21)亡き母の歌
本日、2つ目の投稿です。
1話目は、午後8時に投稿済みです。
半月ほど後。
学園祭が近づいたある日。
夜半になって、お父様が私を部屋に呼びました。
「これを探し出してきたよ」
お父様が、記録の魔導具を私に見せました。
学園でも見たことがあります。
声や演奏を録音するものです。
「シオリが『春の宵』を歌ったときのものだよ」
「お母様が・・」
『春の宵』は、クラッシックではありませんが、少し古い曲です。
お母様がお元気だったころにも、歌われていたのです。
お父様は、魔導具を再生する装置にセットしました。
魔導具から、美しい歌声が聞こえてきます。
お母様の歌です。
綺麗です。まるで鳴鳥の美声のようです。
私は、お母様と、姿も声も、似ていると言われますが、本当に、こんな綺麗な声に似ているんでしょうか。自分で自分の声を聞くのと、ひとが聞くのとは、感じが違うと言いますが、よく判らなくなります。
お母様は、想いを込めて、優しく、愛おしく歌いあげています。
お父様と私、ふたりで、涙をあふれさせながら聞き入りました。
お母様は、こんなに素敵なお父様と結婚できたのですから、恋を成就させることが出来たのだと想いますのに。
どうして、悲しい恋の歌を歌うことができたのでしょうか。
「これは、シオリが亡くなる前の年のものなんだよ。
シオリは、少し、体が弱くてね。
はやり病の熱に耐えることができなかったんだ」
ああ、そうなんですね。
お母様。
もしかしたら、お母様は、自分の弱い体が長く生きられないことを、判っていたのかもしれません。
せっかく、お父様と結婚して、子供たちにも恵まれたのに。
私が生まれるとき、お母様は、とても危ない状態だったそうです。
ハヤトお兄様から、聞いたのです。
でも、お父様の、上級の治癒魔法のおかげで、お母様は助かったと。
お母様、弱い身体で、私を産んでくれたのですね。
・・でも、長く生きることができなかった。
お父様は、上級治癒魔法が使えますが、それでも、やはり、神様が決めた寿命には、逆らえないことがあるそうです。
救えるときと、救えないときがある。
とくに、病の治癒のようなものは、難しい。
神様には、逆らえないからね、とお父様は仰います。
出来れば、何度でも、救ってあげたかった、と。
こういう恋の終わり方も、あるのですね。
私の恋は、実らないのかもしれないけれど、お父様とお母様のおかげで、健康には恵まれました。
亡きお母様のぶんも、幸せにならなければいけませんね。
お読みいただきありがとうございました。
明日から、またもう少し早めに投稿します。
1話目を午後6時、2話目を午後8時に投稿する予定です。




