レベル9 ダンジョンを攻略しよう
腹ごしらえが終わったので早速ダンジョンに乗り込もうと思った俺だったが、食べた後に急に動くのはよくないというキナコの発言により、少し休憩してからダンジョンへと挑むことになった。
「なあアキラ、一つ聞いてもいいか?」
「うん? なんだ」
「どうして私たち四人は、いまだに誰一人として魔法を使えないのだろう」
俺もそのことは気になっていた。俺たちのレベルは全員8だ。そろそろ魔法を覚えてもいいと思うのだが、俺たちは弱い魔法ですら誰一人使うことができない。
何か原因でもあるのだろうか。俺は取りあえず攻略本を開いてみた。
『【魔法】かしこさが高いものほど新しい魔法を覚えやすい』
「ということらしい」
「これじゃまるで私たちがバカってことみたいじゃないですか」
「私たちがバカだなんてありえない。攻略本もたまには間違っていることがあるんだな」
「その通りだネ」
この世界に来てから、初めて攻略本に間違った情報が載っているのを見つけたのかもしれない。俺たちは特別賢いというわけではないが、少なくともバカではない。それははっきりと言える。
「よし、休憩も終わったことだしそろそろダンジョンを攻略するか」
「そうしましょうか。賢い私たちがダンジョンなんてサクッと攻略して見せますわ」
「自信マンマンだなユリカ。しかしダンジョン攻略なら、私も負ける気がしない。何せ経験が違うからな」
カンナが言う経験とは、前の世界でのゲームのことだろう。それがどれだけ役に立つかはわからないが、士気が高いのは良いことだ。
そして俺たち四人は洞窟型ダンジョンの入り口に立った。
「暗いな」
「暗いですわ」
「暗い」
「暗いネ」
なんということだ。洞窟の中は闇が広がっており、中を見通すことができない!
「まあ、洞窟型ダンジョンってことは事前に話してあったんだから、たいまつくらい誰か持ってきてるだろ」
そう言い俺はユリカの方を見る。
「そうですわね。そのくらい誰か持って来てますわよね?」
そう言ってカンナの方を見るユリカ。
「その通りだ。冒険者たるもの、そのくらいの準備は当然だ」
そう言いつつキナコの方を見るカンナ。
「たいまつ持って来てるよネ?」
俺の方を向くキナコ。
誰も持って来ていなかった。
くっ、まさかこんな状況に陥ってしまうとは……!
洞窟に入るのに明かりを持って来ないってお前らバカじゃねぇのってツッコミたいが、俺自身が用意してこなかったので、これを言ってしまうと自分で自分のことをバカだと認めてしまうことになる……!
「洞窟に入るのに明かりを持って来ないなんて、あなたたちバカばかりですわ!」
流石自分のことを棚に上げる達人のユリカだ。なんて堂々とした発言なんだ。
「最近やったゲームは洞窟が明るいものが多かったからな。油断した」
どうやらゲームの経験は役に立たなかったようだ。
「なんとかなると思ってたんだけどネ」
なんとかならなかったな。
ちなみに俺は素で忘れていた。俺が一番バカなのかもしない。
ここは一度村に戻って準備をやり直すしかないだろう。まさか初めてのダンジョン攻略が、こんな形で失敗に終わるとは予想外だった。
「どうやら村に引き返すしかないようですわね。なんて難易度の高いダンジョンなんでしょう……!」
「うむ、まさかこんな陰湿なトラップが仕掛けてあるとはな」
ユリカとカンナの二人は、必死にダンジョンの難易度が高かったから村に戻るのも仕方ないという雰囲気を作ろうとしている。しかしはたから見るとバカ丸出しだ。
こうして俺たちの初めてのダンジョン攻略は、俺たちの自滅で幕を下ろした。
◇
「ようやく戻ってきましたわ」
あれから俺たちは村に戻り準備をし、夜が明けるのを待ってから再び洞窟の前へとやって来たのだった。
「昨日は攻略まであと一歩というところで撤退を余儀なくされたからな。しかし攻略の七割はもう終わっているのだ。ダンジョンのクリアは時間の問題だろう」
小さな洞窟なので一時間もあれば攻略できるはずだ。そしてここまでの移動時間は約三時間。つまりカンナは、移動時間を含めれば七割攻略しているということを言いたいらしい。
「小学生の時に先生に言われただろう? 家に着くまでが遠足だと。それならば、ダンジョンに着くまでもダンジョン攻略だ。つまり、私たちはダンジョンをもう七割攻略しているのだ」
「その理論だと行き三時間+ダンジョン攻略一時間+帰り三時間だから、俺たちはまだ半分もダンジョンを攻略していないことになるぞ」
「細かいことはどうでもいいじゃないか。それよりも早くダンジョンに入ろう」
「そうだな、とりあえず入ってみるか」
俺たち四人はダンジョンへと足を踏み入れた。
先頭を歩くのは、いつも通り索敵能力の高いキナコだ。もっとも敵に攻撃する機会が多いだろうから、キナコには今まで貯めた金で買ったブロンズナイフを装備してもらった。その後ろには俺とカンナ、そして最後尾はユリカである。キナコほどではないがユリカも敵の気配を察知するのが上手い。なので、後方からの挟み撃ちを警戒するため最後尾を歩いてもらうことにした。
「モンスターが来たヨ!」
早速現れたようだ。洞窟の奥から歩いて来たのは、小さな体にボロボロの布を巻き付けた鬼の様なモンスター、洞窟ゴブリンだ。洞窟に特化したゴブリンらしい。
「終わったヨ」
俺が武器を構える間にキナコがあっさりとゴブリンを倒していた。えっ、もう終わったの?
かなりレベルが上がった結果、俺たちはこの洞窟のモンスターならほぼ一撃で倒せるようになっていたらしい。
その後もモンスターは現れたが、全員がモンスターを一撃で倒せるためサクサクとダンジョンを進むことが出来た。
「次の分かれ道は、左が行き止まりで真ん中はこの洞窟の奥へと続いている。右の通路の奥には宝箱があるぞ。ここは右に行こう」
「了解だヨ」
「なんというか、アキラのその攻略本は反則だな」
「まあな」
この攻略本のおかげで俺たちは道に迷うこともなく、安全に格下のモンスターを選んで戦うことができるのだ。もはや俺たちにとっては必需品である。
そうこう話しているうちに正面から三匹の洞窟ゴブリンがやって来たようだ。俺たちは戦闘態勢をとる。
「うおおおおお、食らえ! ユリカのカタキだ!」
「ユリカは私たちの大事な仲間だったんだ。お前たちには死んでもらう!」
「ユリカの弔い合戦だヨ!」
「何ですかその掛け声は! 私は生きてますわ!」
三匹のゴブリンは速攻で倒されて経験値になった。
「カタキはとったぞ……、ユリカ」
「だから私は生きてますわ! ふざけてないでさっさと行きますわよ!」
あまりにもダンジョンが簡単なため、俺たちは少し飽きてきていた。
「りんご」
「ごま油」
「ラッパ」
「パンツ」
「つくし、お、どうやら宝箱の部屋に着いたようだぞ」
行き止まりになった洞窟の壁の手前に、宝箱が一つポツンと置かれている。辺りに罠などは何もなく、モンスターもいない。
初めて開ける宝箱ということで、俺はドキドキしながらフタに触れる。
「おお! これはブロンズソードだな。やったぞ!」
「いいモノが手に入ったな。これでパーティの攻撃力は大幅強化だ!」
「おめでとう! やったネ!」
「あのー、攻略本で最初から中身がわかってるんですから、わざわざ予想外の物が手に入ったみたいなリアクションをしなくても……」
何事も雰囲気が大事なのだ。それに退屈だからね。武器のドロップに大喜びする冒険者ごっこくらいしてもいいだろ。
「ユリカ、装備してみるか?」
「私はいいですわ。私が持っているスキルに、素手の時攻撃力が上がるものがあるんですわ」
そんな便利なスキルを覚えていたのか。通りで何も持ってないのに攻撃力が高いわけだ。
「カンナはどうだ?」
「私は剣を扱う自信がないから、叩きつけるだけで良い鈍器の方がいいな。その剣はアキラが装備するといいだろう」
「そうか、それじゃあ遠慮なく装備させてもらうよ」
剣を装備してからステータスを確認すると、ちゃんと攻撃力が上昇していた。これでさらに行けるダンジョンやフィールドが増えるだろう。
「よし、さっきの場所まで戻って、さらに洞窟の奥へと進もう」
来た道を引き返し、俺たちは洞窟の奥を目指して歩き出すのだった。




