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レベル30 エピローグ

 ウルモフを倒した日から三日の時が流れた。


「おはようみんな。今日はどうする?」

「ふむ、そんなのは決まってるいるだろう。取りあえず広場に行こう」


 ユリカとキナコも同意見みたいだ。ちなみに俺も広場へと行こうと思っていた。


「気合を入れて、全力でいくぞ」

「任せて下さい。私、力がみなぎっていますの」


 宿屋を出て、俺たちが村の広場へとたどり着くと、そこでは……。


「カンパーイ!」

「「「カンパーイ!!」」」


 いまだに宴会が続いていた。


「全力で飲み食いするぞ!」

「「「「おー!」」」


 臨時で設置されたテーブルの上に大量の料理が載っているので、手当たり次第に皿に盛りつけていく。


「おおっ、冒険者様が来たぞ」

「村を救ってくれた冒険者様にカンパーイ!」

「良い料理を確保しておきました。ワシらの席でまた冒険の話を聞かせてくだせぇ」

「冒険者様の活躍をのちの世に伝えるため、銅像をおつくりしようと思うのですがいかがですかな?」


 圧倒的な手のひら返しに逆に不安を覚えてしまう。ここまで勢いの良い手のひら返しだと、何か企んでいるんじゃないかと疑ってしまうぞ。純粋な厚意の気持ちが伝わってくるから、悪い気はしないけど。


「どうする?」

「私は構わないぞ」

「いいんじゃないですか?」

「それじゃあ行くか」


 ちなみに、キナコは料理の話が出た一秒後には席に着いている。そしてすでに食い始めている。よく朝から肉ばっかりそんなに食えるな。


 俺たちも村人たちが集まっている席に着いて料理を食べ始めた。 村の料理人たちが料理を提供しているだけあって、すごくおいしい。


「冒険者様、昨日の話の続きをお聞かせください」

「昨日はどこまで話したのだったかな?」

「ウルモフへと先制攻撃を仕掛けたところです」

「ふむ、そうだったな。先手をとった私たちの強力なスキルが決まり、ウルモフは大ダメージを受けた、と思われた。しかし私たちの目の前に立っていたのは、無傷のウルモフだった。『フッフッフ、その程度か。ぬるい、ぬるすぎるわ』ヤツが振り下ろした拳が空気を切り裂き衝撃となって……」


 俺の右隣では、カンナがウルモフと戦った時の話を村人たちに語っている。おかしいなぁ、俺も参加した戦いなのに、まったく記憶にない。そんな緊迫したシーンあったっけなぁ。


「友情の力が、奇跡を起こしたのですわ。お互いを想う気持ちが私たちを死の淵から蘇らせたのです。そして私たちは、再びウルモフへと立ち向かったのですわ」


 左隣では、ユリカがウルモフと戦った時の話を語っていた。もちろんこの話も俺の記憶にはない。おかしいなぁ、なんでウルモフと戦った話が二つも三つもあるんだろう。俺たちは何回ウルモフと戦ったんだ。


 連日連夜の飲酒で記憶が曖昧なせいか、村人たちはまったくおかしいと思っていないようだ。それどころか、「二回目のウルモフ戦は緊張感があって良かったなぁ」とか「いやいや五回目のウルモフ戦こそ歴史に残る名勝負だろう」とか語っていた。


 マジで俺たちは何回ウルモフと戦ったんだよ。いい加減おかしいと気づけ。酒に呑まれすぎだぞ。


 しまいには、俺たちとはまったく関係ない冒険者が「俺、実は荷物持ちとして戦いに着いて行ったんだが」とか言ってウルモフ戦の様子を語り始める始末だ。


 そのせいで、今レバ村では俺たちは十回以上ウルモフと戦ったことになっている。もうわけがわからない。その十回以上の戦いの中に、本当の戦いの話が含まれていないというのがさらに酷い。


「なんでこんなことになったんだろう」


 夜まで広場でダラダラしながら考えていたけど、結局答えは出なかった。



 ――三日後――



「カンパーイ!」

「「「カンパーイ!」」」


 宴会はまだ続いていた。


 ここにたむろしている人たちは働かなくてもいいのだろうか。村の金持ちたちが宴会の費用を全額負担しているという話は本当かもしれない。


「おおっ、冒険者様が来たぞ」

「村を救ってくれた冒険者様にカンパーイ!」

「「「カンパーイ!」」」


 言っていることがここ数日ずっと同じだ。俺はRPGゲームの主人公のような勇者になりたいのであって、ループ物の物語の主人公になりたいわけじゃないぞ。


「良い料理を確保しておきました。ワシらの席でまた冒険の話を聞かせてくだせぇ」

「冒険者様の活躍をのちの世に伝えるため、銅像をおつくりしようと思うのですがいかがですかな?」

 

 料理確保おじさんと、銅像制作おじさんがまた話しかけてきた。おじさん、冒険の話は昨日したでしょう? あと、銅像制作おじさんはどんだけ銅像作りたいんだよ。


「……どうする?」

「昨日と同じでいいんじゃないか?」

「そうですわね」

「そうだネ」

 

 流石のキナコも今日は飯につられていなかった。六回目だもん、飽きるよな。



 ――さらに三日後――



「カンパーイ!」

「「「カンパーイ!」」」


 宴会はまだ続いていた。


「アキラよ、一つ思った事を言ってもいいか?」

「なんだ?」

「そろそろ冒険がしたいのだが」

「奇遇だな。俺も同じことを考えていた」


 食べては寝る、起きたらまた食べる。とても素晴らしい生活だけど、こんなことをしていていいのかという気持ちが日に日に増してくるのだ。


 元の世界でも今と同じような生活をしていたけど、勇者を目指す楽しさに目覚めてしまった以上、どうやら元の生活には戻れないようだ。


「私も早く次の村に行きたいかナ。この村の料理はもう飽きたんだヨ」

「私も賛成ですわ。まだ見ぬお宝を集めに行きたいですわ!」


 ユリカの言うお宝って絶対アレだよな。次の村でも警備兵の目におびえる生活が始まるのか……。

 

 しかし、三人とも俺と同じように冒険に出たいと考えていたんだな。それなら、やることは一つだ。


「次の村に行こうぜ!」

「「「おー!」」」


 翌日の朝、俺たちは村を出るためにこっそりと村の中を移動し、北にある出入り口を目指した。なぜコソコソしているかと言うと、村人たちが宴会の席へと引きずり込もうとしてくるからだ。「働いてないから金がヤバい。けど俺は働かないぜ。だからお前たちも一緒に飲もうぜ」とか言ってくる村人がいる始末だ。いや、金がヤバいなら働けよ。俺たちを巻き込むな。


 村の外へと近づいて来た時、北の出入り口に人が立っていた。女将さんたちだった。なんか既視感がある光景だな。


「待っていたよ。昨日、村を出る話をしているのを聞いたから、見送りをしようと思ってね」


 そこにいたのは女将さんと、防具屋のおっちゃんに武器防具屋のおっちゃん、そしてゴロツキたちだ。


「まずは、遅くなったけど依頼の報酬を渡させておくれ。私たち四人の分をまとめておいたからね」


 女将さんから受け取った袋の中には、約四千ゼニーものお金が入っていた。


「いいんですか?」

「いいんだよ、村を救ってくれたんだからね。それにね、アキラたちの活躍に触発された息子が、ようやく部屋から出てきてくれたのよ。ちやほやされるような冒険者を目指すって言ってたわ」

「あー、うん。成れると良いですね、冒険者に」

「部屋から出てきてくれただけでもうれしいわ。みんな、本当にありがとう」


 それにしても、俺たちは本当に村を救ったのだろうか。村の現状は働かずに宴会している人が大量発生で、前よりもひどくなっている気がする。


 そのことを女将さんに聞いて見る。


「特に冒険者なんかは、初めて死を身近に感じると性格が変わる人って結構いるらしいけど、村の人たちも変わってしまったみたいだねぇ。主に悪い方向に」

「大丈夫なんですかね、この村」

「心配ないわよ。アイツらだって、しばらくしたら元に戻るわ。なんとかなるわよ」


 そうか、それならちょっとは安心だな。なんの心配もなく旅立てる。俺たちがキッカケで村が滅びたとかは、後味が悪すぎるからな。


「お頭! それに姉御のみんな! 俺たちは今はまだ弱いですが、いつの日か、お頭たちを助けることが出来る立派な冒険者になって恩返しをしに行きます。どうか、それまでお元気で!」


 依頼の仲介と弱い魔物の分布を教えただけでここまで感謝されるなんてな。ここまで素直な感謝の気持ちをぶつけられ、慕われると、旅立ちの決意が少し鈍ってくる。


「あともう少し村にいてくれたら、俺たちの結婚式に仲人として参加してもらえたのになぁ」

「そうだぜ。俺たちの人生の門出を祝して、盛大な結婚式を挙げるつもりだったんだけどなぁ」


 武器屋のおっちゃんと防具屋のおっちゃんが名残惜しそうな目でこちらを見ている。


 よし! かた結びのヒモよりも決意がガッチリと固まった。今すぐに旅立とう!


 見送りに来てくれた人たちの声援を受けながら、俺たちは冒険の旅へと出発したのだった。


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