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レベル7 私は健全な薬しか作らない

「おっちゃん、いるかー?」

「その声はアキラか、ちょっと待ってくれ」


 声をかけてからしばらくすると、カウンターの奥で作業をしていた道具屋のおっちゃんが俺たちの前にやってきた。


「待たせたな。それでなんの用だ?」

「昨日受けた薬草と解毒草採取の依頼が終わったから、アイテムを持ってきたんだ」

「もう終わったのか、相変わらず仕事が早いな」

「まあな」


 依頼品をおっちゃんに渡し、俺は代わりに報酬を受け取った。


「しかし、アキラはなんでこんなに薬草や解毒草を集めるのが早いんだ?」

「秘密のルートがあるんです(攻略本に載ってる安全な採取ルート)」

「秘密のルートか……(闇取引、密売)」


 後ろのゴロツキたちを見ながら意味深な表情を俺に向けるおっちゃん。

 何か盛大な勘違いをされているような気がする。


「それはそうと、今日も薬草と解毒草を集めて来て欲しいんだが、頼めるか?」

「実はそのことなんだけど、その依頼、こいつらに受けさせてやってもいいですかね」

「こいつらって、後ろのゴロツキたちのことか?」

「ああ、駄目か?」


 思案顔で三人のゴロツキたちを見つめる道具屋のおっちゃん。


「あー、そいつらは信用できるのか?」

「安心してくれ。俺が安全なルートを教え込む」

「安全な、ルート、か……。まあ、俺はモノが手に入れば出自は問わねえからそれでもいいぞ。ただし問題だけは起こさないでくれよ」


 ところどころよくわからないことを言っていたが、ゴロツキたちに依頼をやらせてもいいらしい。俺としては一安心だ。


「今日は朝から薬草の出が激しくてな。なるべく早く頼むぞ」

「だそうだ。頑張れよお前ら」

「ヘイお頭! 気合入れて頑張ります!」


 無事に依頼を受けることができた俺たちは村の入り口へ移動する。


「アキラだけはまともだと思っていたんだがなぁ」


 道具屋のおっちゃんが何か言っていた気がしたが、距離があったので俺にはよく聞こえなかった。





「うおおおおお、これがあれば俺たちでも簡単にクエストが出来るぜ!」


 敵がいない、もしくはいても角うさぎという簡単な採取ルートをまとめた地図を渡してやると、ゴロツキたちは歓声を上げて喜びだした。


「さすがお頭だぜ!」

「お頭! お頭! お頭!」


 あまりにも騒ぎ過ぎているため、村の入り口に立っている警備兵が、お頭と呼ばれている俺のことを不審者を見る目で睨んできた。


 このままでは警備兵に目をつけられると思った俺は、流れるような動作でユリカの背後へと周り込む。

 より不審な人物を間に挟むことにより、俺への注意を霧散させる。秘儀・ユリカシールドだ!


「何をやっているんだアキラ?」

「警備兵の視線から逃れているんだ」

「なるほど。私も目をつけられてはかなわん。ここはユリカの影に隠れさせてもらおう」


 そう言い俺の後ろへと回るカンナ。


「私も私モ」

「俺も俺も」


 そう言いながらさらに俺の後ろへと隠れていくキナコと三人のゴロツキ。

 その結果、村の入り口で七人で一列になり話し合うという、怪しげな集団が完成した。


「な、なんであいつらはあんなとこで一列になっているんだ? 呪文の儀式か何かか?」


 作戦は失敗し、見事にパーティ全員が目をつけられることになった。なぜこうなるんだ。

 俺たちが隠れている間、ユリカは警備兵に対してずっと仁王立ちだった。俺たちを視線から守るその姿は、まさに熟練のナイトという雰囲気だ。イケメンすぎるぜ。


「警備兵の視線位、私には何ともありませんわ」


 これが経験の差か……!


 無事にゴロツキたちへの説明が終了したので、三人にはカンナ特製火炎瓶をプレゼントし、クエストへと出発するのを見送った。移動しない植物モンスターの出現位置も書いておいたので、上手くすればレベルが上がるだろう。


「あの方たち、上手くいくといいですわね」

「ああ、そうだな」


 俺たちも攻略本を持っていなかったら、ああなっていたんだろうか。そう考えると他人事とは思えず、つい必要以上に手を貸してしまった。


「さて、俺たちには俺たちの目標がある。そろそろ俺たちも行くか」

「この後はダンジョンに行くんでしたわね?」

「おう、昨日はレベルが足りなくて行けなかったけど、今なら余裕だろう」


 今から行くところは、レバ村西の小さな洞窟型ダンジョンだ。小さい上に洞窟の構造は攻略本で把握済みなので、あっという間に攻略できるだろう。


「初めてのダンジョン攻略ですわね。腕がなりますわ」


 話していてわかったことなのだが、ユリカもなかなかRPGゲームが好きだったらしい。ゲームにハマったきっかけを聞いてみたら、ゲームの住人は私に話しかけてくれるからだそうだ。俺はそれ以上その話を聞くことをやめた。


「うむ、ダンジョンといえばお宝だ。ようやくまとまった金が手に入りそうだ」

「カンナは金が手に入ったら何か欲しいものでもあるのか?」

「私の回復薬を欲しがっている人がいてな。薬の材料費に充てようと思っている」

 

 さっき道具屋のおっちゃんが薬草がよく売れているって言ってたな。今この町にはケガ人が多いのだろうか。


「あ、あの薬がないと俺はもう駄目なんだ、ハァハァ。とか言われたら、作ってやらないわけにはいかないな」


 そんなに重症の人が居るのか。早く薬を作ってあげなきゃな。


「最近は手足が震えてきてな、薬を飲んだ時の気持ちよさが忘れられねぇんだ。という話らしい。早く薬を持っていってやりたいよ」


 そんなに重症の人が居るのか。早く薬をやめさせなきゃな。


「ていうか思いっきり副作用出てるじゃないか。健全な回復薬じゃなかったのかよ」

「勘違いしてもらっては困る。その人はアル中だから私が薬を売る前から手足を震えさせていた。最近とかいうのは大嘘だ」


 そいつはもう色々と駄目だと思う。


「あともう一つ勘違いしているようだが、私が売ったのは【状態異常】アルコール中毒を解毒する薬だ」


 そんな状態異常があるのかよ。


 つまり


 あの薬がないと俺はもう駄目なんだ(薬がないとアルコールの欲求に負けてしまう!)

 薬を飲んだ時の気持ちよさが忘れられねぇんだ(アルコールから解放されて気分爽快だぜ)


 ということらしい。


 ちゃんとアルコール中毒を治そうとしているなんて、意外と真面目な人なんだろうか。

 そう一瞬思ったものの、よく考えたら一度薬で状態異常を治してもらったのに手足が震えてきたということは、また酒を大量に飲んだということだ。やっぱりそいつはダメ人間だったようだ。


「苦労してるんだな、カンナ」

「儲かるから大して気にしていない」

「そ、そうか」


 カンナにとっては金が手に入るかどうかが重要らしい。


「持たざる者から持つ者へとお金が流れる、弱肉強食だネ!」

「やめろ、それだと俺たちが何か悪いことをしているみたいだ」


 この村では薬草よりも高い回復効果を持った薬は貴重品なので、キナコの言っていることが間違っているわけではない。しかし、その言い方はやめてほしい。


「ふむ、一層のことアルコール中毒の状態異常を起こす薬を作れば今より儲かるのでは……」

「おおっーと、話はこれくらいにして、そろそろダンジョンに向かおう。あんまり出発が遅いと日が暮れてしまう!」


 カンナのマッチポンプ計画を耳にした警備兵がこちらを睨んでいたので、急いでカンナの口を塞ぎ歩き出す。


「ふもも、ふももも」

「何だってカンナ? 今日のダンジョンでは先頭は私に任せろ? よし、たっぷりと囮になってくれよ」

「ふもも!」


 抗議を聞き流しながら村の出入り口へと向かう俺たちの横に、ユリカとキナコも着いてくる。


「まったく、警備兵の方に睨まれるようなことをするなんて、カンナは勇者一行として自覚が足りませんわ」


 あの警備兵の人、カンナに視線を向けるまではずっとユリカのことを睨んでいたんだよなぁ。


「それにしても、ユリカはなんであれだけ目を付けられながら一度も捕まっていないんだ?」

「証拠がないからですわ」

「つまり証拠があれば捕まるようなことをしたのか?」

「……、前にそういう話を友達から聞いたのですわ」


 苦しい上に一発でバレる嘘だった。


「えっ、ユリカって私たち以外に友達いたのかナ?」


 やめてあげてくれキナコ。それ以上はユリカが泣き出してしまう。

 心配になったのでユリカの方をチラッと見ると、今までにないくらいの笑顔を浮かべていた。


「そうですわ! 私たち四人は友達ですわ! 今日も一日頑張って行きましょう!」


 面と向かって友達だと言われたことが嬉しかったのか、最高潮にテンションが上がっているようだった。

 このくらいのことでこんなに元気一杯になるなんて、これまでどんな人生を送ってきたのだろうか……。


「辛かったんだネ。もう大丈夫だヨ」

「辛くなんてありませんわ。私はここ最近、とっても楽しいですわ!」

「俺も友達だぞユリカ。一緒に楽しく冒険しような」

「私も友達だぞ。もう売ろうとしたりしないから、一緒に頑張ろう」


 口々に友達だと伝える俺たち三人。カンナがさらっと警備兵に売ろうとしていたことを暴露したが、ユリカは気にしていないようだった。むしろ「絆が深まりましたわ!」とか言って喜んでいる。


「私たち、ずっと友達ですわ!」


 キラキラとした太陽の陽ざしにユリカの笑顔が輝いている。

 今日も良い一日になりそうだ、俺はそんな気がした。


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