22)学園祭と、隠れ攻略対象者?
本日、1話目の投稿です。
今日も、2話、投稿いたします。
今日は学園祭です。
お父様が、この日のためにワンピースを新調してくださいました。
クリーム色の地に、パステルカラーの小花が刺繍で散らしてあります。
髪をアップにして、おそろいの小花の髪飾りで飾りました。
ハルトお兄様に、「妖精のようだよ」と褒められました。嬉しいです。
今日は、早めに学園に行きます。
朝から会場は熱気にあふれています。
学生たちは、ずっと練習に励んできた、その成果を披露しようと、緊張と興奮に包まれているのです。
舞台で、学園長が挨拶し、学園祭の開始を告げました。
1年生から始まったプログラムは、順調に進んでいきます。
私と同じ曲を選んだひとは、今のところ、居ないようです。
実は、『春の宵』は、あまり選ばれることのない歌です。
ソプラノの女性の歌なのですが、ロマンチックな恋歌ですから、女学生が歌うには少々「はしたない」と思われているらしいのです。
知りませんでしたわ・・。
そもそも、ユヅキ芸術学園に入学するような貴族令嬢は、もっとクラッシックな曲を選びますしね。
少しばかり選曲で目立ってしまうかもしれませんけど、上級生たちはとても上手ですから、私なんか埋もれてしまうでしょう。無問題ですわ。
今日は、我が家の家族に、お兄様たちの婚約者の方々、それに、ソラとサヤ様が見えられています。
それから、なぜか、ジュンヤさんと、レミさんの姿も見ました。
会場には入らず、通路をうろうろされてましたけど。
どうしてでしょうね?
まぁ、ジュンヤさんとレミさんの言動が私によく判らないのは、いつものことですわ。
とうとう、私の出番です。
お兄様からいただいた緊張を緩和する魔導具は、今日も大活躍してくれました。
足は震えていません。
練習の成果を聞いていただきましょう。
『春の宵』は、私の心情そのものです。現実には伝えられない気持ちを、歌で届けます。
舞台袖でのイメージトレーニングも終わり、舞台へ向かいました。
礼をして中央に立ちます。
最初の発声、それは花降る空を思わせる、艶やかで繊細な音から始まります。
『真っ白な花びらの舞う道。
散りゆく花びらのように、私の恋は終わってしまった』
『この春の風は、あなたに触れた風でしょうか。
花を揺らし、なにも知らぬげに、花びらを散らしてゆく。
風よ。
どうか、今宵は、私に触れずにおいて』
最後の詩は、愛おしむように。叶わぬ恋を歌います。
歌声は、切なく響き渡りました。
・・終わりました。
聞いてくださった方々に、礼をします。
たくさんの拍手をいただきました。
出番が終われば、あとは、みんなの発表を堪能するだけです。
お父様たちの待つ客席に向かいました。
演奏の後って、虚脱感がありますね。
ほっとして、安心するんですけど、終わってしまって寂しい感じもあります。
最近、演奏前の緊張が、少し・・ほんの少しですけど、好きになってきました。
緊張は、苦しいですけど、生きてる、という感じがします。
震えるような、激しい緊張を乗り越えて、やり遂げる・・人生の主人公になった気分になれます。
舞台裏から、通路を通って、観客席の入り口に向かいますと、お父様とソラの姿が見えました。
演奏を終えた私を、迎えてくれようとしてるみたいです。
急ぎ足でそちらへ向かいますと、途中で、声をかけられました。
お顔は見たことがあります。キースレア帝国からの留学生の方です。
竪琴の科の方ですね。
我が国は、ピアノ演奏者の数はごく少ないのですが、その代わり、竪琴の演奏者は世界一のレベルなのです。そのため、演奏者の層が厚く、演奏会も人気があり、演奏家のレベルも高い、芸術の世界では、竪琴大国とまで言われています。
そのようなわけで、大国キースレア帝国からも留学生が訪れるのです。
彼は、たしか、キリアン・サバネフさんでしたっけ。
キリアン氏は、
「カリン・ハノウ嬢、素晴らしかった」
と、熱のこもった賛辞をくださいました。
「ありがとうございます」
私は淑女の礼をしました。
彼はひとつ上の学年です。これから出番のはずですのに。わざわざ、褒めてくださるためにいらしたのでしょう。嬉しいです。
キリアン様は、私の手を取り、
「『春の宵』は、我が国でよく歌われている曲だが、アノス王国では聞いたことがなかった。
祖国で聞く歌を、美しく聞かせていただいて、懐かしかった。
ありがとう」
と、重ねておっしゃいました。
「こちらこそ、貴国の素敵な歌を歌えて光栄です」
私たちがやり取りしていると、すぐ近くで声がしました。
「うそっ。キリアン皇子!」
あらまぁ、レミさんの声です。
「皇子?」
「皇子だって?」
周りから声があがりました。
キースレア帝国の皇子なら、キースレアという姓じゃなかったかしら?
キリアン様は、いつも従者がついているような方ですから、たしかに、位の高い貴族の方なんでしょうけど。
レミさんの言葉を聞き、キリアン様の従者の方が、胡乱げに見ています。
「カリン・・」
ソラがこちらまで、歩いて来てくれました。
お父様と、お兄様たちも一緒です。
レミさんは、
「なんで、このタイミングで、隠れキャラが・・?」
と、意味不明なことをつぶやいています。
タイミングが悪いのはレミさんでしょう。
もしも、百歩譲って、キリアン様が皇子なのだとしても、お忍びで留学されてるんでしょうから、人目のあるところで暴露はマズイでしょうに。
レミさんは、ふらふらとキリアン様に近づきますが、キリアン様の従者が、さりげなく牽制しています。
キリアン様は、レミさんには目もくれず、
「私は、これで失礼します」
と、和やかに立ち去られました。
ソラは、キリアン様の後ろ姿を、いぶかしげに、ちらりと見てから私の手を取り、
「とても素晴らしかった」
と、言ってくれました。
「ありがとうございます」
「カリン、上手だったよ」
とお父様。
お目々が潤んでますよ、お父様。
泣き顔、見たかっ・・ゲフンゲフン。三児の父で、王宮で役職も持つお父様を人様の前で泣かすなんて、悪い娘ですね。
「お母様を思い出したよ、カリン」
とハルトお兄様。
「ありがとうございます」
嬉しい褒め言葉です。
「一番、上手だった」
カイトお兄様が抱きしめてくれました。
お読みいただきありがとうございました。
また、午後8時に、今日の2話目を投稿いたします。




