第1章 5話 「始まりの町」
さて、これからの方向性も決まった事だし早速仕事に取り掛かりたいが問題が一つ。
移動手段が無い。<魔王城>は最東の地に位置している。その真反対に<始まりの町>がある為どうしても時間をとられる。地球みたいに丸ければ近いのにな。
「ルシフェル様、【転移石】は?」
リリスが思い付いたと言わんばかりに拳で掌を叩くジェスチャーをとる。
「勿論私が保管してる。だがあんな貴重な物を使用してよいのだろうか」
「その【転移石】ってのは幾つあるんだ?」
「は。しばしお待ちを」
そう言うとルシフェルはメニューを開く。というかメニューを開く時の手の動きをとっている。このゲームは他人のメニューなどを可視出来ないように設計されているらしい。
AIのルシフェル達もメニュー開けんだね。
と言うかほんとにAIなのか?スムーズに会話出来すぎて逆に怪しいものだ。
後から彼らに聞いた話だが、<第二位従属者>の中でもごく一部の魔物と<第一位従属者>だけがメニューを開けるらしい。ただし、出来る事は自分のステータスを確認する事と多少のアイテムの保持らしい。
まあAI達がメニュー開いてログアウト、なんて出来たらびっくりだよな。
「【転移石】はやはり貴重なアイテムなので一つしかありませんね。申し訳ありません。」
「片道切符か....」
リリスと二人で始まりの町に飛ぶとしても帰ってくる事が出来なくなる。
「それでもいい。とりあえずすぐに行って問題を対処してくる。」
「しかし...<始まりの町>から<魔王城>までの距離は何週間、何ヵ月とかかるやもしれません。」
「俺は問題ない。リリスはどうだ?」
「はい!サタ..いえ、レンジ様と二人きりなんて夢のようでございます!」
「リリス!レンジ様の前でご無礼の無いように。」
リリスはメニューを開きメイド服から紫色で統一された戦闘用の装備に切り替えている。
ルシフェルが少し悔しそうにしてるのは気のせいということで。
「では【転移石】をお渡しします。後、必ず役に立つであろうアイテムもお渡しして置きます。」
『【転移石】【トランストリックリング】×2をを手に入れました。』
「これは?」
「万が一の為、ジョブチェンジを行わずとも好きな基本職に仮に変身する事が出来るアイテムをお渡ししました。必要とあらばご使用下さい。」
「感謝する、ルシフェル。早速<始まりの町>へ向かうのでここの防衛などは任せるぞ」
「どうかご無事で。」
【転移石】を使用する際、効果を適用するメンバーを選択しろとの表示が出たので、俺とリリスを選択する。
徐々に俺たち2人は青白い光に包まれた。
その瞬間足元から光が強くなり頭の方まで上がってきて.....
目を開けると上空20m程の場所からスロースピードで落ちていた。ふわっと。
と、問題はそんな所じゃない。場所が場所だけあってめちゃくちゃ目立っている。
当たり前だ。上空から人、というか魔物扱いか?とにかく【転移石】はレアでまだ誰も見たことがないだろう。
まだ正式サービス開始三日目だしな。
「なんだあれ...!!?」
「何かのイベントか..?」
人で溢れかえっていたメインストリートは円形に穴が空いた。人々は好奇の目でこちらに眼差しを送る。
「思っきり注目されてるな」
「排除します」
リリスは魔法を発動する構えをとる
が、<始まりの町>内はセーフティーゾーンである為発動はしない。少し驚いた表情を見せ、軽く俯き顔を紅く染めた。
「くそっ【大司教】の恩恵か...」
リリスがぼそっと呟く。
なるほどな。【大司教】とやらが町に結界を張ったのだろうか。まあ【魔王】とその手下が侵入したけど。それにしても人がうざい。
「このっ、下等生物らめ!貴様ら如きが世界の頂点に君臨される【魔王】様の邪魔をするな!」
え、ばらすの?大丈夫すか?
そんな事言えば絶対パニックになるって!
「【魔王】?おいおい嘘だろ?」
「何で始まりの町に居るんだよ!」
「討伐チャンスじゃねーの!」
「初っ端から【魔王】降臨イベかよ?!」
案の定大混乱を招きました。はい。
ピコン、と通知が届く。
『カイザー さんから対戦の申し込みです。
ルール:フルHP・サバイバル式 参加人数9人』
<始まりの町>内はセーフティーゾーンなのでPKは出来ない。
よってここで戦闘をするなら負けても何のデメリットも無い対戦のみ可能だ。
人数は9人でこちらは2人。いじめか。
「俺らなら行けるって!負けた事ねえし、やり込んでるからAESプレイヤーの中でもレベルはかなり高いぜ?まず相手は2人だしよ!」
カイザーという、【剣士】っぽい格好をした20代前半で目つきの悪い茶髪の男が仲間と思われる男と話している。
「んだよおら。はやく承諾しろよ、びびってるんすかこら?ゴキブリみてーな格好しやがって」
「隣の女は対戦が終わったら遊んでやるよ」
と、カイザーの仲間の中の誰かがそう発言するとと仲間達が大声で笑った。
リリスの耐え切れない憤りが心臓で唸り暴れる。
ふむ。勇気だけは評価しよう。下品で実に安い煽り文句だが実力試しに挑発に乗ってやる事にした。俺は承諾を選択する。
「 立 っ て い れ る と 思 う な よ 」
俺の言葉が場の空気を一瞬にして重くする。
俺たち2人とカイザー達7人は専用フィールドへ飛ばされた。
キャラをどんどん増やしていくかも知れません。