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16)祝賀パーティ その1

ブクマ、ありがとうございます。

今日の投稿もひとつだけになります。m(_ _)m

 パーティ当日。

 夜会用に仕立ててあった服を着ました。優しい若草色で、清楚な感じの服です。祝賀会でピアノを弾くので、邪魔にならないよう、アクセサリーも控えめにしました。

 エスコートは、カイトお兄様です。

 あのコンクールの日、カイトお兄様は、剣術の試合、青年の部で優勝だったそうです。

 自慢のお兄様です。

 私がお出掛けのために装いますと、カイトお兄様は、

「かわいいよ、妹でなかったら結婚したいくらいだ」

 と褒めてくれました。

「お兄様、褒めすぎです。

 お兄様も、すっごく素敵です」

「だろ」

「うふふ」

 こういうお茶目なところ大好きです。


 私たちは、ふたりで、トキワ家へ向かいました。

 何度見ても立派なお屋敷です。

 敷地は広く、お城のような館は瀟洒です。

 会場に着くと、私とカイトお兄様はトキワ家の皆様にご挨拶をしました。

 ソラも、挨拶してくれましたが、そのあとソラは、年頃のご令嬢たちに取り囲まれてましたので、お話することはできませんでした。

 ソラは、公爵令息ですから、取り巻きのご令嬢たちは、良い家の方ばかりのようです。皆さん、ドレスがゴージャスですもの。


 ソラは、トキワ家の3男だそうです。

 貴族家の次男、3男というのは、なかなか、微妙な立場なのですよね。

 嫡男は家を継ぎますが、他の兄弟たちは、身の振り方を考えなければならないです。

 まぁ、トキワ家は名家ですし、ソラは、容姿端麗ですから、男の跡取りの居ない家に婿入りや養子など、いくらでもあるでしょう。

 良い家の子息ならば、コネを利用して王宮勤めとか。あるいは、騎士団に入ったりとか。あるいは、国立研究所勤めとか。

 あまり有能で無い方は、コネを利用しても、なかなか、良い身の振り方を見つけられない場合もありますけど。

 その点、ソラは、国際的にも有名なコンクールに、12歳で優秀な成績を修められました。

 もう、著名な演奏家になれることが保証されたのです。

 有望株、というわけですね。

 ご令嬢たちが放っておきません。


 カイトお兄様がご友人の方を見つけて立ち話を始めたので、私は、その傍らで、会場を見回しながら、お兄様たちの会話に、聞くともなしに耳を傾けていました。

「キースレア帝国で、やけに穀物の輸入量が増えているそうじゃないか」

 と、ご友人のヒロト様が仰っています。

「飢饉でもあったか、それとも、兵站のためか」

「その可能性が捨てきれないんだよなぁ」


 なかなか物騒な話です。

 キースレア帝国と我が国は、平和条約を結んであります。

 でも、「約束してるから安心」というわけにはいかないんですよね。


 キースレア帝国は、ほんの数年前まで、侵略国家でした。

 小国に侵略しては、自国に取り込んできた国です。

 資源があったり、豊かな穀倉地帯に恵まれていると狙われるのです。

 我が国は、そこそこ資源もあり、自然環境は良く耕作地は豊かにあります。

 ただ、キースレア帝国との間に山脈が横たわっているおかげで、地形的に侵略しにくく、それで、帝国の侵略から逃れてきました。

 けれど、国境線が、すべて山脈に守られているわけではなく、隣国の小国、ギルモア王国が帝国の支配下になったら、ギルモアを足場にして、攻め入られる恐れがあります。

 ですから、アノス王国は、ギルモア王国と同盟を結び、ギルモア王国がキースレア帝国から侵略されないように牽制してきたのです。


 長年、キースレア帝国は、好戦的な国でした。

 3年前に病気で動けなくなったキースレアの皇帝は、侵略を推し進めたい軍事産業の傀儡で軍部の言いなりだった、と言われています。

 現皇帝に代替わりして、すぐに、アノス王国は、キースレア帝国と平和条約を結びました。

 とはいえ、軍事産業と軍部の強いキースレア帝国の特質が変わったとは言い切れません。


 そのようなわけで、いつでも、キースレア帝国の動きを見張っておく必要があります。

 嫌な話です。

 でも、これが現実なんです。


 ふと気がつくと、いつの間にか音楽が流れ、ダンスが始まりました。

 ソラがピアノを弾いています。

 しとやかなワルツです。

 音色に聞き入っていましたら、お兄様のご友人のヒロト様に誘われてしまいました。

 ソラのピアノで踊れるなんて、夢のようです。

 一曲踊り終わりますと、サヤ様が、「ソラがピアノを弾きましょうって、言ってるわ」と喚びに来てくださいました。

 いよいよ出番ですね。

 私が、ピアノの前でソラの隣に座りますと、ソラが、私の耳元に、

「すごいタンゴをみんなに聴かせてあげよう」

 と言いました。

「ええ」

 私は頬笑んでうなずきました。


 激しくもエキゾチックなタンゴは、連弾で弾くとなかなかの迫力です。

 ソラの完璧な旋律に、私はついて行きました。

 連弾って、なんて楽しいのでしょう。

 ふたりの手が鍵盤を行き交い、音が絡み合い、ひとつの曲を奏でてゆきます。

 紡がれてゆくタンゴの調べに、弾きながら夢中になります。


 最後のキーを叩き終えますと、一瞬、ホールは、静寂に包まれ、そして、すぐに、あふれんばかりの拍手が沸き起こりました。

 私は、ソラに手をとられ、一緒にお辞儀をいたしました。

 私は淑女の礼を、ソラは紳士の礼を。

 さらに拍手が大きくなりました。


 ソラは、すぐに、他のご令嬢たちに囲まれてしまいました。

 ソラの婿入りを希望される家のご令嬢が多いのでしょうね・・。

 私の家は・・。

 考えないようにしましょう。目が熱くなってしまいます。今日は、少し、お化粧してるんですもの。涙は禁物です。

 ピアノは、上手に弾けて大満足でした。

 大事な祝賀パーティでの演奏です。素敵な思い出になります。

また明日午後7時に投稿いたします。

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