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17)不穏な祝賀パーティ その2

今日も、投稿は1つだけになりますm(_ _)m

ブクマ、ありがとうございます。

 タンゴが弾き終わりましたのでカイトお兄様のところに戻りますと、お兄様とヒロト様に、「素晴らしかったよ」と、口々に褒められました。

 身に余るお褒めの言葉に照れます。

「いいなぁ、こういう妹がほしかったな。

 うちは、くそ生意気な弟ばかりでさ」

 とヒロト様。

「私は、かわいい弟、ほしいです」

 私が言いますと、

「あげるよ」

 と言われました。

 そんなに簡単にもらって良いのでしょうか。

 和やかに過ごしていましたら、カツカツという勇ましげな足音とともに、見知った顔が近づいてきます。

 ジュンヤ様でした。

「君は、ずいぶん、男性に取り入るのが上手いみたいだけど、ピアノの腕は凡人の域を出ないな。

 あの連弾は、私がソラと弾く予定だったんだ。

 君のおかげで、台無しだ」

 とジュンヤ様。

 おやまぁ・・。

 彼女の声が届く範囲の人声が止みました。

 お祝いの宴のさなかに、よくも、こんな不穏なことを、声高らかに言えるものです。

 ちょっと感心してしまいました。あまりにも、彼女らしくて・・。

 私は、彼女の物言いは酷いと思いましたが、彼女の後ろに控えている女性に目がいってしまいました。

 あの、ソラの、おかしなファンの女性です。

 お名前・・なんでしたっけ?

 そんな風に考えていると、ジュンヤ様が、

「無視する気か!」

 と、怒り出してしまいました。

 さて、どう対応したら良いのでしょう。

 こんなとき、前世の記憶をもっとはっきり思い出せたら良いのにと思います。

 なにしろ、私は、たくさんのひとと会う仕事をしていたのですから。

 でも、残念ながら、そんなに細かいこと、覚えていないんですもの。判らないわ。

 このまま無視して、逃げるべきでしょうか。

 それとも、しおらしくお耳汚しを謝るべきかしら?

 そんなに言われるほど酷い演奏だったとは思わないのですけど。

 私が悩んでいると、カイトお兄様が、

「あんた、何者か知らないが、このめでたい場で、よくも、そんな不愉快なことが言えるな。

 パーティをぶち壊しにしたいのか」

 と呆れたように言いました。

「な・・不愉快な思いをしたのは、こちらだ!」

 とジュンヤ様。お顔が赤いです。

 興奮しやすい方ですね。


「もう、行こう、カリン。

 こんなやつ、放っておこう」

 私は、カイトお兄様に連れられて、その場を離れることにしました。

 逃げるのが正解ですね。

 せっかくの祝賀パーティで、喧嘩はいけません。

 ところが、ジュンヤ様が追ってきて、私の腕をつかみました。

「待て! 逃げるな!」

 私は、いきなり腕を捕まれて、よろめいてしまいました。

 こけるっ!

 ・・と焦ったら、私の体を、どなたかが抱きとめて支えてくださいました。

 振り向くと、ソラが居ました。

「ジュンヤ・・。

 いい加減にしてくれないか。

 僕の友人に、なんて酷い言いがかりをつけてるんだ・・」

 ソラの低い声。

 かなり怒っています、ソラ。

 そりゃそうですよね、せっかくの祝賀パーティで、騒ぎを起こしてるんですから。

 それも、完全なる言いがかりです。

 ジュンヤ様・・いや、もう、ジュンヤさんでいいや。ジュンヤさんは、ソラが好きなんでしょうね。

 それも、めちゃくちゃに嫉妬するくらい。

 でもねぇ、パーティのど真ん中で言いがかりをつけるようなやり方は、悪手ですよ。

 嫌われるだけでしょう。

 もしも、ソラが、ジュンヤさんのことを好きなら、嫉妬されて嬉しいかもしれませんけど。

 今見た感じでは、良い結果にはならないですね。

 あーあ、こんなに美人なのに。

 残念美人さんでした。

 ソラに絶賛片思い中の私にしてみれば、ライバルの自滅ですけど。でもソラが怒ったり、大切な祝賀パーティを台無しにされたりしているところは、見たくないです。

 そういう愛し方じゃ、ダメだと思う。

 あぁ、でも、愛しすぎて心が暴走するような激しい恋愛にも、ちょっと憧れるような・・いやいや、やっぱダメだわ。破滅的すぎる。

 辛くても枕を涙で濡らす程度にとどめておくべきだわ、うん。


 私が、しょーもないことをあれこれ考えていると、

「ソラ、いつも私と連弾しているのに、どうして、今回は違うんだ?」

 などと、ジュンヤさんが言いつのっています。

「いつも、というわけじゃないだろ。

 前の誕生日のときに、一回だけ、一緒に弾いただけだ。

 今回は、彼女と知り合えた記念に、彼女と連弾したかったんだ。

 だから、僕から彼女にお願いしたんだ。

 みなさんにも楽しんでもらった。

 それを、台無しにしないでくれ」

 ソラが諭すように言うと、さすがのジュンヤさんも言葉がないらしく、だまりました。

 良かった。

 これで一件落着ですわね。

 和やかに終わろうとしたところで、「待って、ソラ様」と、今度は、レミ嬢の声です。

「あのね、ジュンヤ様は、ソラ様のことを愛してらっしゃるの。

 それを、判ってあげて!」

 と、レミさんが、叫ぶように言いました。

 いやはや・・。

 せっかく、穏便に済んだところですのに、また大騒ぎするんですか・・。

 それに、「愛してる」って・・なんだか、友人同士の好きとは違うニュアンスじゃないですか。

 おかげで、また、周りがざわめいています。


「また君か・・。

 どうして君はここにいるんだ?」

 ソラが眉をしかめます。

「彼女は私の友人だ。

 なにか問題があるのか」

 とジュンヤさん。

 レミさんの「愛してる」発言のせいか、ジュンヤさんのお顔がまた赤いです。

「もう、いいよ」

 ソラは、疲れたように言うと、私の背に手を置いて、その場から離れさせてくれました。

 私も、お兄様も、なんだか、疲れました。

 ・・モテるって、大変なんですね。

 ソラは、とても素敵な方ですが、周りに変なひと多すぎじゃないでしょうか。

また明日午後7時に投稿いたします。

お読みいただきありがとうございました。

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