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レベル5 伝説になるのが俺の夢だ

 四日ぶりに食べた食堂の飯は非常にうまかった。やっぱり外食はいいね。毎日食べたいものだ。


 飯を食い終わった俺たちは、今日の反省会を行うために早々に宿屋の部屋へと戻ってきた。


「私、気になることがあるんですの」


 気になること? 警備兵の巡回ルートでも気にしているのだろうか。


「今日森を焼いていた時に、称号っていうものが手に入ったのですわ。これは何なのでしょうか」


 そういえばそんなものが手に入った記憶がうっすらとあるな。あれは幻覚じゃなかったのか。

 とりあえず称号について攻略本で調べてみよう。


『【称号】称号を持っているものは、称号に合わせたスキルや魔法を覚えることがある』

 

 ステータスを見ると確かに放火人とかいう称号がある。みんなの様子を見てみると、どうやら三人とも称号を手に入れていたらしい。


 幻覚じゃなくて本当に良かった。集団で怪しい粉をキメて幻覚を見ていたとかは流石にヤバい。


「ちょっとカンナ! あなたのせいで変な称号が手に入ってしまったじゃないですか」


 確かにその通りだ。放火人って、まるで俺たちが悪いことをしたみたいじゃないか。


 実際やってしまったわけだが。


「別にいいだろう。ユリカは他にも怪しげな称号持ってそうだし、一つくらい増えても大したことない」

「うっ……」


 怪しげな称号持ってるのかよ。叩くとホコリが出てくる勇者パーティとか勘弁してくれ。

 いや、ユリカの場合は叩かなくてもホコリが出てくるか。


「覚えるスキルが増えるなら、きっとこの称号も役にたつヨ」

「そうだな。ここはプラス思考で行こう。きっと冒険に役に立つさ」

「お二人がそう言うなら……」

「うむ、プラス思考は良いことだな」


 今日は色々とあったが、レベルは大幅に上がったしスキルが増えそうな称号も手に入ったので結果としては良い一日だったかもしれない。ただし放火の件が村人にバレた瞬間最悪の一日になるだろう。


「そういえば、俺たちってレベルアップの速度が速すぎないか?」


 今日一日レベリングをしてみて思った事だけど、俺たち四人はレベルが上がる速度が半端なく早い。

 村の警備兵たちはかなり特訓をしてる気がするが、レベルは4から7くらいだという話を聞いた。


 一方で俺たちはまだこの世界に来て一週間ちょっとにもかかわらず、レベル8だ。どう考えても早すぎるような気がする。


「攻略本で調べてみればいいんじゃないか?」


 なるほどその通りだ。さっそく調べてみよう。


『地球からアースアルフにやってきた者は通常よりも多くの経験値を取得できる』


 アースアルフとはこの世界のことだったはず。つまり俺たちは他の人よりもたくさん経験値がもらえるから早くレベルが上がるということらしい。


「ふむ。昔他のプレイヤーから貰ったモンスターは経験値が多く貰えて育つのが早くなるというゲームをやったことがある。そんな感じなのだろう」


 俺もそのゲームはやったことがある。その時は要らないモンスターをひたすら交換に出していたっけな。


 俺たちは一体どんな理由でこの世界に連れてこられたのだろうか。もしや俺たちは地球にとって要らない存在……。それともこの世界の生贄……。いや、これ以上考えるのは辞めておこう。俺たちはこの世界を救うために送られたのだ。プラス思考で行こう。女神の暇つぶしという考えが浮かんだものの、俺はそれを強引に心の奥へと押し込んだ。


「私も一つ気になることがあるのだが、攻略本でこの世界の魔王の情報は調べられないのか? いるんだろう、この世界には魔王という存在が」


 魔王の情報か、それは俺も非常に気になる。しかしそれを調べることは出来ない。


「残念ながらこの攻略本はまだ前半しか開くことができないんだ」


 前半部分は問題なく開くものの、それ以降はどう頑張っても開くことが出来ないのだ。

 俺から攻略本を受け取ったカンナは一生懸命本を開こうとしているけど、開く気配はない。しばらく粘っていたが、諦めて本を返してきた。


「とても開きそうにない。情報は目の前にあるというのに、なんとももどかしいものだな。私の部屋の扉の前で、母上はいつもこんな気分だったのだろうか」


 家族なんだから自室の扉位開けてやれよ。そう思ったものの、開けた瞬間に親父からの痛恨の一撃をくらい、ノックダウンした記憶がよみがえったため何も言わないでおいた。一瞬扉の向こうから感じたプレッシャーは魔王級だったな。


 気絶から覚めた時に鏡を見て、あの一瞬で二発殴られていたことに気が付いた時はさらに驚愕したものだ。どうやら一ターンに二回攻撃するタイプの魔王だったらしい。


「なんで開かないんだろうな」

「おそらく無駄な情報を与えないためじゃないか。レベルのかけ離れた情報を知ったところで私たちにはどうしようもない。出来ることを確実にこなしていけということだろう」


 もっともな意見である。魔王に関してあれこれ考えている時間があるのなら、草原で角うさぎでも倒してた方がよほど効率が良さそうだ。


「もしくは……」

「もしくは?」

「年齢制限のかかった内容、つまりエロエロな内容だから開かないのかもしれない。私たちは未成年だから、年齢の条件を達成していない」

「それだと残り九割近くの内容が全部エロ関係ってことになるじゃないか! 内容の九割がエロってもはや攻略本じゃなくてただのエロ本じゃねーか!」

「可能性は……ある」

「あるわけないだろ!」


 その展開は絶対に嫌だ。もしそうだとしたら俺は一日中エロ本を握りしめている勇者ってことになってしまう。


 こんな嫌な可能性はさっさと忘れてしまおう。問題は先送りにするに限る。

 とりあえず明日の予定の話でもしておこう。


「レベルが上がったから行けるところも増えるだろうし、明日は本格的に金を稼ぐってのはどうだ?」

「賛成だな。効率を上げるなら装備は必需品だ。それに素材が増えれば新たな回復薬を作れるようになるかもしれない」


 新しい薬か。明日からより一層カンナを監視しなければいけないようだ。


「特別捜査官的なGメンになったつもりで頑張って監視しよう」

「安心しろ。私は合法で健全な薬しか作らない」


 合法……確かに白い粉はこの世界では違法ではないのかもしれない。ただし違法ではないだけで合法かどうかはかなり疑わしい。健全かどうかはさらに疑わしい。


「お金稼ぎするノ? それなら私に良い考えがあるヨ」


 どうやらキナコには何かアイディアがあるようだ。


「どんな方法なんだ?」

「明日になればわかるヨ」


 お楽しみってやつか。気にはなるものの、明日教えてくれるのなら待っていればいいだろう。俺も明日までに何かいい金稼ぎ法を考えておこう。


「もしかしてアキラとカンナのお二人は、この世界の魔王を討伐するつもりなんですの?」


 しばらく無言だったと思ったら、ユリカは魔王のことを考えていたのか。


 魔王を倒すのかどうか。正直に言うと俺は魔王を倒すつもりマンマンである。しかしみんながそんな危険な冒険をしたくないと言うのなら、無理に巻き込むつもりはない。俺は一人でも旅に出るつもりだ。


 やはりここはみんなの意思も聞いておくべきだな。


「俺は魔王を倒すための冒険をしたいと思っているんだけど、みんなはどうする?」

「ほう、なぜ魔王を倒す冒険がしたいのだ?」

「そんなの勇者がカッコいいからに決まってるだろ。冒険の果てに魔王を倒して伝説になる。これが俺の小さいころからの夢だ」


 厳しい冒険になるだろうがせっかくの夢を叶えるチャンスだからな。これを逃すわけにはいかないぜ。


「よく言った! 実は私も常日頃からVRMMOでデスゲームに巻き込まれる妄想ばかりしていてな。VR技術が発達するまでコールドスリープで眠っていようと思っていたところなのだ」


 そんなろくでもないこと考えてたのかよ。まあ俺も人のことは言えないか。


「私とともに極めようじゃないか、私たちの勇者道を」

「お、おう。勇者道ってのがなんなのかよくわからないけど、とりあえず一緒に勇者になろう」


 固い握手を交わす俺とカンナ。趣味といい生活スタイルといい、意外と相性が良いのかもしれない。


「ユリカとキナコはどうする? もし嫌だったら無理についてきてくれとはいわないけど」

「私は皆さんにどこまでも着いていきますわ。お友達と一緒におしゃべりできるここ最近は、人生で一番楽しい時間でしたもの」


 友達いなかったのかよ。まったく、しゃべる相手がいないなんて悲しい人生だったんだな。あれ、おかしいな。なんで涙が出てくるんだろう。


「私も着いていくヨ。だって楽しそうだからネ」


 キナコは相変わらずよくわからないけど、本人が行くって言っているのなら連れて行っても問題ないだろう。


「そうと決まれば、本格的に旅の計画を立てなければな。まずは何が必要だと思う?」

「ふむ、私はやはり、金が必要だと思うぞ。それから経験値だ。そして金だ」


 どんだけ金が欲しいんだよ。しかしその気持ちはわかる。


「それじゃあ当面はこの村を拠点にして、ダンジョン攻略で金と経験値を稼ぐっていう感じでいこう」

「うむ、それでいこう」

「よし! 金と経験値を稼ぎまくるぞ! そして俺たち四人で魔王を倒して伝説になろう!」

「「「おー!」」」


 こうして決意が固まった俺たちは、本格的に魔王討伐を目指し始めるのだった。


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