2)もう一人の自分と、家庭教師と侍女
今日、二度目の投稿です。一度目は午後7時に投稿済みです。
いつものように、真っ赤な洋服を選び、ふと思いました。
こんな服、似合わない・・と。
私は、焦げ茶色のくせのある髪に黒目がちな大きな瞳をしています。派手目な顔の私が、真っ赤やまっピンクのフリフリな服を着たら、チャラチャラし過ぎです。
それなのに、フリフリの服を選んでしまうのは、私が女の子だからでしょう。
小さな女の子は、そういう服が好きです。
幼い子供は、どんな服を着ても、そこそこ似合います。
それでも、幼いなりに個性があって、もっと、似合う服があります。
3歳でお母様を亡くした私は、趣味の良い似合う服を選んでくれる存在を失っていたのです。
そんな境遇の私を、冷静に見つめている、もう一人の私が、心の中に居る・・。
奇妙な違和感の正体が判ったのは、5歳のときです。
アヤノ大叔母様の言葉がきっかけでした。
「あたくしの知人に、『生まれる前』の記憶を持っているひとが居たのよ」
と、我が家を訪れた大叔母様が言ったのです。
そのご友人は、自分が、前世で弦楽器の好きな宮廷楽士の子息だったことを、はっきり覚えていた、という。
おかげで、音楽とは縁もゆかりもない騎士の家の子息として産まれたというのに、竪琴が習いたくて仕方がなかったのだとか。
私は、自分は、「それ」だろう、と思ったのです。
直感的に、それが真実だと判りました。
それで、大叔母様に、勢い込んで、
「それから、その方は、どうなったの?」
と尋ねました。
「うふふ。
ねぇ、カリン。面白いお話でしょう?
その方はね、でも、やっぱり、騎士団の副団長の息子らしく、剣を振るうのに適した体をしていて、剣術の能力も、すごく高かったのよ。
だから、けっきょく、騎士になったの。
でも、どうしても、竪琴を弾きたくて、趣味で習うようにしたの。
とても上手なのよ。
もしかしたら、音楽の道に進んでいたら、楽士としても、一流になれたかもしれないわ」
私も、そんな風だわ・・と思いました。
楽士の心を持っていた騎士のように、私の中にも、もう一つの心がある。
でも、私の場合、そんなにはっきりとしていないので、騎士のひととは違うのかもしれませんが。
◇◇◇
お母様の居ない私は、家庭教師と侍女が世話をしてくれてました。
家庭教師は、マヤという名の若い綺麗な女性で、子爵家の娘でした。
侍女も、見目の可愛らしい女性が付いてました。
以前は、優しい乳母が居たのですが、身体を悪くして、1年前に実家に帰ってました。
私は、家庭教師のマヤにも、侍女にも、なついてませんでした。
自分でもよく判らず、不思議なのですが、どうしても、マヤと侍女が好きになれなかったのです。
ある日、私は、家庭教師のマヤがお父様の再婚相手候補だ、と侍女たちの話しを耳にして知りました。
そういう噂話しは、ふつう、主家の令嬢には聞かせないものですが、私がガゼボで大人しく絵本を見ていたので、侍女たちは気付かずにおしゃべりしていました。
私は、その日の夜、お父様に、
「マヤとお父様は、結婚するの?」
と尋ねました。
お父様は、少し驚いた顔をしてから、
「いや、そんなことは決まってないよ」
と答えました。
私は、思わず、「良かった」と頬笑みました。
お父様は、しばらくなにか考えている様子でしたが、
「カリンは、マヤが、好きかい?」
と私に聞きました。
私は、お父様の問いに、すぐに答えることが出来ませんでした。
しばらく迷って、
「いいえ」と、小さくつぶやきました。
「どうしてかな?」
お父様が優しく尋ねます。
私は、「判らない」と正直に答えました。
本当に、判らなかったのです。
なぜ、マヤが好きじゃないのでしょう。
私に付いている侍女もそうです。
なぜ、好きじゃないのか。
マヤと侍女は、私の言うことをよく聞いてくれます。
美味しいおやつも、絵本も、たくさん、くれますし、甘やかしてくれます。
マナーのレッスンや文字の勉強が嫌だと言えば、放っておいてくれます。
でも、好きになれなかったのです。
幼い私は、マヤと侍女が好きなはずなのに、もう一人の私が、嫌っている・・。
お父様に、それをうまく話すことが出来ませんでした。
また明日、続きを投稿します(^^)/




