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ステージ1-2 魔界【状況判断をする為に】


 「何処だここは…」


 今俺がいるのは木造の大きな樽が壁際に並んだ西部劇で出てきそうな酒場。

 二日酔いで痛む頭を抑えながらオンボロな椅子から立ち上がり辺りを見回すと、薄暗い室内に少なくない数の大小様々な人影が転がっていた。

 昨夜、記憶が曖昧なのだが酒を大量に飲んだらしく未だに吐き気を催している。

 ふたたび椅子に腰を下ろし記憶に無い今の状況を整理するために痛む頭を働かして昨日の記憶を辿る。



 ◇



 昨夜、森の中で警戒心MAXでチワワの様に震えている俺を見つけた魔族のおっさんは俺の体を数十秒ジロジロと眺めた後、人の良い笑顔を浮かべ俺を肩に担ぎこの酒場まで連れてきた…らしい。らしいというのも俺は近づかれ肩に担がれた時点で恐怖のあまり気絶してっしまったので記憶にはないからだ。


 肩を叩かれ目を覚ました俺の目の前にはこの酒場で酒を酌み交わしている、それこそファンタジー映画に出てくるようなひげもじゃの小さなおっさんとか2足歩行の獣っぽい奴とか和服を着た日本の鬼っぽい奴とかエトセトラエトセトラ…。

 魔界に来ている事を覚えていなければ夢だと思った光景である。これが現実だと認めたくないが。


 俺が肩を叩かれた方を見るとあの魔族のおっさんが相変わらずいい笑顔でニコニコしながらこちらを見ている。


 「な、なんですか?」


 相変わらず震声で尋ねる俺に


 「まぁ良いから飲め!」


 と、目の前のテーブルに小さな樽みたいなジョッキ(特大)を置く魔族のおっさん。

 うん、イミガワカラナイ。だが有無を言わさぬ迫力のある図体といい笑顔である。断る勇気は俺には無い。


 「それじゃあいただきます。」


 と、ジョッキに手をかけると周りの視線に気づく。なんかみんな見てませんか?

 いや、まともな人間っぽいのが俺一人しかい無いから目立つのは分かるんですがガン見ですよガン見。怖すぎてちょっと漏れそう。


 「さぁグイッといきな!」


 おっさんがデカイ声で煽ってくる。いや待てこの量をグイッといけと?しかも中身なみなみに入った(色と香り的にワインっぽい)アルコールをですか?下戸では無いがこの量はやばい…

 しかし、会社の上司に宴会で無茶振りされた時のようなこの断れ無い空気、逝くしかあるまい。


 「「「おおおおおお」」」


 周りがざわめくのが聞こえる。

 一心不乱にジョッキを傾け胃に流し込む。

 意識が飛びそうになるのを必死に食い止めジョッキを空にする。



 「あれ『魔物殺し』じゃねーか…この店で一番強い酒を一気とは…」

 「あの人間只者じゃ無いな」

 「それより何でアモンさんが人間と一緒に飲んでんだ?」


 ひそひそ話をする隣のテーブルの狼男達。

 あのおっさんアモンっていうのか…じゃなくて、何考えてやがる!一番強い酒をジョッキ丸ごとってどういう事だゴルァ!…など声に出せるわけもなくジョッキを空にしてテーブルに叩きつける。


 「「「うおおおおお!」」」


 周りから歓声が上がる。が、しかし俺の意識はショート寸前。

 

 「やるな!おいお前ら!この人間に負けてんじゃねぇぞ!俺が奢るからどんどん飲みやがれ!」


 おっさんお大尽発言。周りの歓声に耳を傾けながら机に突っ伏しそうになるのをギリギリ抑えながらなんとか意識を保つ。


 「さすがアモンさんだぜ!」

 「よ!お大尽!」

 「太っ腹!」

 「ごちそうになりまーす!」


 など騒ぎながら周りの飲む速度がスピードアップしている。

 髭もじゃのちっさいおっさんが樽を傾け直接飲んでるが体積的に飲みきれ無いだろあれ。

 そんな事をぼんやり考えながら頭をふらふらさせていると


 「やるなお前、貧弱な人間の割に大したもんだ!」

 「痛い痛い!出ちゃいけない物出ちゃうからヤメテェ!」

 「がっはっはっはっはっは!」


 バシバシと丸太みたいな腕で俺の背中を叩くおっさん。

 そして目の前のテーブルに無慈悲にジョッキ(さっきより大きく無いっすか?)を置く胸の大きな給仕のお姉さん(うさ耳)。


 「今日の出会いに乾杯だ!」

 「か、かんぱ〜い!」


 と、アモンと焼けグソ気味にジョッキを打ち合わせた所までは覚えているがその後の記憶はなかった。



 ◇



 思い出した。あまり思い出したくはなかったが…


 とりあえずもう一度立ち上がり床に寝転がっているアモンや他の野郎どもを起こさ無いように慎重に外に出る。

 両開きの扉を開くとそこは幅の広い道に木造の色々な看板を掲げた商店が軒を連ねた大通りであった。

 商店の看板の文字は見覚えのない模様みたいな言語で書かれていたが理解できた、これがきっとロノウェの言う『あらゆる言語に精通する能力』なのだろう。そういえば昨日も獣人や魔族の話している事も普通に理解できたし文字も言葉も頭の中で自分に理解でき相手にも理解できるように変換されているのだと思う。

 

 すでに日は高く青い空の下、昨夜も見たような獣人や魔族や亜人が多く行き交い商店からは客の呼び込みや金属を叩く音など喧騒が聞こえる。

 商店には見たことのある野菜を売っている店もあれば見たことの無いグロテスクな魚を売っている店、他にも剣などの武具を売っている店や皮表紙の本がたくさん並んだ本屋など様々だ。


 世界征服という目的も情報なしでは始められない、ということで情報収集がてらこの通りを歩きながら観察することにした。

 さっそく本屋に寄り棚に並べてある書物を読んでみるが、数冊読んでも手書きの本しか無い。

 つまり活版印刷技術が普及する以前レベルの技術力しか無いと仮に判断できる。まぁ、物理法則等が元の世界と同一とは限らないので簡単に判別することはできないが…。

 本の中身は子供用の絵本から、薬学の専門書(さっぱりわからん!)や魔法の入門書(欲しい!)まで色々と並んでいたがいかんせんお金がないので早々に立ち去った。


 鍛冶屋には両刃剣や盾など中世のファンタジー映画に出てきそうな武装から鍋や包丁などの生活用品まで雑多に並べられている。武装も中世のレベルなのだろうか?

 ちょうど長身の2足歩行のトカゲ(リザードマンって言うんだっけ?)が鍛冶屋の髭だるまのおっさん(こっちはドワーフかな?)から木と先端に鉄の刃がついたシンプルな槍を受け取っていた。

 支払いに数枚の銀貨らしきものを渡していた。おそらく金貨や銅貨と合わせた貨幣経済なのだろう、ますます中世っぽいね。


 それと道行く人々の中に軽装の武装した兵士らしき姿も見える。最低限の治政はなされているのだろう。ロノウェも魔族が治める王国とか言ってたしそれ位は当たり前か。


 しかし、歩いていると妙に視線が集まる。やはり魔界では人間が珍しいのだろうか?

 しばらく歩いていると先ほど鍛冶屋で槍を受け取っていたリザードマン(仮称)が無表情でこちらを睨みながら俺に向かって歩いてきた。長身で槍持ったトカゲとか怖すぎなんですが…。


 「何か用ですか?」


 冷静に言ったつもりだけど声は震えていたと思う。未だに魔界の住人の姿には慣れないね。


 「人間がどうして自由に歩き回っている。お前ら奴隷は一人で歩くことを許可されてねぇぞ。」

 「奴隷?なんの話ですか?」

 「しらばっくれるな!この王都に奴隷でない人間がいるはずがない。隷属の証(スレイブチョーカー)が無いのも何かの手違いだろ、さっさとこっちに来るんだ。」


 ぐいぐいと俺の腕を引っ張るトカゲ野郎。いきなりやってきて人を奴隷扱いとは少しカチンときたぞ。

 周りの人々も成り行きを見守っているようで助けは期待できそうにない。自力でなんとかするしかないみたいだ。見た感じ190cm以上身長ありそうだけどやれるかな…。


 「離してくださいよっと。」

 「んぐっ!?」


 一本背負。

 ビビっていた上に相手がデカかったので上手くいくとは思わなかったがこれほど綺麗に決まるとは…。

 少し浮かれそうになったが二日酔いの頭が揺れて吐き気が戻ってきて急降下。


 「抵抗するのか!人間風情が!」


 脇に置いてあった槍を手に取りながら立ち上がり憤怒するリザードマン、ちょっと槍を構えないで下さいお願いしますなんでもしますから。


 「何をしてるんだ?」


 と、後ろからの声に振り向くと俺の二日酔いの元凶ことアモンさんではないですか。


 「アモンさん!実はこの人間がいきなり俺になぐりかk」

 「嘘をつくんじゃねぇぇ!」

 「あべしっ!」


 最後までリザードマンに喋らせずにアモンパンチ炸裂。体浮いて10m位吹っ飛んでたが大丈夫か?


 「起きたらいなくなっていて心配したぞ。」

 「すいません、物珍しかったのでつい出歩いて色々見ていました。」

 「人間の国と比べて並んでいるものはそう珍しいものでもないと思うが、まぁ無事でよかった。おっと、そこの警備兵。あいつを牢にぶちこんどきな、街での武器の使用はご法度だろうが。」


 テキパキと事態を収拾させるアモン。さっきのリザードマンも名前を知っていたし有名人なのかな?


 「そういえば名前を聞いていなかったな、なんて言うんだ?」

 「タクトって言います、よろしくアモンさん。」

 「おう。ところで一つ聞きたいんだがお前さんはどうしてこの国に来たんだ?ただの人間がこの国に来る目的なんぞあまりないはずだ。」


 理由。

 この人になら話しても良いのかもしれないと思うが俺の目的(世界征服 )を言って信じてもらえるだろうか?そもそもこの世界の人間では無い事すら信じてもらえるかもわからないが。

 やはりこの人に直接話すよりも、この国の王様に会って事情を説明したほうが良いかもしれない。この人は有名人っぽいし王様に会うのにも何かツテがあるかもしれない。


 「実はこの国の王様に会うためにきました。少し個人的な用なので会ってもらえるか分かりませんが。」

 「ん、何を言っているんだ?」

 「いや、だから王様に…」

 「王は俺だぞ。」

 「は?」

 「失礼な奴だな、会う相手の顔も名前も知らんかったのか。」


 この良い笑顔で服装もカジュアルな、迫力はあるが威厳の無いただのでかいおっさんが


 「せっかくだから名乗ってやろう。俺は第2代ノーチスターナ王国魔王、アモン・ノーチスターナだ。覚えておけよ。」


 俺が世界征服を手伝うべき魔王だったらしい。

名前のあるキャラクターはまだ3人。(小悪魔男子、豪快平民ちっく魔王、謎主人公)

早くかわいい女の子を増やしたいです(願望)

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