 ソラの心がレミさんに傾いたりしないように、大人っぽい私も見せておきましょう。

 準備を終えた私を最終チェックしたミアお姉様が、

「とっても魅力的よ、めちゃくちゃにしたいくらい」

 と言いました。

 いや、それはマズイ褒め言葉ですわ。

 お仕事から帰られたお父様が、一気に心配そうな顔になりました。

「今日は、でも、壁の花、確定なんですのよ、ミアお姉様」

 私は悲しく応えました。


 サヤ様のお誕生日会は、それは華やかでした。

 たくさんのお客様。しかも、要人ばかりです。

 サヤ様は、宰相の嫡男の婚約者なんですものね。

 レミさんは、噂通り、ソラとべったりくっついています。

 レミさんの白いドレスは、まぁ、官能的なこと。胸元が開いています、もちろん、私よりもずっと広々と。レミさんって、あんまり胸が大きくな・・ケホンケホン。失礼なことを思ってしまいました。

 夜会服のソラが素敵です。

 ふたり、婚約間近という雰囲気ですわね。

 レミさんが、まるで見せつけるように、ソラの腕にしがみついたまま、

「あら、こんばんは」

 と言いました。

 私は、淑女の礼をしてご挨拶をします。

 お行儀良く、あくまで、機械的に。恋人ではなく、知り合いとしての挨拶ですね。

 ソラも、私を見て、いかにも社交辞令というふうに、挨拶をしました。

 ああ、どうして、目が熱くなるのかしら。

 頑張って着飾った私がバカみたいじゃないですか。

 私は、立派なお客様たちに紛れて、サヤ様にご挨拶をし、贈り物を手渡し終えると、そっと、壁の花になりました。

 ソラがピアノを弾いています。

 ジュンヤさんと連弾です。

 とても上手です。

 ピアノのそばには、レミさんも一緒に居ます。


 私は、実は、サヤ様に、一曲、歌ってほしい、と打診されていました。

 でも、聖女のレミさんが、この日、ソラの伴奏で聖歌を歌うと聞いて、お断りしました。

 サヤ様も、「そうね、レミさんと同じ場で歌うのは、やりにくいわよね」と苦笑し、私の気持ちを汲んでくださいました。


 レミさんの聖歌は、いつ歌われるのでしょう?

 まだ会は始まったばかりですので、たぶん、もっと盛り上がってからでしょうね。

 そんな風に、ぼんやり考え事をしていると、見知らぬ令嬢が私に声をかけました。

「あなた、カリン嬢でしょう? サヤが喚んでるわ」

 と。

 サヤ様のお友達のご令嬢のようです。

 サヤ様は、会場の前面中央で、幾人かのご友人と、談笑されていました。

 ピアノを弾き終えたジュンヤさんとソラの姿もあります。

 ちょっと嫌だわ、と私は思いました。

 レミさんとくっついているソラなんて、見たくないです。

 サヤ様は、最近、レミさんとべったりなソラのことをよく思っていません。

 ソラが演技していることを、サヤ様は知らないのです・・演技ですよね? 演技が上手すぎて、私、つらいです。

「カリン。

 ねぇ、紹介するわ。

 ふたりは、キースレア帝国からの留学生なのよ」

 とサヤ様が、朗らかに、ふたりの男性を紹介してくれました。

 私は、ふたりの姿を見て、一瞬、固まってしまいました。

 ひとりは、キリアン様です。

 不格好な眼鏡をかけ、亜麻色の髪を焦げ茶に染め、変装しています。

 そして、もうひとりは、以前に見たことがあるキリアン様の従者の青年でした。

 私は、キリアン様のお顔を見て、なんとも言えない表情を浮かべていたのだと思います。

 ふいに、キリアン様が、いたずらっぽく笑い、片目をつぶりました。

 それで私は、

「初めまして。カリン・ハノウと申します」

 と、淑女の礼をしました。

「よろしく、私はアレク・サバネフだよ」

 とキリアン様。

「私は、ネストル・ゼレノイです」

 と従者の方。

 ネストル様は、カイトお兄様の言っていたキースレアからの留学生でしたね。


「ねぇ、カリン。

 アレク様が、カリンと曲を弾きたいんですって。

 彼は、竪琴が弾けるのよ。

 お願い、演奏してちょうだいな」

 サヤ様にお願いされてしまいました・・。

 アレク様はキリアン様ですから、それは上手ですよ。

 ソラがピアノの天才なら、キリアン様は竪琴の天才ですから。

 私は、お引き受けすることにしました。

 それでなくとも、歌を断ってしまってるんですもの。演奏まで断れません。


「弾かせていただきますわ」

 と、私が頬笑んでお答えすると、サヤ様とアレク様も嬉しそうにしてくださいました。


 私とアレク様は、ピアノのそばに行きました。

「すぐに私たど気付いたんだね」

 キリアン様が、打ち合わせをするフリをして私に話しかけました。

「フフ。

 上手く化けられましたね? キリアン様」

「でも、あっさり見破られてしまったけどね」

「私、観察するの得意なんですよ」

「ハハ。

 音楽以外にも特技があるんだね」


 キリアン様は、作曲家ソウタ・トラウの曲から、『聖夜』を選ばれました。

 曲の長さも丁度良く、選曲センスはさすがです。

 私も好きな曲のひとつです。


 私たちの準備が整ったところで、サヤ様が手を叩き、みなの注目を集めます。

「これから、お客様に素敵な曲をプレゼントしていただきますの。

 みなさん、楽しんでくださいませ」


 キリアン様と私は、演奏を始めました。

 竪琴の名手は、しばしば、「天上の調べ」と称えらますけれど、キリアン様の演奏は、まさしく、天の園にふさわしいほどのものでした。

 ひとつひとつの響きが、心震わす美しさです。

 私は聞き惚れながら鍵盤に指を踊らせます。

 短い曲は、すぐに終わってしまいました。

 音色の余韻が静まったあと、会場は、賞賛の拍手に包まれました。


 小さな演奏会が終わりますと、楽団の演奏が始まり、踊りの好きな方はホールに歩み寄ります。

 私はアレク様に誘われて、一曲踊ることにしました。

 さすが皇子様、上手です。

 曲に体を任せて揺れながら、

「ソラくんは、聖女と仲良いらしいね」

 とアレク様。

 せっかく、演奏で気分が良かったのに、傷をえぐらないで欲しいものです。

 私は、「そうみたいですね」と、素っ気なく応えました。

「あまり、この話題は乗り気でないみたいだね」

 アレク様が苦笑します。

「男の人は、恋話しなんて、興味ないと思ってました」

「それは、場合によるよ。

 ところで、今日は、聖女の聖歌を聞けるらしいね」

「ええ」

「君は歌わないの?」

「比べられたら困りますもの」

「どちらが困るの?」

「もちろん、私です」

「そうかな?」

「それは、そうです。

 だって、相手は、聖女ですわよ?」

 私が苦笑しますと、

「うーん。私は、君の歌の方が聞きたいけどね。

 聖女らしくない聖女の聖歌、というものには、じゃっかん、好奇心がわくけどね」

 とアレク様が言いました。

 笑ってしまいました。

午後8時に、本日の2話目の投稿をいたします。

よろしくお願いいたします。

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